2章 47話「からげんきは優秀なバフだって話」
どうもこんにちは、キアーラ・カサッツァです。
嘘から出た真実とか、嘘も方便とか嘘にもポジティブなイメージあったりします。
格好をつけてみたりそのために痩せ我慢したりとか、演技なんかもある種嘘ですよね?
でも嘘だからこそ真実に近づけたり、いずれ真実に変わったりする事もあると思うんです。
まぁ要するに空元気だって継続してりゃぁ、立派な元気って事ですよ。
「みんなは大丈夫なのか?!」
父さんや母さんや兄さん達は? それにポーは無事なのか?!
俺は思いもしない事態にフレアさんに詰め寄る。
バンビーニを押さえて利益を得ようとするのはわかる。
だが、スラムの住民を捕らえさせて何のメリットがあるってんだ?
「キアーラさんのご家族は大丈夫です」
フレアさんの言葉に俺はホッと胸を撫で下ろす。
いや、まて。
「ご家族は……?」
なぜ家族に断定する?
スラムには俺の家族以外にも仲間がいるんだぞ?
「ええ。キアーラさんのお宅は比較的バンビーニの本拠地から遠いので無事です」
俺が聞きたいのはそうじゃない。
家族が無事だったのは喜ばしい事だが聞きたいのはそっちじゃない。
フレアさんなら言葉の意味を取り違えたりしないはずだろう?
「じゃあ、ご家族じゃない奴らは?」
わざと気づかないふりをするフレアさんに苛立つ。
それがわかったのかフレアさんは目を逸らす。
「……捕まった方はほぼいません」
「ほぼ? ……回りくどいな。はっきり言えよ!」
煮え切らないフレアさんに俺が叫ぶと、彼女は悲しそうな表情を浮かべる。
「……すまん」
ちっ。彼女に当たっても仕方ないだろうに。何やってんだ俺は……。
「いえ。私がはっきり言わないのが悪かったのです」
俺が謝るとフレアさんは慌てたように言ってくる。
この場に来てくれただけでも有難いのに彼女を悪者にするのは違うだろう。
「すまん」
俺がもう一度謝ると彼女は大丈夫ですと言ってくれたが、改めて埋め合わせをしようと心に誓う。
しばらく重苦しい沈黙が続いたが先にそれを破ったのはフレアさんだった。
「警察に捕まった人数は少ないです」
恐る恐るといった感じのフレアさんで今度は結論だけを告げてくる。
やっぱり、気にしてるじゃんね。
だがしかし、申し訳ないが詫びはまた後日だ。
「何人かは捕まったのか……」
それよりも今は話の内容が重要だ。
仲間が捕まったのならそいつらも助けなきゃいけない。
王虎だけでもミッションインポッシブルのに難易度が跳ね上がったな。
「はい。運が良かったと思います。うちの家族が気づいて何とか逃すことができました」
不幸中の幸いと言わんばかりのフレアさんにまたイラッとしてしまう。
仲間が捕まったのに運が良かったなどと……。
いや、まて___
「運が良かった? マダムは今回のことは把握していたのではないのか?」
今回警察の介入があることをマダムは知っていたのに、どう言うことだ?
俺がたずねるとフレアさんが慌てた様に言ってくる。
「いえ、スラムの事は知りませんでした」
なんだと? と言うことはスラムに手入れをするのは上の奴らのシナリオの外のことだと言うことか? どう言うことなんだ?
欲しいのはエルフの秘奥である栄養学の情報だろう?
てっきりスラムの住民を人質にそれを引き出してくるものだと思ったが。
「その辺りのことは直接マダムと話をしていただければと思います」
俺が頭を悩ませて唸っているとフレアさんがそう言いながらパピヨンへの移動を促してくる。確かにここにいても事態は好転しない。言う通りにしよう。
俺はフレアさんが乗ってきた車に乗ってパピヨンに向かうことにする。
「くそっ! もどかしいな……」
車の助手席に座って窓の外を見ながらじっとしていると、ジワジワと焦燥感が湧き出てくる。今は考えても仕方ないとは分かっているが、落ち着くことができない。
「今は伏せるときです」
俺が落ち着きなくソワソワしているとフレアさんが運転しながら言ってくる。
フレアさんの方を見ると、その表情は仕事モードの頼りになる時のものだ。
「獲物が明確なのであれば焦ることはありません。時期が来るまで深く潜み、追い込んで追い込んで追い込んで……そして最終的に喉笛に牙を突き立ててやればいいのです」
そう言いながらフレアさんは、獰猛な肉食動物のような鋭い眼差しと、不遜とも取れるほどに自信に満ちた顔でニヤリと笑う。
その表情を見て俺は逆に毒気を抜かれる。
狩のスペシャリストが言うのだ間違いないだろう。
「おぉ、こわ」
「ふふふ。常識ですよ? 我々肉食の獣人なら本能に組み込まれた当然の」
俺が戯けて肩をすくめるとフレアさんが今度は楽しそうな笑顔を見せる。
そして不意に真顔になるとボソッと呟くように言う。
「ですから……。当然あの童貞を拗らせた馬鹿な虎も最後のために牙を研ぐでしょう。例えそれがどんな場所であっても」
だから今は心配するなと言外に言う。
そこには確かな信頼がある様な気がした。
王虎が転んでもタダでは済まさないと確信しているのだ。
「……本当は仲がいいんじゃないか?」
なんとなく、そうしたくなったので、揶揄ってみる。
しかしその途端フレアさんが、超絶ご高齢の方がハイパースッパイ梅干を食べたかの様な顔になる。そして心底嫌そうに言った。
「やめてください。虫唾が走ります。その様な人格を否定する侮辱は、いくらキアーラさんでも許しませんよ?」
「そこまでかよ……」
「ええ。悍ましい」
悍ましいって。嫌いを通り越した何かだなそれは。
あと思ったけど、流石に王虎は童貞じゃないと思う。
マフィアのボスなんて職業でそうだったら詐欺だろ。
俺がそういうとフレアさんはそれについては言及せず、肩をすくめるに留めた。
……念のため今度王虎に聞いてみよう。
「私は男どもとはビジネス以外では仲良くすることはあり得ません」
フレアさんが嫌そうな顔をしたまま話の続きをしてくる。
男どもって……。
何があったかは聞かんけど見下しまくりじゃんね?
嫌悪感もすごい。
そこで俺はふと気になって戯れに、本当にただの好奇心からフレアさんに問いかける。
「例えば……俺が男だったら……どうする?」
心なしか言葉が喉から出づらかった様な気がするが気のせいだ。
なぜか手に汗をかいてしまったが暑いのかな?
俺はボロボロになった服で手を拭く。
いやダジャレじゃないよ?
あぁ、そういえばこんなボロボロな格好のままじゃ家には帰れないな。
家族に心配されちゃうよ。
フレアさんは大丈夫って言ってたけど、本当に無事なのかな?
俺はいつの間にか俯いていた顔を上げてフレアさんを見る。
「えぇ………………? どうしよう……………………?」
どちゃくそ悩むじゃんね。
ものっそい目を見開いて俺を凝視している。
……危ないから前を向いて欲しい。
その旨伝えるとブツブツ言いながらも一応前を向いてくれるが、心ここに在らずといった感じだ。しばらくブツブツ言っていたかと思うと突如こちらを向いて聞いてくる。
「あのー? その場合はキアーラさんは受けですか攻めですか?」
「何聞いてんの?!」
いやお問合せも大概だけど、前向いて?!
「いえ、基本的にキアーラさんには攻めていただきたいんですが、しかしながら男に攻められるとなると、耐え難い屈辱で……」
好物と一緒に嫌いな食べ物を出された子供のような顔で言い訳の様に言ったかと思うと、ハッと声を上げる。
「いえ、お待ちください。それはそれで……ありなのでは? 屈辱が濃厚であればあるほど内容も濃厚になるのではないでしょうか?!」
あ、スイッチ入った。濃厚って……。
「くっ、身体は好きにでできても心まで好きにできると思わないことです! さぁ早く試してみなさい! 私は決して屈しはしませんよぉ! さぁ! 早く!」
なんか一人で即落ち2コマのクッコロ騎士みたいなこと言い出した。
この世界でもそう言うのあるの?
やっぱりそう言うのは次元も世界も越えるってハッキリわかんだね?
「くっ! 初めてですって?! 私も初めてなのでおあいこですね! 協力していきましょう! ……はっ! キアーラさんなんて凶悪な鬼棍棒……」
おいおいおいおい。だんだんエスカレートしたきたぞ?
ナニを妄想してんだよ。誰のナニが鬼棍棒だ。
「おーい。帰ってきて〜?」
そろそろ運転も怪しくなってきたので声をかける。
でもそうか。どうやらフレアさんの中では俺が男でも女でも関係ないみたいだな。
「んっん! 失礼いたしました。パピヨンに到着です」
正気を取り戻したフレアさんが咳払いと共に到着を知らせてくれる。
くだらんことしてたらいつの間にかついたらしい。
俺は車を降りると駐車場からパピヨンの裏庭に周る。
流石に今は正面から入るわけにはいかないからな。
そしてそこで見た光景に驚いた。
「これは……? スラムの奴らか?」
そこは沢山の人間で溢れていたのだった。
お読みいただき誠にありがとうございます!
先週はお休みいただき申し訳ございませんでした。
仕事がいやーんまいっチング! だったのです。
読者博士お許しください!
しかし先週休んで思いました。
一週休んだだけでPVが爆下がりするッッ!
なんでそんなことを思ったかというと、この作品始めてから二度目のPV0の日があったのです。
継続は大事っ! 圧倒的真実っ!
作家の皆さん原稿は落としたらいかんのですっ!
スランプとかもってのほかだね。




