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EPISODE21. ゴウンハミンハンギョルヘジン。

2025年12月31日。

ヨハンは海雲台の白い砂浜を見つめた。


10年前、自分が倒れて血を流していたあの白い砂浜。

終わらせられなかった公演。

歌えなかった歌。


「終止符を打つ時が来たな。」

ニヤリと笑って背を向けたヨハンの目に、見覚えのある人物が飛び込んできた。

「君の体調は大丈夫か?」

自分に薬を処方してくれた病院の医師、ソ・ムンド教授が自分を見つめていた。


ヨハンと目が合ったソ・ムンド教授が口を開いた。

「10年前、ここで一人の少年を救ったことがあったな。」

教授の視線が、白砂浜のある一箇所をじっと見つめていた。

ヨハンは黙って、そんな教授を見つめた。

「それ以来、毎年大晦日にここに来ているんだ。」


話を終えた教授がヨハンを見つめた。

「薬もそろそろ効かなくなるだろうに、ここまで来てどうしたんだ?」

「片付けることがあって来ました。」

「そうか。それも君の意志だろう。」

「ありがとうございます。おかげで多くの時間を稼ぐことができました。」

ヨハンは教授に深く頭を下げて挨拶し、その場を離れた。


残っていたソ・ムンド教授は、そんなヨハンを見つめたが、すぐに再び白い砂浜へと視線を移した。

目元に刻まれた深い皺の間から、10年前のあの日、海岸に赤く染まった血痕がちらりと浮かんだ。

「まったく、頑固な若者だ。誰かとそっくりだな。」


***


ヨハンはテトラポッドの上に座り、夕焼けが沈みゆく海を眺めた。

赤く染まった空の上を数羽の黒いカモメが飛び交い、吹き付ける海風に揺れる水面の赤い光が、濃い青色と混ざり合って暗赤色に揺らめいていた。

「おじさん、そこに登ってはいけませんよ。」


聞こえてくるイウムの声に、ヨハンは顔を向けた。


黒いスーツ。

白いシャツ。

黒いネクタイ。


黒いスーツを着たイウムが、笑みを浮かべて自分を見つめていた。10年以上も自分と共に過ごし、自分が辛く苦しい時にそばにいてくれた大切な人。自分の最期の道を看取ってくれる人。


「イウム。」

「ん?どうした?似合わないのに、なんで声を荒げるの?」

「ありがとう。愛してる。」

「全部分かってるよ、この野郎。それより、時間だ。行こう。」

イウムは軽やかな口調でそう言い放つと、ヨハンの胸を拳でポンと叩いては、背を向けた。


激しい海風と共に、黒く長い髪が翻った。翻る髪の間から、透明な何かがきらりと光って消えた。

ヨハンはしばらくその姿を見つめた後、イウムの後を追って歩みを進めた。いよいよ最後の公演を行う時間だった。


***


夜11時。ヒルデガルド。

セジンが、上半身裸のヘジンの体に圧迫包帯を巻いてあげていた。

楽器を取り出していたハミンがその様子を見て、ニヤリと笑った。

「おい。お前、胸もないのに、なんでそれを巻くんだ? それはタイから帰ってきた後に巻くべきだろ。」

「このクソ豚…うっ!」


逆上したヘジンが体を起こそうとしたが、押し寄せる痛みに顔をしかめ、再びへたり込んだ。

その姿を見たハンギョルが無造作に口を開いた。

「ついに決心したのか? 俺が女性ホルモンの注射代は出し合うよ。俺、金持ちだって知ってるだろ?」


「クソ…」

ヘジンの暴れぶりを見て、二人は笑いながら外へ出て行った。

セジンはそんな彼らを見て、ただ笑っていた。


***


海雲台の冬の夜は、思ったより寒くなかった。

街灯に反射して白く輝く砂浜の上に、横5メートル、縦4メートルほどの仮設ステージが設けられていた。


黒いモジュール式の仮設ステージの上には、同じ色の電線が乱雑に敷き詰められていた。

最も目立つ二つのマイクは、ステージの最前列中央に並んで立っていた。

右側のマイクの横にはカバーがかけられたキーボードが、左側のマイクの下には白いアコースティックギターが置かれていた。


マイクを中心に、ステージ正面の両端には、アンプの側面に古びた黄色いステッカーが何枚も貼られた2つの黒いアンプがあった。

ステージ中央の後方には、わずかに段差のある壇があり、その上にはDJテーブルが置かれていた。

テーブルの上には、ラップトップとコントローラー、そして小さなドラムパッドが整然と並べられている。


ステージの背後には、白く広がる砂浜と漆黒の海、そして白く砕ける波の音が聞こえてきた。


二人の女性がステージの近くへと近づいてきた。

ステージの近くには、すでに30人近くの人々がステージを取り囲むように立って会話を交わしていた。

「ここだよね?」

「うん。インスタのバンド告知にある地図はここだよ。」


「ステージ、ちょっと小さいね?」

「そうよね。うちのオッパやオニイちゃんたちが、何が物足りないって言うのよ。」

「おい。メンバーみんな、お前より年下だぞ。」

「何よ、カッコいいならみんなオッパやオニイちゃんでしょ。」

しばらくおしゃべりしていた二人の女性のうち、一人がステージの方を見つめ、ワクワクした表情を浮かべた。

「ねえ、来た!」


「今日の衣装…すごくかっこいい。」

もう一人の女性が目を輝かせながら、ステージへ向かう一行を見つめた。


淡いベージュのスーツを着た一人の男性。

黒いスーツを着た二人の女性と二人の男性。

互いに軽く叩き合い、笑い、ふざけ合いながらステージへと上がった。



***


人混みを掻き分け、ヨハンが率いるバカたちが威風堂々とステージに上がった。

ヨハンを除く全員が、まるで衣装を統一したかのように、さらさらと流れるようなシワになりにくい素材の黒いワイドパンツ、同じ素材の白いシャツ、指の三節ほど緩く結んだ黒いニットタイ、そして黒いブレザーを着ていた。


ウンビは同じ服装で、腕には肩章が、頭には白いリボンが結ばれていた。

ヨハンは、硬めの素材の白に近い淡いベージュのスーツに白いシャツ、そして白いシルクのネクタイを緩く締めていた。


小さなステージに上がったメンバーたちがそれぞれ席につくと、ヨハンがマイクを握り、観客たちを見渡した。


「長くお待たせしましたね? よくお会いする方もいらっしゃいますね。」

観客の間から笑い声が聞こえてきた。

「はい! 長く待っていました。」

どこからか聞こえてきた女性の声。

「天安、大田、大邱、密陽まで全部見に行きました!」

観客の後方から聞こえてくる力強い男性の声に、観客たちは軽く笑った。


「ここに来るために休暇を取って来ました!」

涙声のイウムの声に、ヨハンの表情が一瞬曇った。


「さあ、それでは長く待ってくださった方もいらっしゃいますし。」

すぐに表情を明るくしたヨハンが、イウムにウインクした。


「毎回来てくださる方もいらっしゃいますし。」

ギターのネックを握りしめ、ピックの持ち直した。


「休暇を取って来られた方もいらっしゃいますし。」

ヨハンは声を詰まらせるイウムを見つめた。


「最後に思いっきり盛り上がっていきましょう!」


***


ステージの一番奥にあるDJブースから、ハンギョルが前方を見つめた。

ヨハン、ハミン、ヘジン、そして自分。

10年の時を経て、ついに再びこの場所に立つことになった。


ふと、暗赤色の制服を着た友人たちの姿が目の前に浮かんだようだった。


テーブルの上のドラムパッドを軽く叩き始めた。

キックは薄く、ハイハットは遅く、オフビートで。


制服を着た、まだ幼いヨハンが白いアコースティックギターを軽く叩いた。

弦を弾かず、木製の胴体だけを叩いた。

リズムのように、まるで呼吸をするかのように。


黄色い髪を二つ結びにした少女、ヘジンのベース演奏がその上に滑り込んだ。

一定のリズムで歩くかのように、急ぐことなく。


ウンビのキーボードの音、複数の鍵盤を同時に押して和音となったコード、10年前には存在しなかったその音が、ハンギョルを現実に引き戻した。


明かりの消えた窓の向こう、名もなき顔たち

笑っているけれど、何も言わないね


10年前のヨハンの声に似ているけれど、もう少し整ったウンビの華やかな声。


ガラスカップに残った夜の冷めゆく温度

僕たちは皆知っている、これが最後だってことを


ヨハンが弦を荒々しくかき鳴らした。

まるで空間を切り裂くかのように鋭い音が響き渡った。


ゆっくり歩いても急いだことはなく


ウンビの声の下に、ヨハンの荒々しい声が重なり合った。


掴まなくても、いつもそばにいたんだ


10年前とは違う荒々しい声、だが変わっていなかった。

ヨハンはいつだって、自分にとって最高の楽器だった。



ウンビの歌が止まり、キーボードの音も次第に小さくなっていった。

ハミンのエレキギターが、ヘジンのベースが、ヨハンのアコースティックギターが順に止まった。


ハンギョルの左手はそのままドラムパッドを叩き続け、右手はミキサーを操作した。

一定のリズムで響いていたドラムの音が金属音に変わり、リズムがずれた。


右手が再びドラムパッドに戻り、軽く動いた。

薄い皮を木製のスティックで叩く音が、金属音とずれて聞こえてきた。


揺らぐリズム。


ヘジンのベースが、抑揚のない単音でリズムを作りながら入ってきた。

オルタナ・ジャズ特有の複雑なリズムが、海雲台の黒と白の海岸に漂った。

弱、強、弱、強。


ヨハンのアコースティックギターが濁った音を吐き出した。

左手の指は弦を最後まで押さえず、右手のピックは軽く弦を弾いた。


ハミンの青いヘッドレスギターがゆっくりと合流した。

半音を中心に、刃のように鋭く、重なり合いながら鋭く突き刺していった。


ウンビが語りかけるように歌い始めた。


私たちはもう同じことを二度と言わない

ナイフはテーブルの上にあり、誰が掴むかは決まっている


オフビートと引き音、半音で構成された奇妙な演奏が響き渡った。


二曲目が終わり、息を切らしていたヨハンがステージの下を見下ろした。


道端の街灯から差し込む光が、かろうじて届く距離にイウムの姿が見えた。

相変わらずカメラの後ろに隠れ、肩だけを上下に動かしている姿。

顔を見せてくれればいいのに。

彼女は10年前も、あそこであのように立って自分を見ていた。

赤い光がちらつき、かすかに悲鳴が聞こえるようだった。


ヨハンはハミンを見つめた。ハミンは笑みを浮かべてギターを掲げた。

マイクに口を近づけ、低いトーンで獣の唸り声のような音を絞り出した。

今日はあの白い砂浜の上に、赤い色が塗られることはないだろう。

そしてこれで、置き去りにしたものを取り戻すのだ。


ヨハンが荒い声で唸り始めた。


ギターを掲げていたハミンは、すぐに腕を下ろし、自分のギターをじっと見つめた。

ギターを握った指先が微かに震えていた。

心配しないで、今日は大丈夫。

ハミンは笑った。

ミョルニルが稲妻を放った。


ハンギョルが顔を上げた。

走り去るハミンも、その先にあるヨハンもいなかった。ただ黙々と、あえぎながら世界に向かって果てしなく咆哮する背中だけが視界に映った。

思いにふける暇はない。この曲の主人公は、実は私なのだ。

ハンギョルの両手が、必死にノブを回し、パッドを叩いた。


右隅に置かれたラップトップのマウスカーソルを動かし、波形を操った。

いつも通り完璧だった。


ヘジンは頭に被った黒い中折れ帽を前へ引き下げて被り直した。

目が覆われ、闇が訪れた。

闇の間から赤い光が揺らめき、黄色い光が飛び出した。


あそこの白いものは、おそらく目に付いた埃だろう。

あのバカどもは、俺がいなければダメだ。

傷ついた肋骨がズキズキと痛んだ。

笑いがこみ上げてきた。

自分の代わりに、金色のベースギターが笑いを吐き出した。


ウンビは妙に悲壮なメンバーたちを見ながら、美しく、魅惑的な声で呟いた。

「カ…クラッチ?」


***


カメラの後ろに隠れたイウムは泣いていた。

音楽は聞こえてこず、ただステージに立つ白いヨハンだけが目に飛び込んできた。

ふと、肩に重みを感じた。


セジンが自分の肩に手を置き、自分を見つめた。

「笑って。顔を見せて。」


イウムは涙を拭い、カメラの後ろから姿を現した。


ステージが一目で見渡せた。

ハミンはその体格に似つかわしくないほど小さな青いヘッドレスギターを弾いていた。

頭を深く下げ、足元に乱雑に置かれたペダルを必死に踏み続けた。


反対側のヘジンは、中折れ帽を投げ捨て、黄金色に輝くベースギターをぶら下げたまま演奏していた。

ハミンと同じように頭を深く下げ、足元に乱雑に置かれたペダルをひたすら踏み続けた。

音はまだ聞こえなかったが、アンプから漏れ出る圧力が壁となり、イウムの体を打ち続けた。


歌っていたヨハンと目が合った。

首の血管を浮き立たせ、汗で光り輝き、苦痛で顔を歪ませながらも、歌を止めなかった。

歌っているその顔は笑っていた。イウム自身だけをじっと見つめながら笑っていた。

音が聞こえてきた。ヨハンの声だった。


波乱を夢見た十九歳

残されたのは傷だけという波乱


一節を終え、しばらく喉を押さえて頭を振るヨハンの姿が見えた。


埃に覆われた約束の終わり……。


間奏が終わり、再び歌い始めたヨハンの体がガクッと硬直した。

喉を押さえ、当惑した表情を浮かべていた。


驚いたイウムが一歩前に踏み出した。

ヨハンが手を伸ばし、手のひらを見せた。


親指を折り曲げた。

人差し指を折り曲げた。

中指を折り曲げた。

薬指を折り曲げた。

最後に小指を折り曲げた。


ウンビの声が溢れ出た。


死によって取り戻した命

約束へと続く道


夢のような旅の果てに

約束の果てにたどり着いた


演奏と歌が続いた。

ヨハンはイウムに微笑みかけ、よろめく足取りでステージから降りてきた。

イウムはヨハンに近づき、よろめくヨハンを支えた。


「俺のステージはここまでだ。さあ、行こう。」

ヨハンが囁くように言った。


「どこへ行くの?」

イウムが尋ねた。


「ハミンの妻。まだやるべきことが残ってるんだ。」

ヨハンとイウムは人混みの中に消えていった。


***


ヨハンの声が止んだ。


戸惑ったが、演奏を止めなかった。

壁は積み上げ続けなければならなかった。

青いヘッドレスギターは、雷を放ち続けた。



ヨハンとイウムの後ろ姿が消えた。

帽子を投げ捨てたことを後悔した。

見たくはなかった。

それでも壁は積み上げ続けなければならない。



両手が忙しく動いた。


電子ドラムパッドを叩き、コントローラーのノブを調整し、ラップトップの波形を調整した。

電子音が壁となり、その壁が二人の足取りを軽く後押ししてくれるだろう。



声に涙が混じった。

止まらなかった。

これが私の、私たちの送り出しだから。


***


冷たい冬の海風が、二人を休む間もなく吹き荒れた。

闇の中に、白と黒の二人は互いに寄り添いながら、荒々しい冬の海風を切り裂いて歩き続けた。


どれくらい歩いただろうか、二人の目の前に古びた青いミニバスが見えた。

「イウム。もう少しだけ手伝って。」


ヨハンは笑みを浮かべてその場にへたり込んだ。

イウムは笑い、泣きながらヨハンを起こした。

「行こう。」

何度も崩れ落ちそうになるヨハンを支えながら、イウムは歩いた。

暗闇と明かりが繰り返して点滅するぼやけた視界を手のひらでこすりながら、ヨハンはそんなイウムに寄りかかり、力ない足取りで歩みを進めた。


ミニバスの後ろにたどり着いたヨハンが口を開いた。

「俺の内ポケットからマジックを出してくれ。」

イウムはヨハンの内ポケットから黒いマジックを取り出し、キャップを開けてヨハンに手渡した。


ヨハンはミニバスにもたれかかり、震える手でマジックを握った。


10年前に作ったバンドのステッカー。


黄色い背景に、ダサい黒のゴシック体。


ゴヨハミンハンギョルヘジン。


「ヨ」の字に×印を付けた。

その上に、少し曲がった矢印を描いた。

矢印の先に「ウン」の字を書いた。


「宿題終わり。」

ヨハンが呟いた。


手に握っていたマジックが力なく床に落ちた。


「ありがとう。」

ヨハンはミニバスの背もたれにもたれかかり、ゆっくりと崩れ落ちた。


イウムはヨハンの隣に座った。

ヨハンはイウムを見つめながら、肩をポンポンと叩いた。

イウムはヨハンの肩に頭を預けた。


「今、何時だ?」


ヨハンがイウムに力のない声で尋ねた。


「12時、1秒。」

「ハハ。それでも約束は守ったぞ、バカども。」

ヨハンは笑いながら呟いた。


「お疲れ。愛してる。」


イウムは冷めゆくヨハンの体温を感じながら言った。

ヨハンはうなずいた。


「ありがとう。愛してる。」


「……」


「そして、ごめ…。」


ヨハンの頭が力なく垂れた。


イウムはふと空を見上げた。


漆黒の夜空から、小さくて白い星々が降り注いだ。

吹き付ける風に揺られながら、その星の群れは緩やかに揺れ、くるくると回りながら、そうして降り注いだ。

雪片の間から、冬の風に乗ってウンビの声が聞こえてきた。

声を詰まらせた声だった。


夜空に二つの星、その下に流れ落ちた


銀色の水銀を指先で拭い取ると

ふんわりと固まっては流れ落ち、消えていった。

冷たかった銀色の液体は体温で温まり

ふんわりと固まっては溶け出し、消えていった。

指先には銀色の痕跡、温もりだけが残り

夜空の二つの星、その場所には相変わらず輝いている。


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