2,信じない選択
2,信じない選択
弁明をさせて欲しい。
あれは二年前……。
「お前……。 何言ってんの?」
あいつの声は、呆れ半分、苛立ち半分だった。
「お前だろ。メールで悪口送ってたの。」
一瞬の沈黙。
「……は?」
「送ってねーよ。てかスマホ触ってないし。」
「いや、見たんだよ。」
言い切る。自分でも何を根拠にしているか分からないまま。
「見たって何を?」
「お前があいつへの悪口をメールで送ってるとこ。」
「だから、送ってねぇって言ってんだろ。」
空気が張り詰める。
「……なんでそんな嘘つくんだよ。」
その一言で、胸がざらついた。
「うそじゃねぇよ。お前そういう顔してた。」
言った瞬間、しまったと思った。
けど、もう遅い。
あいつの目が、はっきり冷たくなる。
「顔ってなんだよ。」
「俺が悪い顔してたってことか?」
「……」
「なぁ、それってさ。」
「お前が俺のこと、そういう風に見てるってことじゃねぇの?」
言葉が喉に詰まる。
否定したかった。でもできなかった。
だって、視えたから。確かにあの瞬間。
「……やっぱ意味わかんねぇわ。」
教室のドアに手をかける。
「てかさ、なんで信じてくれねぇの?」
その言葉だけが、やけに真っ直ぐだった。
僕は、何も言えなかった。
言葉が浮かばなかったんじゃない。
何を言っても嘘になる気がした。
スマホを打つあいつ。画面に浮かぶ文字。
「あいつバカみたい、死ねばいいのに笑。」
現実か、可能性か、 ……ただの錯覚か。
分からない。分からないけど、分からないまま人を疑った。
「……最悪だな。」
次の日以降あいつから話かけてくることもなかったし、僕も話す気になれなかった。
また同じことをするくらいなら——。
最初から、関わらないほうがいい。
あれからも余像の視えない人はいなかった。
例外もなく。
だから、避け続けた。
なのに……。
「えっと……。今日うちのクラスに転校してきた子だよね?」
「確か……。黒渕君!」
目の前の女子は思い出したのか、胸の前で手を叩く。
(同じクラスだったのか……。)
今日転校してきたとは言え、名前は覚えずともクラスの顔ぶれも頭に入ってないとは……。我ながら呆れる。
「急に声をかけて悪かった。今の言葉は忘れてくれると助かる。」
「えーきになるなー。」
手を縦にブンブン振って反抗してくる。いちいち身振り手振りが多いな……。
とにかく話題をずらしてしまおう。
「ここで立って何してたんだ?」
「あー……。」
「……観測?」
なんだそりゃ。
天体観測なら今の時間は早すぎる。
さては今流行りの、不思議ちゃんってやつだろうか。
「こんな時間になにが観測できるんだ?」
「動物の痕跡?」
「なんでさっきから、疑問符がついてるんだ」
ちょうどその時。
「あ、いたいた。」
「探しましたよ、黒渕さん。」
うちのクラスの担任がいた。
「何かありました?」
「放課後の補修なんですが、私合コンという名の人生総合会議が入ってしまいまして。」
「先にプリントを渡しておこうかと。」
「くれぐれも、授業中にはやらないでくださいね。」
はいと軽く返事をして受け取る。補修にだれも来ないなら、ごまかせるな……。いやまて。今聞き慣れない単語が生まれた気がする。
「おや、白峰さんとご談笑中だったのですね。」
担任目が後ろにいた女子を捉える。
”白峰”とそう呼ばれた女子は軽く手を振った。この後の展開は余像を視なくとも推測できてしまう。
「補修の件、白峰さんにお任せしようかしら。」
やっぱり、勉強なんて大嫌いだ。




