EPISODE05. ゴヨハミンハンギョルヘジン。
2025年1月31日。
ヘジンは目を開けた。
目覚まし時計は鳴らなかった。ただ、習慣のように目を開け、習慣のように時計を確認した。
06:00:06
いつも見ているのと同じ数字。
ヘジンは体の上にきちんと掛けられた布団を掴んだ。体を起こしながら、足の方へ半分折れるように布団を置いた。布団が乱れないように足を抜いた。体を回転させてベッドから降りた。
間接照明などの弱い光が部屋の中をぼんやりと照らしていた。整然と並んだ家具たち。何もない床。
体をひねって足を動かした。ベッドの横、いつもあった場所に置かれたスリッパに足を滑り込ませた。ベッドからお尻を離し、両足で床を踏んだ。冷たい気配が薄いスリッパの底から伝わってきた。
表情を変えることなく、ためらいなく歩いていき、ドアの横にある照明のスイッチを入れた。部屋が明るくなり、真っ白な室内が照らし出された。
機械的に足を動かし、浴室へ向かった。洗面台の前に立った。水を流し、顔を洗った。濡れた顔をタオルで拭いた。
浴室から出て、壁一面を埋め尽くすクローゼットの前に向かった。
クローゼットの扉を開けた。中にはシャツ、スーツの上着、スーツのズボンが整然と並んでいた。白いシャツ、ネイビーのズボンを着た。
クローゼットの引き出しを開けた。ネクタイが丸く巻かれて整然と並んでいた。ネイビーの地に銀色のストライプが斜めに走っているネクタイを取り出した。手慣れた手つきでネクタイを締めた。
クローゼットの中からネイビー色のスーツジャケットを取り出した。左腕を通し、右腕を通した。
ベージュ色のコートに手を伸ばしたが、一瞬止まった。諦めたような仕草で、再びそのコートを取り出した。再び左腕を先に入れ、右腕を通した。
クローゼットの隅にあった茶色の革のバッグを取り出し、ファスナーを開けて、クローゼットの横にあるサイドテーブルに置いた。
ネクタイが入っていた引き出しの隣の引き出しを開けた。
薄い布。
小さく折りたたまれた、黒く長い髪のウィッグ。
光をほとんど反射しないケース。
メイクアップ小物。
一つずつ取り出してバッグに詰め込んだ。
バッグのジッパーを閉め、バッグを背負って電気を消し、オフィステルを出た。
***
会社に到着したヘジンは席に着いた。PCの電源を入れると、ファンが回る音が聞こえた。しばらく待っていると、モニターに画面が表示された。
デスクトップの隅にある「H」の文字が刻まれたアイコンを実行した。
ログイン画面が現れた。マウスカーソルを動かし、四角いボックスの中に点滅する細い線を作った。キーボードに両手を置き、一定のテンポで、速くも遅くもなくIDを入力した。左手の小指でキーボードのTabキーを押した。IDを入力した四角いボックスの下に細い線が点滅しているのを確認すると、また一定のテンポで、パスワードを入力する。
しばらくのロードが終わり、いくつもの空のチャートやリストが乱雑に浮かんでいる画面が現れたかと思うと、すぐにグラフの棒が上がり、数字が表示された。
モニターから目を離さず、機械のような動きでマウスを動かした。「チーム長、食事に行かれませんか?」誰かの声が聞こえてきた。振り返って微笑み返すと、口を開いた。
「大丈夫です。急用があるんです。皆さん先に行って、美味しいものを食べてきてください。」
決められた入力に決められた出力。
決められていない入力にも決められた出力。
それがヘジン、つまり「定められた」者の定められた生き方だった。
午後6時になると、ヘジンはトレーダープログラム上部のログアウトボタンを押した。「ログアウトしますか?」というポップアップウィンドウが表示されると、軽快にエンターキーを叩いた。カーソルをもう少し上へ、そして右へ移動させ、赤い四角地に白い×印が描かれたボタンを押した。トレーダープログラムが終了し、黒いデスクトップ画面が現れた。キーボードのWindowsキーを押し、矢印キーを2回下へ、そしてEnterキーを2回押した。やがてWindowsが終了し、モニターが真っ暗になると、自分の顔が映し出された。決められた笑顔ではなく、本物の笑顔。
今こそ、長い間維持してきたペルソナに会いに行く時だった。
何者にも抑圧されず、強制されない、真に自由な自分、Hに。
2月の6時はすでに薄暗く、肌寒かった。
ベージュのコートの襟を正し、ヘジンは地下鉄の駅へと向かった。
背負った茶色の革の鞄が、妙に軽く見えた。
***
[次の停車駅は鍾路3街駅。鍾路3街駅です。降車口は右側です。]
「すみません。降ります。」
丁寧な口調。ぎっしりと詰まった人々の隙間を抜け、ヘジンは電車から降りた。
***
楽園商街近くの古い建物。
風にのって、かすかにチェロの音とトランペットの音が混じり合って聞こえてきた。地下へ続く入り口には、時の流れの痕跡が刻まれた古いネオンサインがあった。
ジャズバー BLUENOTE
白、オレンジ、青が混ざったネオンサインは、文字の上にトランペットを吹く紳士の姿を形作っていた。
階段を降りてジャズバーのドアを開けると、重たい扉を突き破れずにかすかに聞こえていたチェロとトランペットの二重奏が、ヘジンの体を強く包み込んだ。
ヘジンの口元に再び微笑みが浮かんだ。
ジャズバーの中は、むせ返るような熱気が漂っていた。
真っ先に目に入ったのは、室内の中心に位置する円形のステージ。その周囲にテーブルが広々と配置されていた。テーブルのそばには多くの人々が座り、くつろいで酒を飲み、食事をし、音楽に耳を傾けていた。
入り口のすぐ横にある長いバーでグラスを拭いていたバーテンダーがヘジンを見つけ、挨拶をした。
「ヘジンが来たのか?」
「はい。おじさん。」
「今日は寒かったのに、もっと暖かい服を着てくればよかったのに。」
おじさんがヘジンにマグカップを手渡した。
「あらかじめ温めておいたよ。温かいブランデーだ。」
ヘジンはマグカップをちらりと見ると、ステージ裏へと足を向けた。
舞台裏に設けられた小さな控室。
控室に入ったヘジンは、慣れた足取りで奥へと向かった。奥には、細長い花柄の鉄製収納棚が二つ置かれていた。
ヘジンは左側の鉄製収納棚の取っ手付近にあるキーパッドを押した。電子音が鳴り、ロックが解除される音が聞こえた。
収納棚の鉄の扉を開けると、ハンガーにかかった白いヴィンテージのスーツが現れた。下の方には、金色のベースギターがスタンドの上に整然と置かれていた。
白いスーツとズボンがかかったハンガーを取り出し、化粧台の横のハンガーにかけた。着ていたコートとジャケットを脱いで空いたハンガーにかけ、収納棚の中に掛けた。
化粧台の前に座ってバッグを開け、中から持ってきた物を一つずつ取り出し、化粧台の前に整然と並べた。いよいよHになる時間だった。
***
ステージの上。
照明が一点に集まった。
黄金色のベースギターを背負い、40年代スタイルの白いスリーピーススーツを着て、白い中折れ帽をかぶり、黒く長い髪を美しく解き放った女性が椅子に座っていた。
赤く塗られた唇の端がわずかに反り返り、魅惑的な微笑みを浮かべた。
左手を上げ、親指でふっくらとした赤い唇の端をそっと撫でると、すぐに離した。白く繊細な手は顎から胸へと下り、左へと急激に方向を変え、黄金色のベースギターの指板に触れた。
右手を上げて、少し傾いた中折れ帽を軽く回した。中折れ帽のつばの下からわずかに見える目は、愛嬌たっぷりの笑みを浮かべていた。
いつの間にか下りた白い右手の親指が、四本の金属弦のうち一番上の弦を弾いた。
重たい気体のように床に広がる低音が、観客の足元をすり抜けていった。
右手中指と人差し指が交差して、一番下の弦を弾いた。
まるで一つの音のように、オフビートで、二つの電子音が相対的に高い音として飛び出した。
再び親指で低音、今度は中指だけで高音。
体から最も遠い場所の指板を押さえていた左手が、徐々に体に近づく場所へと移動した。
徐々に高くなり、速くなり、高まっていく。
もう盛り上がっているのか、肩を揺らす人々を見つめながら、右手の親指を一番上の弦に軽く乗せ、人差し指と中指が下の三本の弦を自由に弾きながら動き回る。
オフビートで拍子が混ざり合い、調和しない音が前の音を追いかける。
一つの拍の中で微細に分かれた音が、互いに異なる方向へ動いた。
そして、機械のようなテクニックが続いた。
正確な拍子。正確な音。
音と音の間に何の余白もなかった。他の何ものも割り込むことを許さないかのように。
演奏が終わった。
Hは自分を見つめる観客たちに丁重に挨拶し、舞台裏へと降りていった。
楽屋には、次の演奏のための演奏者たちが座っていた。ヘジンが控室に入ると、ハンティングキャップを斜めに被った中年の男性がHを見つめながら挨拶を交わした。
「今日も素晴らしい演奏だったな、H。いつか一緒に演奏してみようよ。」
Hは男性を見上げ、軽く頭を下げた。
「お誘いはありがとうございますが、アンサンブルには全く向いていないので。」
「合わないものを合わせていくこと、それこそがジャズの魅力じゃないか。」
ハンティングキャップをかぶった男性が温かな笑みを浮かべた。
「おっと、早く出ないと。観客が怒るぞ。」
男性は冗談めかして同僚たちと共に楽器をまとめ、外へ出て行った。
Hは再び化粧台の前に座り、メイクを落とし、かつらを外した。
クレンジングシートを取り出し、ゆっくりと、丁寧に顔を拭き取った。
鏡の中のHは今や消え、再びヘジンの姿が現れた。
***
外に出ると、叔父と会話中の二人の男性が見えた。一人は見慣れた顔、もう一人は懐かしい顔だった。
叔父が笑いながらヘジンを指さすと、二人の男性が振り返った。
「ヘジン!」
暗い室内でサングラスをかけ、分厚い毛皮のコートを羽織った大柄な男性。ハンギョルが両腕を伸ばして近づいてきた。
ヘジンは近づいてくるハンギョルの額に指を当てて押しのけた。
「くっつかないで。息苦しい。」
ハンギョルはぶつぶつと文句を言った。
「いや、それでも久しぶりなのに、そんなこと言うなよ。」
「一週間は久しぶりじゃない。」
ヘジンの視線は、ハンギョルの肩越しにいる男性へと向かった。
黒い肌。適度な身長。
横に少し広がった体つき。
広い鼻の翼と、丸くて可愛らしい顔。
「10年ぶりかな?」
ヘジンが呟いた。
「久しぶりだね、ヘジン。」
ハミンが近づいてきて笑った。
黒い顔の中央に白い線が浮かんだ。
見慣れた微笑みだった。懐かしかった微笑みだった。
***
2013年4月
楽園商店街の入り口に最も近い楽器店。
少女は、黄色にパールが混ざって金色に見えるベースギターをじっと見つめていた。
店の店主が笑顔で近づいてきた。
「ヘジン、今日も見に来たの?」
少女、ヘジンは店主を無言で見つめ、うなずいた。
「今日も一度演奏して行ってくれ。僕はヘジンが弾いてくれる演奏がすごく好きなんだ。」
ヘジンは光を浴びて金色に見えるベースギターを肩にかけた。金髪に似合う金色のベースギターを背負った少女。
長く白い指が指板を弾いた。
もう一方の手の指が交互に弦に触れた。低く陰鬱な音がグルーヴに乗って飛び去った。
ふと、窓の外に二人の少年が立っているのが見えた。自分が着ている制服と同じ制服。
ベースギターを棚に戻した。
「社長、もう行きます。お世話になりました。」
「ああ、ヘジンちゃん、また遊びに来てね。」
ヘジンは素早く裏口から抜け出した。
二人の少年だけが残り、店の中を見つめていた。
***
2014年5月
ヘジンは久しぶりに気分が良かった。
これまで貯めたお金に、叔父が小遣いとしてくれた5万ウォン。ついに目標としていたベースギターを買えるようになった。
黄色いパールが混ざったベースギター。光の当たり方によっては金色にも見えるギター。
自分が好きなミュージシャンが使っているギターと同じ色、同じモデル。
楽園商店街の一番手にある楽器店に入った。
店主が明るく挨拶した。
「ヘジンが来たね?今日も弾いてみるつもり?」
「いえ、店主さん、今日は買いに来ました。」
ヘジンは分厚い白い封筒を取り出し、カウンターの上に置いた。
「そうか、ここにあるよ。これからは君のものだ。」
店主は豪快に笑いながら、ヴィンテージ風の曲線を描く茶色のハードケースにベースギターを収め、ヘジンに手渡した。
「ケースはプレゼントだ。買ったからって来なくなるなよ、たまには遊びに来いよ。」
「はい、店主さん、ありがとうございます。」
ヘジンは茶色の革製ギターバッグを抱きしめて、店の外へ出た。
「おや、天使さん?」
どこからか奇妙な声が聞こえてきた。振り返ったヘジンの視界に、赤茶色の制服を着た二人の少年が映った。
「天使さんだ!」
黒い肌の少年が駆け寄ってきた。
ヘジンは素早く体を回転させた。足に力を入れ、地面を蹴って前へ走った。
ベースギターがとりわけ重かった。
***
ヨハンとハミンは、少女が走っていった先を見つめた。
「うわっ、天使さん、めっちゃ速いね。天使だから翼でも生えてるのかな?」
「そうだな。」
ハミンの浮かれた声と、ヨハンの冷めた声。
「さっさと行ってギターを預けよう。もうすぐ暗くなるよ。」
ヨハンは少女が走っていった方向を見つめ、ぼんやりと立ち尽くしているハミンの腕を掴んで引っ張った。
***
ギターの修理を預けて商店街を出ようとした頃、ハミンが突然立ち止まった。
「何してるの?早く行こうよ。」
「ちょっと待ってばばばば。」
ハミンがぶつぶつ呟くと、突然方向を変えて歩き始めた。
「どこに行くんだ?」
どれくらい歩いただろうか?
どこからか、かすかにベースギターの演奏が聞こえてきた。拍と拍のノード。整然とした軍楽隊が演奏するジャズのような、妙なリズムと音程だった。
二人の少年は、まるで魔法にかかったかのようにその音に導かれていった。
音が流れてくる場所は、古い建物の前だった。
ジャズバー BLUENOTE。
古びたネオンサインが粋な文字を形作り、つながったサックス奏者の姿を浮かび上がらせていた。
ハミンはためらうことなく階段を降りていった。
「おいおい、俺たちここには入れないよ。」
後をついてきたヨハンが引き止めると、ハミンは何も言わずに指でドアを指さした。
[一般飲食店]
「ここなら僕たちも入ってもいいんだ。お母さんに付いてよく行ったよ。お酒さえ頼まなければ追い出されない。」
ハミンはためらうことなく分厚いドアを開けた。
ジャズバーの中は、まるで別世界だった。
照明の合間から見える、舞う埃。笑い、楽しむ人々。ステージ上でスポットライトを独り占めしている少女。
黄金色のベースギターのネックを軽く握った左手が、滑らかに動いた。
左手の動きに合わせて、肩に乗せた金髪が揺れた。
ベースギターの胴体の上に置かれた右手の指が軽く曲がり、弦を弾く。
胴体を支えている右足の膝が、リズムに合わせて小刻みに動く。
思わず体が揺れそうになるリズム。
ヨハンはハミンをちらりと見た。ヨハンの視線に映ったハミンは、すでに踊っていた。
「おや?ヘジンの友達かな?珍しくヘジンが友達をみんな連れてきたんだね?」
バーでグラスを拭いていた、白いシャツに黒いベストを着た男性が声をかけた。
「ヘジン?天使さんの名前?」
いつの間にか踊りを止めていたハミンが反応した。
「天使さん?ふはは。」
バーテンダーはくすくすと笑ったかと思うと、すぐに表情を硬くした。やがてまた軽く笑みを浮かべて口を開いた。
「ヘジンの友達じゃないみたいだね。よく来たよ。お酒はダメだけど、飲み物は一人一杯は飲まないとね。」
バーテンダーがニヤリとウィンクした。
少し会話をしている間に、音楽が止まった。ヨハンとハミンは首を回してステージの上を見つめた。ステージの上はいつの間にかがらんとしていた。
しばらくぼんやりとステージを見つめていたハミンが、すぐにバーのドアを開けて飛び出した。階段を駆け上がり、建物の外へ出た。きょろきょろと路地を見回していたハミンの表情が明るくなった。
はるか遠くに、金髪の少女が歩いていた。
「ちょっと待って!天使さん!待って!」
ハミンは叫びながら走った。
ハミンの声を聞いたのか、少女は足を止め、振り返った。
少し鋭そうだった目つきが丸くなり、すぐに素早く背を向けた。後ろで結んだ金髪が、柔らかな弧を描いてひらひらと舞った。
ハミンが再び叫ぼうとした瞬間、はためいていた黄色い髪が空高く舞い上がった。
ハミンの両目が、顔のように丸くなった。
***
宗廟前のコンビニ。
ヨハンがコンビニでコーラを3缶買って出てきた。
ハミンが少年を睨みつけていた。
「僕の初恋だったのに。僕の天使だったのに。」
ハミンが呟いていた。ヨハンは持っていた缶をパラソル付きのテーブルの上に置き、手を伸ばしてハミンの後頭部を叩いた。
「おい、やめろよ。」
ハミンが後頭部をさすりながら泣きそうな顔をしているのを見て、ヨハンはテーブルの上に置いてあったコーラの缶を一つ手に取り、少年に差し出した。
「さっきはすまなかった。ハミン、この野郎。」
「いいよ。僕がむやみに逃げ出すなんて……」
少年は頭をかいた。
少年をじっと見つめていたヨハンが右手を差し出した。
「僕の名前は……」
「知ってるよ、ヨハン、ハミン、そしてここにはいないハンギョル。君たちの学校では有名だもん。二人のトラブルメーカーと、一人の没落した天才。」
ヨハンの紹介を遮るように、少年が言葉を続けた。
「僕はジョンヘジン。決まった軌道から外れるな、と父がつけてくれた名前だ。」
しばらく頭をかき、再び顔を上げてヨハンを見つめ、言葉を続けた。
「会えて嬉しいよ。」
***
2015年12月30日。
面白い奴だな、とヘジンは思った。
10年後? たぶん、父の言う通りに一生懸命勉強して、証券会社に就職して働いているだろう。
ヘジンは思いつくままに話した。
「僕はたぶん、証券会社の社員かな?」
「僕たち、30歳になったらまたここに来よう。今、すごくいいじゃない?」
誰かが言った。
まあ、今みたいに一緒に旅行に来て演奏したりするのも悪くないだろうな、とヘジンは思った。
***
2025年2月8日。土曜日だった。
ハンギョル、ハミン、ヨハンと会うことにした。
ヨハンとは、10年前の事故で入院して以来、初めてのことだった。
今でも黒いアンプの隅から流れ出ていた赤い血と、その血が流れ落ちて白い砂浜に染み込んでいく様子を忘れられなかった。
事故によってヨハンの声が消えると、友人たちの笑い声も消えた。そしてそれ以来、ハンギョルを除く他の友人たちとは会っていなかった。
クローゼットから服を取り出して着ると、習慣のように引き出しに向かっていた手が止まった。
かつらと化粧道具が入った引き出し。
「今日は必要ないだろうな。」
ヘジンは独り言をつぶやきながら、オフィステルを出て行った。
久しぶりに会う友人たちのことを考えると、少し胸が高鳴った。




