ボーナスストーリー。ハミンの春かな?
2025年6月26日
ハミンは黄色いエプロンを巻いて、カウンターの中に立っていた。
アルバイトとして雇ったウンビは、ヨハンが病室にこもっているせいで、あまり来なかった。
「今月の給料から全額差し引くわ」
ハミンはぶつぶつと呟いた。
カフェの隅でぶらぶらしていたセリンが耳をピンと立て、ハミンの方へ駆け寄ってきた。
「私、呼ばれましたか?ハミンさん?」
「え?いや、呼んでないけど?」
「えー、正直になってもいいですよ。私のようなスーパースターとこうして一緒にいられるのが光栄なのは分かっていますが、ハミンさんなら大丈夫です。」
セリンの顔が赤らんだ。
ハミンに初めて会った時のことを思い出した。
2025年3月15日。
セリンはマネージャーをせがんで、ハンギョルのスタジオへ向かった。
「何よ、宇宙一のスターである私のリクエストを、どうして断れるの!」
ベンの後部座席に座り、腹を立てているセリンだった。
いくら有名な作曲家でありプロデューサーであるハンギョルだとしても、自分が望む曲を他の歌手に譲り渡すなど、あり得ないことだった。
「インファンさん。もう少し早く行けないの?」
慢性的な渋滞区間に入ったため、車は動かなかった。
そのせいでさらに腹が立ったセリンは、むやみにマネージャーに八つ当たりした。
「いや、ごめん。インファンさんのせいじゃないし。」
縮こまるマネージャーの姿に、むやみに罪悪感を覚えたセリンはすぐに謝った。
ハンギョルのスタジオに到着した。
近くに駐車スペースがなく、マネージャーに車を持って戻るように言ったセリンは、建物の地下にあるハンギョルのスタジオに向かって階段を降りた。
ドアが少し開いていて、中から演奏の音が聞こえてきた。
セリンは魅了されたように、その音に導かれるように中に入った。
中には4人が合奏をしていた。
真っ先に目に入ったのはハンギョル・プロデューサー。
ショティ・キーボードを肩に担いで演奏していた。
次に目に入ったのは、黒い肌をしたギタリストだった。
大きな汗の滴を流しながら、輝く白い歯を見せて明るく笑う顔。
仲間たちを見つめる優しい眼差し。
黒く縮れた髪。
少し丸い顔と、その顔の下にある太い首。
その首を支える、たくましくふっくらとした僧帽筋と肩。
ぽっこりと突き出た愛らしいお腹。
お腹を隠している、その体格には似つかわしくない小さくて愛らしい青いギター。
青いギターの指板を弾く、繊細で長い指。
その手を支える上腕の腱。
美しさそのものだった。
セリンの両目にハートが浮かんだ。
「あの、カン・セリンさん?」
ハミンの声がセリンの意識を現実に引き戻した。
顔が熱くなったのか、扇子を絶えず振っていた。
「あら、あら。はい、ハミン様。」
「後ろにお客様がいらっしゃいますので、少し……」
セリンはきびきびと後ろを振り返ると、顔を隠して、もともと座っていたテーブルへと素早く走って戻った。
「カプチーノ、シロップを10ポンプ入れてください。」
注文をする人々の声が、うつむいたセリンの耳に届いた。
セリンはぼんやりとハミンを見つめた。
一日中。
ハミンがセリンに近づいてきた。
ついに告白しようとしている瞬間なのか?
セリンの目に期待が浮かんだ。
「あの、セリンさん。」
「はい、ハミン様。準備はできていますよ。」
「え?」
「どうぞ、思う存分お話しください。恥ずかしがらないでくださいね。」
「あの…そうじゃなくて、閉店しようと思ってたんですが?」
「ふっ。恥ずかしがらないでくださいよ。」
一瞬笑みを浮かべていたセリンは表情を硬くして言葉を続けた。
「いいですよ。それなら、もう少し勇気が出るまで待ってあげましょう。一日あれば十分ですよね?」
呆気にとられた表情を浮かべたハミンは、少し考えてから言った。
「あの、明日は用事があるので、カフェのドアは開けません。」
セリンの目から炎が燃え上がった。
暗い路地。
丸い何かが必死に走っている。
大声で叫びながら。
「いや、なんで?私が何か悪いことしたの!」
ハミンが走っていた。
「オホホホ。ハミンさん、もう恥ずかしがらずに正直に話してください!」
「いや、それ何の話ですか!」
「オ~ホホホホホホ。」
歌手らしく声量があった。
ハミンが後ろをちらりと振り返った。
シェアキックボードに乗ったセリンが、いつの間に白いヘルメットまで被り、ハミンを追いかけてきていた。
ゆっくりと…
ハミンは歯を食いしばった。
右に曲がれば間違いなく障害物区間。あそこまでは追いつけないはずだ。
右に曲がった。目の前に低い塀が見えた。
足のスピードを上げた。
スピードが上がった分、顔にGがかかり、圧迫感が強まった。
瞬く間に塀が近づいてきた。
軽く両腕を伸ばして塀に手をかけ、
地面と平行に走っていた力の向きを、腕で軽く持ち上げて上方向へと移した。
体がふわりと浮き上がった。
お腹が引っかかった。
空中で二回転した後、塀の内側の土の地面を転がった。
大丈夫だ。私の生まれ持った肉体は、優れた弾力性と強靭さを備えているのだから。
転がっていた体を起こし、後ろを振り返った。
セリンの白いヘルメットが見えなかった。
振り切ったんだな!
笑っているハミンの目の前に、突然白い光が降り注いだ。
片目のライト。
その背後で髪が翻る黒いシルエット。
白いヘルメットがひときわ目に入った。
いつの間にか戻ってきたセリンが、ハミンの目の前にいた。
「オホホホホホ。」
ハミンは体を翻し、再び走り出した。
笑い声が追いかけてきた。




