傷ついた妻と俺
警察署から俺は病院へ戻った。
どうしても医師から怪我のことを聞きたかったからだ。
それに、すみれにも会いたかった。
病院に着くと、ベッドで寝ているすみれを見た。
⦅なんで……あんなことしたんだ……俺のせいか………。⦆
「すみれ。」
「あ………あなた。」
「痛いだろうな。」
「うん、めっちゃ痛いよ。」
「……先生の話、聞いて来た。」
「あ………まだ夫婦だもんね。」
「………うん、まだ夫婦だ。
……………治療費のことだけど、心配しなくていいから。」
「えっ? なんで?」
「なんでって、それは、まだ夫婦だから……。」
「自費になったら、めっちゃ高額だよ。」
「大丈夫。」
「そんなに高給取りじゃないじゃないの。」
「あはっ、そうだ薄給だな。」
「……あなたを馬鹿にしてるんじゃないわ。」
「分かってるよ……分かってる。
実はな、同期の河瀬が総務で、お前が退職したこと話したんだ。」
「そうなの……話したの。」
「それで、河瀬が『専業主婦になったなら、扶養家族に入れて健康保険も!』って
言ってくれて、俺が頼んだんだ。
だから、すみれは俺の扶養家族になってて、健康保険も俺の……。
勝手にしたことだけど、今回だけは役に立ったかな?」
「うん、ありがとう。」
「マイナカードも置いて行っただろ。」
「うん。」
「健康保険を紐付けてない。」
「ありがと。」
「明日来たら、健康保険証を渡すよ。」
「うん、ありがとう。
…………ねぇ、あなた。」
「うん? なんだ?」
「健康保険証の話」
「あ! 年金もだな。
年金も、すみれの年金……探して、変えたよ。
それも河瀬がしてくれたんだ。
専業主婦に……取り敢えずだ。
未納の年金は支払った。半年分だったかな?」
「そう、ありがとう。
……………あなた!」
「うん?」
「扶養家族に入れてくれたから、今回は助かりました。
ありがとうございました。」
「否………そんなこと……大したことしてないよ。」
「でも、それって………あなたのプライドを守る為?」
「え…………。」
「私が退職したことだけを言ったのよね。」
「うん。」
「私が居なくなったことは、スルー?」
「あ………それは…………。」
「妻に失踪されたことは言えなかったのよね。
あなたのプライドが傷つくから、違う?」
「……………………………。」
「きっと無意識なのよね。」
「……………身体は……身体の傷、残るのか?」
「急に話を変えて………。
何故? そんなこと聞くの?」
「何でなんだ! なんで、あんな危険なこと自分から………。」
「そうしないと終わらないと思ったの。
私が怪我をすれば逮捕されるわ。」
「それにしても!」
「そうしなければ終わりが見えなかったのよ。
終わりにしないといけないのよ。
私にとっても、あの……牛島さんにとっても終わりにしないといけないのよ。」
「命を奪われる恐れもあった! それでもか?」
「大丈夫だったでしょ。ちゃんと森下さんが守ってくれたわ。」
「そうだけど……痛い思いをして、身体に傷を残してまで……。」
「あなた、牛島さんのことは私だけが被害者じゃないわ。」
「すみれだけだ。」
「あなたも被害者よ。」
「俺は何もされてない。全く関係が無いすみれが被害者になった。
ごめん。本当にごめん。」
「あなたが謝らないといけないのは、別件でしょう。」
「それは! 勿論だ。」
「牛島さんのことが終わったら決めましょう。私達のこと………。」
「……………分かった。」
俺達夫婦のことは、この事件が起訴された時に話し合うことになった。




