サイドストーリー。ドーパミンが爆発する一日。
「おい、コーヒー豆ちょっと持っていくぞ。」
くそったれなヨハン、あいつは今日も倉庫を漁ってコーヒー豆を盗んでいく。あの厚かましい後頭部に、黒くて巨大な鉄拳を叩き込んでやりたいところだが、いつもそうであるように、忙しい時間ばかりを選んで盗んでいく。
最初の記憶の頃からそうだった。
可愛らしい顔をした小僧が、よちよちと這ってきた。そして、俺の鼻に頭をぶつけてきた。
鼻から赤い液体が流れ出た。小さな小僧の頭は、なんと硬かったことか。
泣いている自分を、ママとパパは笑いながらただ見ているだけだった。
腹が立った。
手を伸ばして、小さなあの子の鼻をつかんだ。あっ!あの子が頭をひねって、私の手を噛んだ。
痛かった。涙が出た。
私も噛み返した。
あの子が泣いた。
私が勝った。
***
騒がしい泣き声。保育士の姉さんたちが子供たちをなだめる声。
騒がしい中、ヨハンの拳が飛んできた。これまでの経験上、間違いなく鼻を狙っている。
私のすっぴんと立った鼻を普段から妬んでいた、根の浅い奴。
ひんやりしている。鼻の穴の近くに風が吹き込む。
落ち着こう。僕はハミンだ。無敵のド・ハミンだ!
「みんな、ケンカしちゃダメよ。」
可愛い保育士の姉さんが僕を抱き上げてくれた。ふかふか感が気持ちよかった。
お姉さんが止めなかったら、ヨハンあの野郎は間違いなく一発で倒れていただろうに。
***
黄色い幼稚園の制服を着たヨハンが背を向けていた。頭は下を向いていて、両拳はぎゅっと握りしめられていた。
「俺じゃないよ。俺じゃない!」
私の切実な声にも、ヨハンは反応しなかった。
私の目の前で砕け散り、転がっているお菓子のクズ。ヨハンが一番好きなお菓子だった。
「本当に違うんだ。」
ヨハンが顔を向けた。不吉な、燃え上がるような眼差しが見えた。
「俺じゃないよ。」
ヨハンが体を翻して飛びかかってきた。私は背を向けて走った。
今、私は逃げているのではない。あの怒りに満ちた獣を傷つけないように、避けているのだ。
目の前に食卓が見えた。背の低いヨハンなら、追いかけては来られないだろう。
大変だったが、食卓の上に登った。食卓の下に立ったヨハンが睨みつけていた。
「ハミン、食卓に登っちゃダメって言ったでしょ?」
優しいけれど、少し怒ったような声が聞こえてきた。
「ハミン、今日はおやつなしだよ。」
涙がこぼれた。
***
目の前を、赤いランドセルを背負ったヨハンが一人で歩いていた。昨日一緒に遊んであげなかったから、拗ねているようだ。
仕方ない。なんと3秒も早く生まれた兄が、譲ってやるしかない。
「ヨハン。一緒にいこう。」
ヨハンが振り返って私を見た。びくっとしたが、すぐに平気になった。
だって、僕が兄だから。
***
制服姿のヨハンが空中を飛んだ。ヨハンの姿を最後まで見届けながら、私は体を転がした。
華麗な回避技を見たヨハンが再び走り出し、空高く跳び上がった。二本の足が交錯し、私の首めがけて飛んできた。
両腕を上げて足を防いだ。腕が痺れた。
ヨハンは中学に入って背がぐんと伸びた。僕は体重が増えただけだ。だが、喧嘩は階級。背の高さが重要だったわけではない。
怒りの力を集めて右腕に込めた。腕に自然の気が集まるのが感じられた。
限界点まで集まった強力な力に、腕が震えた。
「今だ!」
拳を突き出した。
全宇宙の気を集めた、私の強力な拳。
一瞬、後悔がよぎった。親友のヨハンがこれを受けて死んでしまったらどうしよう?
もう手遅れだった。
私の拳は、空を裂く拳。
止めることはできなかった。
強力な力を持った拳を見たヨハンは凍りついた。動けないでいる。
当然だろう。こんな強力な黒い拳を、生きてきて一体何度見たことがあるというのか。
ウルトラインパクトの瞬間。
ヨハンが頭をわずかに動かした。
しまった!外れた。
私の躊躇が、私の慈悲心が、これほど大きな脅威を招くことになるとは。
瞬く間に腕を伝って拳が飛んできた。
記憶はそこまでだった。
***
ヨハンが首をかしげて言った。
「おい、でも急にどうして楽園商店街なんだ?」
「うん。小遣い全部貯めたんだ。僕のミョルニルを買いに行くんだ。」
気分が良い私は、こんな無駄な質問にも快く答えてやる。
「ミョルニル?」
呆けた表情のヨハンが首をかしげた。
「うん、僕のミョルニル。雷がシュッ~って、パッ~って。」
「おい、漫画はほどほどにしろって言っただろ?」
「俺が子供か? まだ漫画なんて見てるのか。お前、ミョルニルを知らないのか? 北欧神話に出てくる、超超超強い雷の神トールの武器だよ。」
「いや、そんなの俺にどうして分かるんだ。勉強もギターの練習もしてて、死ぬほど忙しいんだぞ。」
私の言葉に、ヨハンという奴がぶつぶつ文句を言った。
「俺が文化的な生活を送れって言ったか? 言ってないか。未開だぞ。」
「未開じゃなくて、未開だ。」
「え? チョ・ハンクク語が分からないのか。」
「この野郎、セルフ・タルラか? そんなことしても俺が許すと思ったか?」
ヨハンの拳が飛んできた。なんて野蛮な奴だ。
***
楽園商店街は閑散としていた。
「ここが韓国最大の楽器市場だってさ。」
ヨハンが呟いた。
「いやいや。最近はみんなネットで買うだろ。俺たちみたいに直接来るケースは珍しいよ。」
「俺たちって、お前のせいで来たわけじゃないだろ。」
ヨハンが拳を振り上げた。
「お前、ちょっとのことでも暴力に出るんだろ。それって良くないよ。あの、AFKN?あれ、あれ。」
「何言ってんだ。」
ふざけて冗談を言いながら、ふとヨハンの背後の商店街にある最初の楽器店を見た。それはまるで運命のようだった。
明るい光が差し込み、天上のラッパの音が聞こえてきた。
楽器店のガラスケースの奥。そこに天使がいた。
私たちの学校の制服を着て、片側にきつく結んだ髪を黄色く染めた美しい少女だった。
みすぼらしい地上の楽器店に天使様が降臨し、黄金色のベースギターを演奏していた。
私の愛。
私の天使。
今すぐ店に入って告白を…
「おい、どこが最後尾だってんだ。」
ヨハンという奴が私の耳を引っ張った。
「おい。おい、放せよ。俺たちベースが必要なんだから。」
指を差し出して彼女を指さした。
「何が『お前がベースを買え』だって?」
「いや、ベースギターのパートをやってくれる人だよ。」
「あの人? あのおじさん?」
首を回して店の中を見た。
天使の姿はなかった。
ヨハンという奴が私の視線をそらした、そのほんの一瞬の間に、少女は消えていた。
少女のいた場所に、ある太ったおじさんが黒いベースを抱えてこちらを見ていた。
私の天使が瞬く間に消えてしまった。
彼女は、あの美しい天使は、もう天国へ帰ってしまったようだ。
***
2年生になった。
学校中を探しても、あの天使の姿は見えなかった。
もしかして、お姉さんだったのだろうか?
***
天使に出会った。
天使は天使ではなかった。
初恋は苦かった。
***
2015年12月30日。
密陽でのストリートライブが終わった。
「ヨハン、さっき演奏してる時、前でウインクしてたお姉さん見た? めっちゃ俺のタイプ!」
私の言葉に、ヨハンは片方の口角を上げて、くすりと笑った。
「あのウィンクは俺に向けたんだ。俺の美しい声に惚れたんだよ。」
「演奏はまだ程遠いけど。」
偽りの天使、ヘジンは顔をしかめてぶつぶつ言った。
「それでもヨハンの声は最高の楽器だよ。」
クマちゃん、ハンギョルはヨハンの首に腕を回して言った。
「ねえねえ、ところで僕たち10年後は何してるかな?」
ヨハンが突然、唐突な質問を投げかけた。
みんなが考え込む表情を見せたので、とりあえず先に答えてみた。
「僕、パパが高校を卒業したらカフェを開かせてくれるって言ってたんだけど?」
悩んでいたヘジンがすぐに口を開いた。
「私はたぶん金融会社の社員?」
ハンギョルは顎を撫でながら口を開いた。
「僕はたぶん楽器を弾いてるんじゃないかな?もしかして曲を作ってるかも?」
ハンギョルの言葉が終わると、ヨハンは笑顔で口を開いた。
「僕たち、30歳になったらまたここに来よう。今、すごくいいじゃない?」
「どうかな。面倒くさそうだけど?」
「うーん、まあ、君たちが良ければ。」
誰のものか分からない言葉が混ざり合った。
私も笑いながら言った。
「いいね!最高だ!」
***
2015年12月31日。
波が白く砕ける白い砂浜。
その白さの中に、赤い血が散らばっていた。
「ヨハン!」
私はギターを放り投げて駆け出した。
ステージの端にある黒いアンプ。重く抱えてきたそのアンプの端から、赤い液体が流れ出していた。赤い液体の先には、ヨハンが倒れていた。赤い制服を黒く染めながら。
***
カフェバーの奥でしばらく呆然と立っていたハミンは、赤いふきんを見つめた。
水流で洗い流された白いマグカップを手に取った。
赤いふきんで白いマグカップを拭いた。
黄色いエプロンがひときわ目立っていた。




