第6話 夢の終わり
『夜もすがら霜はさわげど、あかつきに夢もろともに消え果てにけり』
(訳: 夜通し霜が起き乱れましたが、明け方に夢と一緒に消えてしまいました)
暁の頃、ふと人の気配に頼通が目を覚ますと、そんな文が枕もとに届いていた。
見覚えのない手蹟であるが、内容からして差出人はきっと美濃だ。
彼女から初めて届いた文は、やわらかな流れるような文字が散らされた、別れの歌。
いつまでも覚めてほしくなかった夢は、暁の目覚めの時に霜と共に消えてしまった――。
頼通は束の間その文を見つめ、隣の隆姫を起こさないように床を抜け出した。
遣戸から簀子縁に出ると、立待月が天頂に浮かぶのが見える。
あの内裏の火災の晩から、ちょうどひと月が過ぎたのだ。
こうして月を見ていると、今にも彼女がその光を浴びて、舞うように空を駆けていくのが見えそうな気がする。
美濃は確かにこの世のどこかで生きている。
しかし、自分で探す術はないのだ。
六年前、突然出会ってから、姿を見ることすらできなかった長い年月。
美濃と過ごしたたったひと月は、やはり夢だったと思うのが自然なのかもしれない。
儚すぎるほど短く、幸せな夢を見た。
そして今、現つに還らなくてはならない時が来たのだ。
彼女に逢うことは二度とないだろう。
夜は明けてしまったのだから――。
「どうかなさったの?」
振り返ると、几帳の陰から隆姫が顔を覗かせていた。
「いや、何でもない」
頼通は微笑みながら遣戸をくぐり、身舎の中に戻った。
次が最終話となります。
この話の行きつく結末を見ていただけるとうれしいです<m(__)m>




