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23)嘘つきと真実、囚えたのは

何かを無くしてしまったような感覚。

寂しさ。

やめてって言ったのに。


誰かが悲しそうに、でもうれしそうに言った。



「ナミ」

目が覚めるとラルクが抱きしめていた。

「・・・ラルク」

ラルクは奈美の頬をなでながら唇を奪った。

「んっ」

それは、優しい口付け。

甘い・・・果実のような香りが鼻腔をついた。


「っはぁ・・・ラルク」

魔獣は?どこにいってたの・・・とは聞けなかった。

「んっ」

「ナミ・・・お前は俺のものだ」

「ぁっ・・・」

それは、熱い言葉。

体の心を溶かすような行為。

溶かされ、酔わされた奈美はラルクにしがみつくしかなかった。


あぁ、もう離れられない。


「離れる必要なんかないだろ?」

ラルクが耳元でささやきながら笑って言った。

一度も『愛してる』とも『好きだ』とも言わないのに、この男の言葉はそれよりも甘く酔わされるような感覚に陥られる。

「・・はぁん・・・ラルク!」


 ・

   *

  ・  ・

   ・

 *


抜け落ちたものを満たされたような感覚に奈美は、ラルクの胸の上で心音を聞きながらまどろんでいた。

ラルクは奈美の髪の毛をなんどもすいていた。

「ナミ・・・お前は一生俺のものだ」

ラルクはかみ締めるように言い、奈美の髪の毛に口付けた。

鏡台がちょうど奈美だけを映していた、ふと鏡の中の自分と目があった。

その中の自分は、深い緑色の髪をした涙をたたえた目をした人。


唇が動いた。


- 一生私のもの -


次の瞬間には、恍惚とした笑みに変わっていた。


瞬きをした時には、もう黒髪の自分自身しか映っていなかった。

その顔は、酷く驚いた顔をしていた。



「・・・森は?」

ふと、言葉がでた。

ラルクの手が止まり、また動いた。

「どこの森だ?」

何か胸が騒ぎ奈美は起き上がって、ラルクの顔を見た。

「・・・暗森」

「そんな森は存在しない」

「ぇ・・・」

「お前の帰る場所は、存在しない」

ラルクは奈美の頬に触れた。

「いっただろ、お前は俺のもの」


 - 違う、あなたが私のもの -


ラルクは微笑んで、奈美を腕に閉じ込めた。

彼を独占する感情が渦巻く、それは緑色の髪の毛をした人・・・もう一人の私。





城は日常を取り戻し、活気付いていた。

おしゃべり好きな貴族達があちこちで話していたのだ。


皇帝陛下は魔獣ゴディバと共に暗森を燃やし尽くしたと。


奈美は庭園で散歩をしている間にも、何度もその話を聞いた。お披露目パーティーの惨劇からラルクが魔獣を倒して戻ってきた所まで、嘘と真実とが織り交ざった話を。

今まで冷たい目線を送っていた貴族達は、打って変り奈美に対して優しい笑みや欲の渦巻いた目で見るようになった。

むしろ積極的に話しかけるものもいた。

奈美は笑顔でかわしながら庭園を後にした。


いつから魔獣はゴディバになったの?ゴディバは私の前世じゃなかったの?

あまりにも周りの様子が様変わりしすぎて、奈美は不安を感じた。

でも、それだけでないことも気づいていた。

ラルクに触れていないと心が崩れ、壊れてしまうような感覚に脅えた。

意識を向けるだけで、どこにいるのかが解る。

今までは、逆の方向に足を向けていたのが、今ではその方向に迷わず向かっている。

そんな自分に気づき奈美は小さく笑った。


向かった先にラルクはいた。

他の人達と話しをしながら廊下を歩いていた。

仕事をしてるときのラルクの顔は威厳に満ち溢れているといつも奈美は思った。


そのラルクは、奈美を見ずに手をさしだした。

奈美は引かれるようにその手に捕まった。

周りの人達の空気が一瞬動いた気がしたが、無視して奈美はラルクの腕の中にうずもれた。

仕事の話が終わるまで、奈美はずっとそうしていた。



今はラルクとナミは寄り添うように執務室のソファーにもたれながらお茶を飲んでいた。

周りには従者も侍女もいない。


「・・・噂は本当?」

「ん?」

「魔獣がゴディバだったと、あなたが暗森と一緒に倒したと。」

「あぁ、本当だ」

ラルクは奈美の頬を捉えて自分に向かせた、奈美はラルクの言葉に驚き見た。

「ゴディバは!」

『お前はナミだ。ゴディバはあの狼の魔獣』

ラルクは奈美の瞳を捕らえながら微笑した。

『お前は俺が呼び寄せた。半身。花嫁』

奈美はラルクの言葉が真実のように感じその言葉を飲み込んでしまいそうになった。


 -犯した罪は消えない-


誰かがささやいた。


『それが真実』

刷り込まれた嘘は真実に摩り替わる。

「それは、禁忌。」

奈美はゴディバから視線をそらして言った。

なぜだか、あの森を消すことは禁忌に触れると感じた。厄災か呪いがあるのではないのかと。


「・・・知ってる。だが俺達が生きている間は平気だ。」

「なぜ」

「それは秘密だ」

深い口漬けで、それ以上の追求を許されなかった。


最近の自分はどうしたのだろう、ラルクが何かしたのだろうか?

ときどき、緑色の髪の毛をした()が見える。

心が落ち着かない。ラルクから離れると余計に・・・。


「心がおちつかないんだろ?」

あそこにはお前の一部がある場所だったしな、と後半の言葉は飲み込んで言わなかった。

「俺が埋めてやる。心も、魔力もすべてを」

ラルクから流し込まれる魔力に奈美は満たされる。

「あぁ・・・」



奈美は微笑みながら言った。

「酷い人」


捕まってしまった。

囚われてしまった。

それはどっち?




-愛してるなんて一生言ってあげない-




----------------------------------------------------------------------

- 皇帝と魔獣の話し -


暗森と呼ばれる魔獣が発生する危険な深い森にゴディバという人型の魔獣がいた。


ゴディバが国中に知れ渡たったのは、国と国との境界線でもある暗森にいたため、隣国がゴディバの住んでる森に攻めてきたためだった。

そして、ゴディバがそこで人を殺すことを覚えてしまった。

ゴディバとは気づかれず男は、功績が認められ軍にはいった、そして戦場でぐんぐんと功績を挙げて行った。

ゴディバが現れるだけで敵兵は逃げ惑った。

ゴディバの戦い方は残虐だったのだ。

次についた名が「獣の狂戦士バーサーカー

その国にとってゴディバはただの人間で、使い捨ての軍人、英雄なっていた。


国が危機感を持つ頃にはゴディバは、将軍と呼ばれ戦いに狂った者たちが周りを固めていた。

そしてゴディバがいた国が消えた。

消えた理由は、ゴディバが命令されるのに飽きたからだった。

そして戦争がなくなったからだった、いやなくなるはずだった。

戦争は和平によって終結されるはずが、ゴディバがそれを阻んだったのだ。

近隣諸国はその事件を知り、ゴディバとは知らず、倒すべく団結した。

そのときについた名は「血に狂った魔獣」


ゴディバは化けていた人の姿とかけ離れた姿となっていた、色黒い肌に白髪に血走った瞳、異形の姿。

ゴディバは近隣諸国が連合国となった最強の精鋭陣をあつめた軍によって殺された。

人々にとってゴディバは恐怖、世界を混乱に陥れた悪であった。


ゴディバを殺した男は、英雄と称えられた。

英雄の名はラルク・フロイアンス・カファレル

色白の肌にオレンジがかった金の髪に蒼い瞳の男だった。


英雄ラルクは連合国の皇帝となり統治を行った。

それから100年


またゴディバが復活した、

ラルクに復讐するために半身である花嫁を攫い

自分の魔力を植え付け、ラルクの元に返したのだ

黒い果実を花嫁に与え、穢させようとしたが皇帝ラルクはそれに気づき

花嫁の穢れ払い、守った。

追い詰められたゴディバは生まれた暗森に戻り、皇帝ラルクを返り討ちにしようとするが

半身を得た皇帝ラルクに敵うわけも無く、再び倒された。


皇帝ラルクはゴディバの真名まなを見つけ、二度と復活しないよう暗森を焼き払った。


ゴディバの真名、それはディルボ




グレイアス国で知らない者はいない有名な話し(・・



皇帝の半身である花嫁は黒髪の美しい娘、名はナミ。

聖獣に愛され、心美しい娘は皇帝と同じ魔力を持った聖女

二人は半身、息を引き取るその時まで一緒。


グレイアス国初代皇帝が治めた時代を聖なる平和と呼ばれた。

それは、魔が存在しない平和な時代。


----------------------------------------------------------------------


白いドレスを身にまとう花嫁は美しく、上気した肌はばら色

綺麗に結われた髪のけは白い小さな花々と宝石で飾られ、うなじには宝石が飾られていた。

歩くたびに宝石たちは光りを反射させてキラキラと輝いた。


まるで白薔薇の精霊のような姿に、周りの人々からはため息が漏れた。


その手を白を貴重とした金の刺繍が施されたジャケットを羽織った花婿が受け取る。


それだけで、周りの人々はわれんばかりの拍手を送った。


皇帝陛下と妃となった美しい花嫁に


完結です。


☆-(ノ。・ω・)八(。・ω・。)八(・ω・。)ノ イエーイ


-----以下あとがき----

後半、キャラが暴走して焦りましたがなんとか終わらせました。

拙い文章を最後まで読んでくださりありがとうございます。

説明不足な所とか多々あると思います。もうしわけない(´・ω・`)

気づいたらお気に入り登録数が100件超えていてびっくりしました。(自分が好きなように書いていたので数件あればいいと思ってました。)


ちゃんと終わらせたの実は初めてです。

いつも、起承転まで書いて結ができないタイプです。途中で話がずれて最初決めていた終わりに持って来れないんです。

でも、今回はガツガツ書いてそれる前に終わらせちゃいました☆

お気づきのかたもいらっしゃるかもしれませんが、このお話のテーマ曲は1話で奈美が聞いていた曲です。

書いてる最中ガンガンエンドレスリピートでした。

この曲はAcid Black Cherry というバンドの曲です。

タイトルは書いてあるとおり「Black Cherry」です(笑)

公式のYoutubeで流れているので興味のある方は聞いてみてください。


二人とも最後まで、「好き」とか「愛してる」と言わずに終わってしまいましたが。

ラルクが一言でも言えば、奈美は簡単に落ちてしまいます。

それを解っているから、ラルクはあえて言わないです。

ラルクはドSで腹黒ですね


それでは、最後までお付き合いいただきありがとうございました。


 siro

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