十五話 マジでこれからどうしよう
大変遅くなり、誠に申し訳ございません。
テストの点数がヤバイ状況でしたので⋯⋯
俺は芽依のバイクに乗せられ、芽依のアパートに行くことになった。コイツの話によると、ネタルとロアはそこにいるらしい。ちなみにダイアーは、魔法で俺の部屋から芽依のアパートの前まで転移するらしい。
大丈夫だよな⋯⋯と少し心配しながら芽依のアパートに向かう煌夜。ネタルはともかく、ロアはかなりの重症だった筈だ。アリシアが魔法的なアレで治療したとは聞いたが、ラノベでは『浅い傷を治す』ぐらいが限界な場合が多い。それがエルフだとしても、あれほどの重症を治せるだろうか。
煌夜はそればかり考えていた。
バイクの後部座席についたベルトを掴んでいる手に、さらに力が入った。
「着いたよ煌夜。ここで弥とロアは休んでいる」
バイクを停め、ヘルメットを取りながら芽依が言った。しかし、ヘルメットを着用したままぼーっとしている煌夜には聞こえていなかった。
「いつから二人以外をここまで心配したりするようになったんだろうな⋯⋯」
煌夜は独り言を呟く。芽依が煌夜がかぶっているヘルメットをコンコンと叩くと、煌夜は我に返ったように急いでヘルメットを外した。
「どうした煌夜そんなにぼーっとして。あいつらなら大丈夫だ。私もアリシアの治療を見たけど、信じられないぐらいのスピードで傷が治っていったからな」
「ああ、そうか⋯⋯良かった。それとお前の部屋はどこだ?」
「305号室」
それを聞いた煌夜は、少し速めに歩き始めた。それを見て芽依は少し苦笑いした。そして、駆け足で煌夜のペースに合わせた。
「暑い⋯⋯なんなのこれ⋯⋯」
「確かに暑いな。ここはエレベーターが無いから階段で上がるのが面倒だ。早くエレベーターがあるところに引っ越せばいいのに」
階段を上がりながら二人は焼かれる様な暑さに、つい弱音を吐いてしまう。流石昔ながらの日当たりガン無視アパートだ。
グダグダしつつも二人は305号室の前に着いた。
芽依が鍵を開け、熱くなったドアを開けた。
「⋯⋯さてネタルとロアは大丈夫かな?」
芽依の部屋は汗が引いていくぐらいに涼しく、外とは大違いだ。すると、奥の部屋から声が聞こえた。
「あ、煌夜に芽依姉。⋯⋯煌夜は大丈夫そうだね。安心したよ」
「確かにね〜マジで死んだかと思ったよ〜」
ネタルとロアが奥の部屋から出て来た。奥の部屋からは声が聞こえる。
「どうだアンヘル、20だ。これは勝ったも同然だろう」
「私も20よ」
「甘いですねダイアーさんにアリシア。ナチュラルブラックジャックです!!」
奥の部屋では、ネタルとエルフ四人がトランプをしていた様だ。おそらくブラックジャックをしていたのだろう。
しかし、重症だった筈のロアがここまで元気になっていたので、心配して損したと思った煌夜だった。
「マジか⋯⋯すげぇ元気そうだな。てことは芽依、このこと知ってたのか?」
「弥から連絡もらったからね。大体は把握してたよ。だから煌夜の部屋にずっといたんだよ。まさか私に任せておいてブラックジャックで遊んでいるとはねぇ⋯⋯」
「それはその⋯⋯暇だったからさ⋯⋯」
ネタルが親に怒られた子供の様にふてくされた。
「それと煌夜はどこにエロ本隠しているんだろうな?コイツが寝ている間に二時間ぐらい探したけど見つからなかったからな。コイツの趣味を知るチャンスだったんだけど」
いや、何やってんだよコイツは。まあ、ヒントぐらいは教えてやろうかな?
「パソコンは触ったか?」
「しまった、盲点だった!!今時はインターネットが普及してパソコンで書籍を購入、保存できる時代じゃないか!!」
「まあ、パスワードは意味を込めてない37桁の英数字だからネタルじゃないと解読は無理だと思うがな」
「なんでそんなに多いんだよ」
「なんでそんなことで盛り上がってるんだよ二人とも⋯⋯」
ネタルが玄関で騒いでいる二人が近所迷惑なので止めに入った。
ネタルは、二人を止めるのを面倒そうにしていたが、少し嬉しそうにも見えた。
色々あって十分後。狭い芽依の部屋の狭いテーブルで話し合いが行われた。
これからについてだ。
異世界からエルフが来たのはまだいい。なにも危害を加えないからだ。しかしそれが前に現れたアイアンゴーレムだったらどうだ?間違いなく死者が出るだろう。
「まあ、お前らの様な友好的なのがこの世界に飛んで来たのならいいが、アイアンゴーレムみたいに人に危害を加えるのが来たらたまったもんじゃない⋯⋯というわけだ」
取り敢えず煌夜が簡潔にまとめる。それに皆が頷いた。
「そうだ、今思いついたんだけど⋯⋯」
「何だネタル。いい案が思いついたのか?」
「うん、エルフのみんなに協力して欲しいんだけど⋯⋯常に自分達のまわりに魔力を持った存在がいないか魔法で感知してほしいんだ。いいかな?」
ネタルが一番いい案だと思い、皆賛成したが、少し問題があった。それは、魔力感知は無意識に出来るが、半径2キロまでしか感知出来ないということだ。
「けど、今はそれで良いんじゃない?そんなしょっちゅう飛んでくるわけでもなさそうだし」
ロアはそう言うが、まだ少し心配だ。とは言ってもどうすることも出来ない。議論は二時間ほど続いたのだが、解決策など出るはずもなくその日は解散となった。
お読みいただき、ありがとうございました!!