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EPISODE17. 秩序、騒ぎ、そして祭り。

「ここがあの有名なソンド・トライボウルか。」

ある男性が隣にいる女性の手を握りながら歩き、感嘆の声を上げた。


「遠くまで来た苦労は無駄じゃなかったね。」

女性はふくれっ面ながらも、笑みを浮かべて言った。


「疲れた。とりあえず座って、何か飲んでから行こう。」

男性が指さした先には、コーヒーや軽食を販売するフードトラックが見えた。


女性がそこを眺めていると、思わず声を上げた。

「きよしこの夜!」

女性の視線の先には、暗赤色の制服ジャケットと同じ色のズボンを履いた一群の人々が、騒々しく走り去っていた。


「こんにちは。ハンギョル・ワンツール・バンドです。有名人の名前に便乗して大儲けしようとする、下品なバンドで……あ、なんで殴るんだ、この野郎!」

不良っぽく見える、制服姿のヨハンが獰猛な表情で牙をむき出しにして唸ると、顔を隠していない熊のような体格のハンギョルがヨハンの後頭部を叩き、マイクを握った。


「バカの戯言は忘れて、このように素晴らしいステージに招待していただき感謝します。バンド『ゴヨハミンハンギョルヘジン』です。名声に恥じない演奏をお見せして帰ります。楽しんでください!」

クールに自分のセリフを終え、後ろのDJブースへ戻っていくハンギョルの後ろ姿を見ていたヨハンが、顔を向けハミンとヘジンを見つめた。


三人の視線が交わり、同時にハンギョルの電子ドラムパッドの音がアンプから流れ出した。

淡い緑色の軽快で繊細なドラムの音が、高出力の黒いアンプから流れ出した。

ドラムの圧力が、ヨハンの少し遅い心臓に拍動を加え、血液の流れを速めた。


一定のリズムでわずかに遅れる深緑色のビートが続き、だるいリズムを作り出した。


ウンビは肩をオフビートに揺らしながら、白いキーボードの鍵盤の上を、黄色いマニキュアが塗られた爪でトントンと叩いた。

ヨハンは深くうつむき、自分の白いアコースティックギター「モクレン」のボディを手のひらで叩いた。

ハンギョルの電子ドラムパッドの演奏から流れ出るだるいリズムに、オフビートで入る鈍い打撃音が、微妙な緊張感を生み出した。

パーカッションたちの演奏が流れる中、制服を着たスレンダーなシルエットのヘジンが、牧歌的なネクタイを緩めながら魅惑的な微笑みを浮かべた。舞台裏に設置されたスクリーンにヘジンの顔がクローズアップされると、観客から感嘆の声が上がった。


周囲を一周見回して挑発的な微笑みを浮かべると、背負っていた黄色いベースギターの弦を、白く長く細い指先でなぞった。


やがて聞こえてくる、ねっとりとした紫色のスラップ。鋭い金属音が打楽器の音のように広がっていった。


締め付けるような金属音が広がるのと同時、ヨハンがマイクに口を近づけて唸った。


スムース・オペレーション


不自然な発音。

ひび割れた質感そのままに感じられる荒々しい声。

苦痛を堪え、低く肺の奥から絞り出すような声。


ウンビがヨハンを見つめ、手招きをしてから歌い始めた。

エフェクトがかかり、夢幻的に広がっていく声。


明かりの消えた窓の向こう、名もなき顔たち

笑っているけれど、何も言わない


ガラスカップに残った夜。冷めていく温度

もう知っている。夜が終わろうとしていることを。


ウンビの声の下に、ヨハンの唸るような呟きが混じり込んだ。


君の眼差しはいつも早くて、

僕の答えはいつも遅すぎた。


同じ言葉を、違うリズムで、

ずれてばかりいて、傷ばかりが積もった。


ドラムの音が少しずつ後ろに下がり、リズムを乱した。

テンポが落ち、ウンビの夢幻的な声とヨハンの荒々しい声が再び噴き出した。


Smooth operator

互いをすり抜け、ぶつからない夜の軌跡のように


Smooth operator

掴みもせず、逃げもしない。選択ではない方法。


Smooth operator

名前はなくても、僕たちは同じ夜を確かに越えたんだ


Smooth operator

終わりじゃない。ただここで少し止まっただけ


ウンビとヨハンがマイクから顔を離し、ハミンが一歩前に歩み出た。


一音弾いて休んで、また一音弾いて休んで。

少し歪んだテンションの演奏の上に、ヘジンが親指で弦を叩き、人差し指で弦を弾き上げ始めた。


いたずらっぽい笑い声のような音。


ハミンがいたずらっぽい表情でヘジンを見つめると、ヘジンは顔を背けてその視線を避けた。

再び4小節のギターソロが過ぎると、ヨハンがマイクに顔を近づけた。


君の眼差しはいつも早くて、

僕の答えはいつも遅すぎた。


同じ言葉を、違うリズムで、

ずれてばかりいて、傷ばかりが積もった。


淡々と、呟くように、しかし聴く者に不可解な感情を無理やり押し込むような声。

やがてウンビが口を開き、歌を再開した。


Smooth operator

互いをすり抜け、ぶつからない夜の軌跡のように


Smooth operator

掴まなくても、逃げもしない。選択ではないやり方。


Smooth operator

名前はなくても、僕たちは同じ夜を確かに越えた


Smooth operator

終わりじゃない。ただここで少し止まっただけ


ウンビの声が消え、ヨハンの声が大きくなった。

まるでラップをするかのように、速く、そして荒々しく吐き出した。


掴まない、逃げもしない

これは選択じゃなくて、ただのやり方さ


ハンギョルがパッドを叩くと、録音されていたウンビの声が砕け散るように流れ出した。


選択。やり方。選、選-択。やり方。



言葉がいつの間にか砕け、砕けて音として聞こえる頃、ヨハンとウンビの声が再び飛び出した。


Smooth operator

名前はなくても、僕たちは同じ夜を確かに越えた


Smooth operator

終わりじゃない。ただここで少し止まっただけ


二人の声が消え、やがて青いエレキギターの電子音が消えた。

そしてキーボードで維持されていたメロディーが消え、ドラムの音が徐々に収まっていった。


残っていたベースの音が徐々に収まり、ステージが暗転した。


「うわっ!」

静寂と同時に歓声が飛び交った。


荒い息をついていたヨハンがスタンドマイクを直した。

汗の滴が顎先を伝い、モクレンの白いボディの上に落ちて、灰色の跡を残した。


「これから僕たちが奏でる音は、ここにいる皆さんの好みとは少し違うかもしれません。曲のタイトルは『ナイブズ・アウト』。有名な映画と同じタイトルですね。」


茶目っ気たっぷりのヨハンの言葉に、観客の間から笑いが漏れた。


「走れ、クマ野郎!」

ヨハンの荒々しい金属的な叫び声と共に、ハンギルが電子ドラムパッドを叩いた。

アンプを通してドラムの音が広がった。

拍子に合わない音、金属板が互いに噛み合って擦れる音が遅れて続いた。


心臓の鼓動に似た、革を木製のドラムヘッドで叩く音が、拍と拍の間をずれて響いてきた。


不安で不吉なリズムの下で、ヘジンのベースが支柱となって駆け上がった。

単調だが、中心を保っているとは言えないリズム。

「俺が中心だ」と叫ぶかのような、容赦なく正確な拍子。


ハミンのエレキギターが冷たい質感のエフェクトをかけて合流した。

一小節が終わる前に、二小節目がすぐに食い込み、音が重なり不協和音が生まれた。

不快で鋭い刃のような電子音。


ヨハンのモクレンの弦を、二本の指で一本ずつ弾き出した。

左手は指板の弦を半分だけ押さえた。

澄んでいない、鈍い音が広がっていった。

まるで刃で肺を刺され、声を出せない犠牲者のゴホゴホという咳に似た音。


ウンビの声が低く響いてきた。

まるで話すように、ラップするように、陰鬱に、優しく


私たちはもう、同じ言葉を、二度と口にしない。

ナイフはテーブルの上にあり、誰がそれを握るかは決まっている。


ハミンのギターが、音にならない鋭い音を繰り返し吐き出した。


ヨハンのアコースティックギターが、その鋭い音を避けて逃げ出すかのように、リズムを切り刻んだ。


誰も傷つかないように終わらせる方法を、僕たちは知っていたじゃないか

目が合えば言葉はいらない、顔を背ければすべてが終わる


追いかけ、追われる演奏が、終わらないかのように続けられた。


君は冷静で、僕は静かだった。だから、もっと鋭かった

これは戦いじゃない、選択でもない。ただ残された動作に過ぎない


剣を置く人と、まだ握りしめている人。その違いだけが残った

血もなく、音もなく、だからもっと正確だ


エフェクトは次第に強まり、音は歪み、エフェクトをたっぷりかけた声は聞き取れないほどになった。


私たちはすでに終わった後に立っていた


すべての楽器が一斉に密集し、最後の小節で同時に止まった。

楽器の残響の合間から、ウンビの最後の言葉が聞こえてきた。


私たちはまだ

ナイフのそばにいる。


奇妙にうなる楽器の音とウンビの声が混ざり合い、徐々に静まっていった。

そして、後ろのDJブースでドラムパッドを演奏していたハンギョルが、ショルダーキーボードを背負って一歩前に歩み出た。


ハンギョルが歩み出たのと同時、ヨハンが嘲笑するような表情で口を開いた。


この世のすべてのソロたちに捧げます。


冷たく薄い機械音がステージの床を伝って流れ、観客へと届いた。

ヨハンがニヤリと笑いながら、モクレンのボディを軽く、規則的に叩いた。


ショルダーキーボードの冷たい機械音が奏でるメロディーと、アコースティックギターの胴体を叩く温かいリズムが混ざり合うやいなや、その隙間からハミンのエレキギターが放つ電子音が、ざわめくノイズを乗せて割り込んできた。


ヨハンの荒々しい声が流れ出た。


僕のそばには冷気漂う機械ばかりなのに

君のそばには温もりのある恋人の眼差しがいっぱい


孤独な僕の人生における伴侶は機械だけ

幸せな君の人生における伴侶のささやき


これまでの曲と同様に、抑揚がほとんどない単調な音。

しかし、歌ったりラップしたりというよりは、まるで話しかけるように吐き出すような声。


ステージの前へと歩み出たハンギョルは、ショルダーキーボードを背中に回して背負い、ヨハンのマイクを乱暴に奪い取った。


寂しい、辛い、物悲しい

俺にも彼女が必要だ

俺以外みんなゴキブリ


寂しい、辛い、物悲しい

俺にも彼女が必要だ

俺以外みんなゴキブリ


シンガーソングライターとして有名だったハンギョルの甘美な声はなかった。

怒りに満ちた声。

燃え上がるような眼差し。

明瞭な発声。


バンドメンバーの演奏がさらにスピードを上げ、ハンギョルの声がもう一段階高くなった。


ジャバドジャバと終わりのない一対のゴキブリ。

カクラッーチュ。


ハンギョルのゴキブリの鳴き声に合わせて炸裂するウンビの魅惑的なコーラス。

ウンビの口元にほのかな微笑みが混じっていた。

おそらく嘲笑に近いもの。


その姿を見たハンギョルの額に青筋が浮き出た。

同時に喉にも青筋が浮き上がり、声がさらに一段階高くなった。


ガバドガバドと続く二組の…ゲホッ。

カクラッ、チュッ。


突然、喉を押さえてゴホゴホと咳き込むハンギョル。そして反射的にコーラスに入っていたウンビが、驚いた目でハンギョルを見つめた。


演奏は中断されず、ヨハンがマイクを握った。


自分だけがソロという悲しみ。

こんな風に吐き出す。

悲しみが喉に詰まってゴホゴホと咳き込む。


君を除いて、僕たちはみんなゴキブリ。


愉快に笑いながらラップをするヨハンと、落ち着いて呆気にとられたような目でそれを見つめるハンギョルだった。



ヨハンは演奏が終わり、歓声を上げ騒がしく笑い騒ぐ観客の中で、両手を合わせて見つめていたイウムに視線を向けた。

イウムとヨハンの視線が合い、ヨハンの口が音もなく動いた。


面白かった?


イウムが頷き、手招きした。

二人だけの約束となってしまった手招き。


そのまま続けよう。


ヨハンは声を上げて笑い、再びマイクを握った。


「皆さんがあまりに笑うと、うちのDJが恥ずかしがります。ほどほどに笑って、さあ、また走り出しましょう。」


ヨハンがハミンを見つめた。

ハミンがうなずき、うつむいて足元のエフェクターを見つめた。


一筋の涼しい海風が吹き抜けた。

また一筋の風が吹き抜け、ハミンの足がエフェクターを踏んだ。


アンプから正体不明の音が漏れ出した。

ぎゅっと抑え込まれた形のないギター音が、風の間を壁となって吹き出した。


ウンビのキーボードがもう一層を重ねた。

壁となって吹き出すギター音の背後から、また別の壁となって近づいてきた。


幾重にも積み重なった音の壁の間から、鈍く、反響のような、微妙に揺れるドラムの音が追いかけてきた。


ヨハンがモクレンのボディをゆっくりと叩くと、機械的なリズムの中に、人間の心臓の鼓動を思わせるリズムが混じり込んだ。


空っぽの機械の中に閉じ込められたかのように、

静寂だけが私を締め付ける。


ひどく歪んだギターの音がわずかに伸び、厚く押し寄せた。

音が幾重にも積み重なった壁となり、波のように押し寄せた。


波乱を夢見た十九歳、

残されたのは傷だけという波乱。


機械的で隙のないベース音が壁を押しやり、破壊力を高めた。


真っ白な泡が砕けるように、

壊れていた夢を取り戻して。


ヨハンの緩やかな声がエフェクトを帯び、ひどく歪んで機械音のように聞こえてきた。


幾重にも積み重なった壁の間から、機械音と化した声が食い込んでいった。

朦朧として幻想的な演奏と歌が続いた。


夢のような旅の果てに

約束の果てにたどり着いた。


最後の節の歌詞はほとんど聞こえなかった。

楽器の音が一本ずつ消え、最後にハミンがギターのボリュームノブをゆっくりと下げた。


渦巻いていた壁が消え、音の残像だけが穏やかな波を描いて消えていった。


消えた波の上に、人々の歓声が再び押し寄せてきた。


「お兄ちゃん、かっこいい!」


とりわけ大きく聞こえる声に、イウムは両目から赤い炎を噴き出しながら振り返った。


「私のものなのに…」


イウムの呟きを聞いたのか、ヨハンはイウムを見つめてニヤリと笑い、再び口を開いた。


いつだって、いつもそうだった。



ステージの照明が静かに変わり、ハンギョルのキーボードがアコースティックピアノのような音色で流れ出した。


相変わらず、彼の音楽はピアノから始まるかのように、くっきりとしていながらも甘美な旋律。

まるで海岸の荒々しい岩の断崖の上のようなイメージを想起させるメロディーが流れ出した。


ウンビがマイクを握った。

アンプを通して、かすかな息遣いが漏れ出た。


夜空に二つの星

その下に流れ落ちた


地面に広がる霧のような声に合わせ、エレキギターの電子音がきらめきながら追従し、アコースティックギターの温かい音色がその音を包み込みながら広がっていった。


ぼんやりとまとまり、

流れ落ちて消えていった。


演奏の音が一瞬消え、声だけが残った。


夜空に二つの星

その場所に、相変わらずある。


高音の技巧も、強烈なフックもない、ただただ澄んだ音色一つだけで歌われた歌が、松島の暗い夜空へと広がっていった。


そうして、彼らの秩序あるが騒がしい祭りは幕を閉じた。


***


永遠に終わらないでほしいと願った熱い夏が過ぎ去ろうとしていた。


ヨハンと友人たちは相変わらず路上でストリートライブを続け、彼らの公演ごとに訪れる人々は次第に増えていった。


夏が終わり、短い秋がさらりと過ぎ去り、いつの間にか人々の服装が厚くなる頃、ヨハンは再び病院に入院した。

相変わらず他の三人の間抜けたちと一人の妹は病室にピザやチキンを持ち込み、ヨハンの機嫌を損ねた。イウムはそんな彼らを見つめ、こっそり外に出てため息をついてから戻ってきた。


季節が冬の真っ只中に入った頃、ヨハンは病院を退院した。


「寒くない?」

ヨハンの腕に腕を組んでいたイウムが、ヨハンを見つめながら尋ねた。


「寒いかどうかわからないな。」

少しやつれたヨハンが、照れくさそうな笑みを浮かべて頭をかいた。


「それ、ちょっと羨ましいな。」

イウムが顔を背けながら呟いた。


「当然羨ましいに決まってるよ。もう僕は寒さを感じない体なんだから!」

じゃれ合う恋人たちの前に、青いミニバスが近づいてきた。


「中に入って待っててよ。」

ハミンが窓を開けて、二人の恋人に言った。


「ただ、病院の匂いがあまり好きじゃないんだ。」

ヨハンは病院の正門を見つめながら呟いた。



2025年12月25日。クリスマス


ヨハンは家の庭にある松の木の下、父が作ってくれたベンチに座り、庭を見渡した。


真っ白に変わった庭、ハミンが作って行った、自分に似ているという白くてぽっちゃりした雪だるま。


回帰直後は青々としていた松の木は、回帰前に死にかけていた時に見ていた松の木のように、すっかり枯れ果てていた。


「おい、お前までこんなことしたらどうするんだ?」


ヨハンは松の木の荒い樹皮を撫でた。

まるで朽ちて崩れ落ちそうな紙のように、砕けそうな樹皮の隆起した部分を通り過ぎ、くぼんだ溝の間をなぞった。


生命の気配もなく乾ききったその溝の間から、砂のようにさらさらと音を立てる粉がこぼれ出てきた。


「おい。頑張れよ。お前。」

ヨハンは松の木のように乾いた笑みを浮かべた。


「お兄ちゃん、中に入ってご飯を食べよう。」

ウンビの声に、ヨハンは松の木から手を離し、家の中へと歩みを進めた。


「うわっ、これ全部何?」

ヨハンの両目は飛び出さんばかりに大きく見開かれた。


食卓の上は数え切れないほどの料理で埋め尽くされていた。

ツヤツヤと輝く唐揚げ、ヨハンが一番好きな水煮肉とキムチチム。

そして、湯気がモクモクと立ち上る母の手作りテンジャンチゲからは、ヨハンの親指ほどの大きさのハサミのような手が出ていた。


「えっ…ママ。味噌チゲにロブスター入れたの?」

「違うよ。あれはロブスターじゃなくて、スノークラブなんだよ。」

「……えっ……。」


「おい、ブタ野郎、お前は両方の脚を全部食うのか!」

「ふん、そう言うくせに、スノークラブのハサミを全部食っちゃったくせに。」

「お前が殻をむくのが面倒だから食べなかったんじゃないの!」

「二人とも静かに!」


夕食は平和だった。


平和で騒がしかった夕食が終わり、ヨハンは松の木が見えるリビングの窓辺に座り、白いギターを弾きながら窓の外を眺めていた。


「パパとそっくりだね。そこに座ってギターを弾く姿が。」

片付けを終えてそばに近づいてきた母の声が聞こえてきた。


「パパもそうだったの?」

「うん、そうだったよ。あそこに座って、弾くわけでもないギターを弄りながら松の木を見て、その横で走り回っている君とウンビを見て。」

「私がウンビと走り回ってたの?ウンビは、私に勝とうとして追いかけ回してただけだよ。」

「それって一緒に遊んだってことじゃないの?」

「ウンビ、あのブタは何してるの?」


「ウンビはさっきこっそりお酒を飲んで、自分の部屋に這い込んで寝てるよ。」

「ママとそっくりだね、お酒が飲めないってのは。」

「それでもパパのおかげでだいぶ上達したよ。」

「ママ、ごめんね。」


ヨハンの唐突な謝罪に、ヨハンを見つめていた母の瞳が揺れた。


「何が?」

すぐに揺れる眼差しを隠すと、微笑んだ。


「ただ、すごくごめんね。」

「お父さんとそっくりだね。突然謝るなんて。」

「パパが?」

「うん。お父さんもあの松の木の下で、ママに『ごめん』って言って眠りについたんだって。」

「えっ…ママ?」


窓の外を見つめていた母の視線が、ヨハンの顔へと向かった。

「お母さんは、あなたの選択を尊重するわ。」

「お母さん?」

「愛してるわ。ヨハン。」


母は、白木蓮夫人はそう言うと、背を向けて階段の上へと消えていった。

居間から階段へと向かうその短い間、ヨハンの目に映った母の背中は、泣いていた。


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