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プリズムマッスル☆鬼邪殺戮怒≪キャサリン≫におまかせっ! 2・納豆で攻撃するイキリ先輩

「それでせにあちゃん、何の用なの?この前から私の事付け回してるみたいだけど」



 そんな事を電柱の影の私に叩きつけられ、流石に驚きました。

 だってこっちは、デスノちゃんを探り始めた最初から()()()()()()()()()()()()も駆使してこの子の事調べてたんですよ?

 今だって五感欺瞞の例の隠遁する奴使ってましたし。



「・・・一応、何でバレちゃったのか聞いてもいい?」


「そう言うの、昔から分かるの。何となくだけどね」



 そこでハタと気付きました。

 今の私って、チート主人公にイキリ散らして結果蹴散らされる先輩冒険者っぽくね?

 いやちょっとだけ。



『今のマスター、主人公を試して逆にボコられるギルドマスターっぽいです』


「相手をルーキーと侮っていたらその実力見てビビっちゃうベテラン冒険者とか、なるぜ系の小説とかによく出て来るわよね」



 うるせー!

 自覚ある所に前後サラウンドで追い打ち掛けるのやめろおおお!

 ていうかこっちにもそう言う系統の文化あるんだねホッとしたわ!

 そう言えばこっちの世界じゃ小説家になるぜって言うんだ私が底辺作家してたサイトは小説家になるぞだったけどな!

 どうでもいいわ!



「とは言っても、護衛に守られた私の事を付け回せる時点でただものじゃないでしょ。私がどんな立場の人間なのか、そんなおかしな事が出来て調べて無い訳ないよね?」


「・・・本家が慌てるほど出来が良い隠し子の事を指す言葉を知らないのがもどかしいわね」



 何だっていいわよそんなの、と月の光の下妖艶に笑う彼女。

 違う意味で人の事は言えないけど小五の出していいオーラじゃないです。



「まあとにかく、それだけ鋭いならわかってるんでしょ?私の目的が何なのか」



 デスノちゃんは小脇に抱えた装飾過剰な本を隠すようにやや半身になりました。

 余裕綽々の笑顔に見えても、警戒はしているようです。

 しばしの静寂。



 両者が動くのは、ほぼ同時でした。


「ロボミン!」と言う呼びかけと同時に、ロボメイド型妖精の袖から無数の植物の蔓が高速で射出されました。

 対するデスノちゃんは・・・驚くべき事に、華麗に躱しているではありませんか!


 電柱や壁を掴んで蹴って舞うように飛んだり跳ねたりし、その後をロボミンからの蔓が追いかける様は某ロボットアニメなどで有名な納豆ミサイルサーカスを彷彿とさせます。

 何で生身で出来とんねんあの子。


 いや、魔法ありサイボーグありの今までの世界だったらあの程度動ける人は珍しくもなかったですよ?

 でもこの殴り合い魔法少女じゃないほうの女児向け世界観で出来たら流石にオカシイと言うかなんと言うか。


 ・・・仕留めるのは難しくないんだけど、無力化させるのは骨が折れそうですね。

 そう言えば今までの世界で使ってきた魔法とか思い出したらドカーンとかチュドーン的なのが大半で、ひょっとしたら私脳筋だったかも知れねえとここに来て思い知らされた感じがします。



「あなただってプリフェアの力を借りてこんな事してるんじゃないのッ!私もそれが欲しくて何が悪いの?」


「・・・それはちょっと誤解かな?」



 デスノちゃんの着地にタイミングを合わせ、私は全力ダッシュしました。

 恐らく彼女からは一瞬姿がブレて見えた事でしょう。



 ――私のは血の滲む的ななんやかんやが半分、よ。

 現世の努力じゃないけどね。



「ぐっ!?」



 彼女の懐に飛び込んで、旋風で拘束する魔法を炸裂させました。

 超人的な反応でそれを避けたデスノちゃんですが、手にあった魔法の本は弾き飛ばされて遥か高い場所へ。

 しかし彼女の口元は、笑っていました。



『いけませんマスター、表紙のクリスタルを13秒間満月の光に当てる事でプリフェア召喚条件が満たされます!当該書巻と対応するプリフェア個体名・ダアクジャー!深層にて隔離封印されている災害個体です!』


「なんつー悪そうな名前してんのよ・・・あーもうしょうがない、そいつが鬼邪殺戮怒だった場合に備えるわ。そうじゃなかった場合この場で消し炭ね。普通に危険な災害個体なんだから」



 その時初めてデスノちゃんの表情が「け、消し炭?」と凍り付きました。

 ひょっとしたら思ったより私の眼が据わってたのかも知れません。


 空中に浮いた本がひとりでにパラパラとめくられていき、あるページで止まると魔法陣が浮かび上がりました。

 前世を思い出す前の私が現ロボミンの元フワミンを召喚した時と同じです。

 強まる光。


 やがて魔法陣の中心から何かが出てきました。

 人間の・・・頭?



『力のある上位個体はあのように人間サイズが通常状態となります。力を抑えるために普段は妖精サイズを保ちます。補足すると私もそうしています』


「成程・・・って、なんかおかしくない?」



 ダアクジャーとか言うプリフェアの顔ですが、よく見るとボコボコに殴られたような状態になっています。

 次いで上半身も出てきましたが、衣装がボロボロです。

 最後は全身が魔法陣の外に出たのと同時に「どべしゃっ」とばかりに地面に落下。

 私は準備していた≪強制蒸化弾(イーヴェイポレイター)≫の魔法の術式を解きました。


「え・・・どういう、事?」と困惑するデスノちゃん。

 気持ちは分かる。

 銀髪の長髪にコウモリっぽい羽根と、まあ多分イケメンであろうプリフェアを召喚したと思ったら痙攣機能付きのボロ雑巾状態ですからね。


 けど私には大体の想像は付きました。


 次の瞬間、答え合わせするかのようについさっきダアクジャー(多分)の出てきた魔法陣がビクンと震えました。

 中央部がバリバリとスパークしながらこじ開けられ、中からは恐ろしいまでに逞しい二本の腕。

 私にとっては見慣れたものです・・・見慣れたくはなかったですが。


 やがて魔法陣自体が観念したかのように、或いは勝利者を新たな王として迎えるかのように自ら幾何学的に変形し門を開きました。

 そして降り立つ、拳だけで神も殺せる男。



「選べ、ダアクジャー。プリフェア界を支配し人間界を闇に落とすなどと言う下らぬ妄動を捨て去るか、それともこの場で永劫の無に帰すかを」

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