EPISODE07. 合奏、いや、調律。
2025年2月9日。警察署。
ヨハンとヘジン、そしてウンビが机の前に座り、取り調べを受けていた。奥の待合席には、ぐしゃぐしゃになったハミンとハンギョルが座っており、少し離れた場所には5人の男たちがふらふらと座っていた。
「あらかじめ言っておくが、俺たちは協力しない。あの野郎ども、刑務所でも食らわせてやるべきだ。」
ウンビに背負い投げされた男が、腰が痛いのか腰をさすりながら、悔しそうな表情で叫んだ。
一行が座っている机の向かいに座っていた年配の警官が、しばらく彼らを見つめた後、首を横に振ると、再びヨハンを見つめた。
「まとめると、お二人があそこの四人を殴ったわけですね。」
視線を移してウンビを見つめた。
「あそこのお嬢さんが、あそこに腰を押さえている方をアスファルトの地面に叩きつけたと?」
「それは殺人未遂です!あの女、人を殺そうとしたんです!」
警察官の言葉が終わるやいなや、腰を押さえていた男が再び口を挟んだ。警察官が男を睨みつける間に、ウンビが口を開いた。
「あの野郎が駐車場に立っていて、私に触ろうとしたんです。あそこの駐車場の防犯カメラを見れば、全部映っているはずです。」
再びウンビを見つめた警官が、鼻の先を掻いた。
「それは防犯カメラを再生すれば分かることだから、少しお待ちください。」
警官の言葉に、無表情で状況を見守っていたヨハンが、悔しそうな表情で口を開いた。
「違うんです、あいつらが先に殴ってきたんです!」
「あいつが私に触ろうとしたから、後ろにいたお兄さんたちが助けようとして、先に殴られたんです。」
ぶっきらぼうな警官の態度に悔しかったのか、ウンビは涙を浮かべて再び言葉を添えた。
「先生方、落ち着いてください。」
年配の警官が当惑した表情でヨハンを見つめ、ウンビの隣にいた女性警官も明らかに動揺していた。
「先生方? とにかく今の状況は、あの方たちが先生方を通報した状況ですから。」
「私も通報します!」
後ろに座っていたハミンが片手を頭上に掲げ、ぱっと立ち上がりながら叫んだ。
警官は目をぎゅっと閉じた。
ヨハンと一行は、相手が先に始めたと詰め寄り、相手は法律通りにしようと言い張る中、警察署のドアが開き、真昼の明るい日差しが差し込んできた。
日差しのなか、ほっそりとしたシルエットの女性がハイヒールの音を響かせながら警察署の中に入ってきた。
「初めまして。法務法人チョンドゥンのパートナー弁護士、チョン・セジンです。」
洗練されたスカートスーツを着た女性が警察署の中に入り、年配の警察官に名刺を渡した。
4人の男性と2人の女性が警察署の外へ出て行った。
ヨハンは、まぶしい日差しに目を細め、眉をひそめてつぶやいた。
「ふっ、これが自由の匂いなのか。」
ハミンがニヤニヤと笑いながら、ヨハンに声をかけた。
「豆腐、要る?」
「豆腐は一緒に食べるものじゃない?」
ヨハンはクスクスと笑いながらハミンを見つめた。
ヘジンは弁護士を見つめていた。
「あなた、お疲れ様。」
弁護士の口から出た言葉に、ヨハン、ハミン、ハンギョルの頭がパッと振り向いた。
「私?」
ヘジンは三人の間抜けたちを見てニヤリと笑うと、弁護士を見つめた。
「助けてくれてありがとう。セジン。」
「僕を呼んでくれたんだから、釜山の果てでも行かなきゃね。」
弁護士。セジンは明るい笑顔を見せた。
「わあ、お姉ちゃん、本当にカッコいい。」
ウンビがときめいた。
***
一週間後。2025年2月16日。ハミンの家の地下練習室。
4人の友人が集まり、それぞれの楽器を手に向かい合って座っていた。
「おい、準備は全員できたか?」
ハンギョルが他の3人の友人を眺めながら尋ねた。
「準備完了~!」
ハミンが嬉しそうに叫んだ。
「うん、レリュ。」
ヨハンが呟いた。
「……」
ヘジンが頷いた。
「じゃあ、以前のセットリスト通りに順番に進める。まずは最初の曲から。」
うなずいたヘジンが指を動かした。
正確な拍子に合わせて、最も低い音から始めた。
低い音、高い音、低い音、高い音。
二小節が繰り返される頃、ハミンが叫んだ。
「ミョルニル、出撃だ!”
ジィーンという音と共に、荒々しい電子音が襲いかかった。
ちょうどその時、ハンギョルが電子ドラムパッドを指先で軽く叩いた。
心臓の鼓動が、二人の演奏の下に溶け込んだ。
ヨハンの白いギターが、柔らかな音色を引き出した。
「もういい。」
演奏を止めたハンギョルが、他の三人を眺めた。
「みんなの実力は本当に高いんだけどね…」
「いや、実力もめちゃくちゃだ。」
ヘジンが言った。
「お前が一番問題だ、コンピューター!」
ハミンがヘジンに指を立てた。
「俺はうまくやったよ。」
ヨハンが頭をかきながらつぶやいた。
「お前が一番下手だ!」
他の三人がヨハンを見つめた。
***
練習室のドアが開いた。
黒真珠のように美しい黒い肌。赤いドレスを着た女性が練習室に入ってきた。
「あ!お母さん。」
ヨハンが挨拶すると、ハミンの母親が笑って言った。
「おばさんって呼べって言ったでしょ。」
「はい、おばさん…」
ヨハンは気まずそうな表情で眉を掻いた。
「お母さん、なんで来たの?」
ハミンがぶつぶつ言うと、ハミンの母親は顔をしかめて言った。
「え、私が自分の練習室に来るのに、息子の許可が必要なの?」
ハミンの頭をポンポンと叩くと、友達たちの方を見回した。
「上に食事の準備をしたわ。ご飯を食べてからにしてね。ガキども。」
***
練習室を出て1階に上がってきた友人たちの目の前に、豪華な晩餐が並んでいた。
「うわっ。これ全部何?」
リビングに並べられたいくつかの長いテーブル。その上には数え切れないほどの料理が載っていた。
「ママ、また出張ビュッフェ呼んだの?」
「うん、自炊するのが面倒だし、ちょうど君たちの友達も来たから、ママが腕を振るってみたのよ。」
「これ、ママの腕を振るったわけじゃないでしょ?」
「ママがお金を使うこと、それこそがママの腕じゃない?」
ヨハンと同僚たちは、母子の漫才を見てクスクスと笑った。
食事は美味しかった。
満足そうな表情で腹を叩いている友達たちに、ハミンは胸を張って、誇らしげに言った。
「これ、1人前20万ウォンもするんだぞ。」
ヨハンがハミンの胸を手のひらでポンと押した。
「お母さんじゃなくて、おばさんが買ったんでしょ?君が買ったの?」
「お母さんのお金は僕のお金だよ。」
それを聞いていたハミンの母親が、ハミンの尻を叩いた。
「私のお金は私のお金だし、あなたのお金は自分で稼がなきゃだめよ。」
「ひいん、ママ嫌い。」
ハミンは泣き顔になった。
「みんな、このおばさんが外でちょっと聞いてきたんだけどね。」
ハミンの母親が優雅にコーヒーカップを置き、口を開いた。
「あなたたち、力みすぎよ。」
「まあ、何度かやってみれば分かっただろうけど。」
再びコーヒーカップを手に取り、優雅にコーヒーを飲んだ。
友人たちは互いを見つめ合った。
***
午後の練習室。
ヨハン、ハミン、ハンギョル、ヘジンが互いに向き合って座っていた。
まるで睨み合いをしているかのような険悪な雰囲気だった。
「力を抜くように言ったでしょ。」
「俺のミョルニルに合わせてくれるべきじゃないの?」
「基本もできてない奴らめ。」
「……」
それを見ていたハミンの母親が首を横に振りながら、練習室の外へ出て行った。
「子供たちだわ、子供たちよ。」
***
その日の夕方。
エレキギターの電子音が一番上に、
アコースティックギターのメロディーが次に、
ベースギターの音がその下に、
そしてかすかに脈打つ心臓の音が一番下に敷かれ、練習室を包み込んでいた。
音楽が止まり、残響だけが残った。
全身が汗でびっしょりになったヨハンが、白いアコースティックギターを置いた。
ハミンは疲れた様子で、ギターを背負い直した。
ハンギョルはDJブースの後ろの椅子にどさりと座り込んだ。
ヘジンは自分の金色のベースギターを膝の上に載せ、じっと見つめていた。
みんなの顔には満足感が漂っていた。
ハンギョルが機材とノートパソコンを片付けながら口を開いた。
「まだ道半ばだけど、それでもなんとか噛み合い始めてきた。」
片付けを止めて、友人たちを見つめた。
「お疲れ。来週また会おう。」
「オーケー。俺のミョルニルが咆哮する時を楽しみにしててくれ。」
ハミンがふざけた。
10年ぶりの合奏は、チューニングを終えて終了した。
***
合奏を終えて帰る友人たちを見送り、ハミンを先に家へ送り届けたヨハンは、ハミンの家の門をぼんやりと見つめた。
久しぶりに再会した友人たちは相変わらず騒がしく、相変わらず賑やかだった。
友人たちとの演奏は大変だったがやりがいがあり、時々イライラしたけれどそれでも楽しかった。まるで高校時代、何の心配もなく歌ったり演奏したりしていたあの頃に戻ったような気分だった。
ふと、高校時代のバンド仲間たちと一緒にハミンの家の地下練習室を訪ねたあの頃が思い出された。
2014年2月。ハミンの家の地下練習室。
「おっ、これジャック・マーシャン兄貴が使ってたトランペットだ。」
「これはロドリゴ・ゲイズ兄貴が使ってたギター。」
「うわっ、これ世界中にたった3本しかないという伝説の…」
ハンギョルは我を忘れてあちこち動き回り、飾り棚のガラスに鼻を押し付けていた。
ショーケースのガラスの中には、ハミンの母親が飾っておいた楽器が整然と並んでいた。
ヨハンとハミンは、ハンギョルの見慣れない様子を見て、ただ笑っていた。
しばらくの間、我を忘れているハンギョルの様子を見ていると、ベルの音が聞こえた。
ハミンが外に出て行き、しばらくしてきょろきょろと見回しているヘジンを連れて降りてきた。
「今日はいつもの姿だね?」
少年のような姿で降りてくるヘジンを見て、ヨハンが言った。
「うん、ジャズバーで演奏する時とか、人前で演奏する時だけさ。パパに見つかったら、またベースギターがボロボロにされるから。」
ヘジンは照れくさそうに笑った。
「それにしても、煌びやかな場所だね。」
周囲を見回したヘジンが言った。
「ママがちょっと気を使ったんだ。」
ハミンが得意げに言った。
「ママ?どんなお仕事をされているの?」
「うちのママは歌手。ジャズ…」
「うわっ、これ!」
ハミンの声を覆い隠すように、ハンギョルの感嘆の声が飛び出した。
ヘジンの視線がハンギョルに向けられた。
「ギョルはなんであそこに…?」
不思議そうな表情でハンギョルを見つめていたヘジンが言葉を止め、突然ハンギョルのそばへ駆け寄った。ハンギョルの目の前には、黄金色を放つ華麗なベースギターが一本、威容を誇っていた。
「こ、これは。こんな貴重なものを拝見できるなんて…」
ヘジンはハンギョルと並んで立ち、同じ姿勢で同じ言葉を呟いた。
君の友達が円形に並んで座り、互いに向き合っていた。
「さあ、始めるぞ。」
ハンギョルは肩に掛けたショルダーキーボードを握り、口を開いた。
「スリー、ツー、ワン。」
エレキギターとベースギターが同時に音を放った。
ハンギョルがショルダーキーボードを押すと、ドラムの音がアンプを通して流れ出した。
音が一つにまとまったかと思えば、一瞬で乱れた。
「やめろ。」
ハンギョルの声に音は止んだ。
「もう一度やる。」
再びエレキギターとベースの音で始まり、ドラムの音が割り込んだ。
「ストップ。」
「ヘジン、お前のベースの音、大きすぎるぞ。」
「それってハンギョル、お前が調整すべきじゃない?お前がエンジニアだろ?」
「俺はこのチームのプロデューサーだ。お前たちは俺の楽器だ。」
「何だよ…」
ハンギョルとヘジンの互いに向け合う視線が険しくなった。
「おっとおっと、みんな。こんなことしないで、話し合ってみない?」
ハミンが間に割って入り、言った。
「話してるじゃないか?」
二人が同時に言った。
まだギターに手も触れていないヨハンは、ただ笑っているだけだった。
***
2025年2月23日。
再結成後、初めての練習から一週間が過ぎた土曜日。
ハミンの家に再び集まった友人たちは、また狂ったように練習を始めた。
狂ったような速さのエレキギターの速弾き。
同様に速さと存在感を誇示するベースギター。
ターンテーブルを擦るスクラッチと電子ドラムパッドの音が同時に響く。
その上に、ヨハンの低い声が重なった。
たとえこの身が砕け散っても
荒々しい声。
ラップのようであり、呟くようであり、口ずさむような声。
たとえ心が乾ききって消え去っても
アコースティックギターの柔らかな音がメロディーを紡ぎ出した。
ハンギョルはヨハンを見つめた。
ハンギョルの眼差しには、切なさと感嘆が同時に宿っていた。
刻み込まれたあの時間が。
エレキギターとベースギターの音が静まり返った。
結局、灰だけが残って。
歌が終わり、練習室に静寂が流れた。
ヘジンが口を開いた。
「君の歌が…」
ハンギョルが口を開いた。
「歌は本当に下手なんだけど…」
ハミンが口を開いた。
「訴求力がマジでヤバい。ちょっと歌ってる感じ?」
友人たちは互いを見つめ合って笑った。
「ご飯食べに行こうか?」
お腹が空いていたのか、お腹をさすっていたハミンが友達たちを見た。
「適当に注文して食べよう。」
ハンギョルはノートパソコンから目を離さずに言った。
「何を食べようか?」
ヨハンは幸せそうな表情を浮かべた。
「適当に食べよう。」
ヘジンが言った。
視線がぶつかった。
ハミンとハンギョルが互いに睨み合った。
ヨハンとヘジンが互いに睨み合った。
「いや、人生で昼食を何回食べるっていうんだ? そんなことで大騒ぎするなんて?」
ハミンが攻撃を始めた。
「今の君たちの実力で、ご飯が喉を通ると思うか?」
ハンギョルが反撃した。
ヨハンとヘジンの四つの目がハミンとハンギョルに向いた。
「お前は実力があるから、一人で美味しいものを食うつもりか?」
「いや、実力のないお前たちのレベルに合わせて、俺が犠牲になって適当に一緒に食べてやるってことだ。」
「俺の弾が当たれば、額に穴が開いて倒れ込むような奴が。」
ハミンがハンギョルに指を突き出した。
「ふっ。タ・アンジシンのトオン?」
ハンギョルはくすりと笑うと、隅に置かれたドラムスティックを手に取った。
「俺の剣幕を、そんな指で破ろうってのか?」
ドラムスティックを華麗な手さばきで回した。
「今、お前が俺の前で道具を手に取ったのか?」
ハミンは自分の青いギターを握り、ピックで弦を弾いた。
「俺のミョルニルは、天を貫くミョルニルだ!」
「そんなこと、俺が知るか!」
「これが?」
ハミンがハンギョルに向かって大股で歩み寄った。
「お前が脅しても脅しになると思ってるのか?」
言葉とは裏腹に、ハンギョルは後ずさった。巨体が瞬く間に絡み合った。
「あ、そこ、頭、頭、引っ掻かないで!」
「噛むなよ、この野郎!」
「うわっ!そ、そこはダメだ!」
「グゥルル!」
「そこを噛むな!」
絡み合って練習室の床を転がる二人と、その二人を呆然と見つめていた別の二人が視線を外し、互いに向き合った。
「ちょっとエロくない?」
だんだん奇妙になっていく二人の喧嘩を見ていたヨハンとヘジンが、互いを見つめ合った。
「僕たちは。」
「あんな風にはならないようにしよう。」
「昼食は豚肉炒めかトンカツを食べに行こう。」
「いいよ。」
「この辺にちょうどいい店があるんだ。」
「もしかして、僕が思ってるあの店?学校の前の。」
「覚えてるんだね。」
ヨハンがヘジンに手を伸ばした。ヘジンがヨハンに手を伸ばした。両手のひらが空中で触れ合った。
練習室は今日も平和だった。




