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神父は苦悩に倒れた。

何故だ。何故あの子がここにいる。


叫びだしたい衝動は、なんとか飲み込んだ。それでも心の動揺は治まるわけもなく、彼は早鐘を打つ心臓をなだめようと必死になる羽目になった。


簒奪によって国王が交代した、それにともなう用事で王都の教会へお使いに行くことになった。

用事も済んで帰路につこうとしたとき、タイミングの悪いことに新王が新しくできた王宮に移動する行列に行き逢った。そして冒頭の心の叫びである。




二十年と少し、昔の話。

ひょんなことから、とある若者は魔王から「宝物」を授かった。それこそ自分の命に代えても、という程に大切に大切に守ってきた。なのに、これまたひょんなことからその宝物は奪われてしまった。

あれから十年が経つ。取り戻すことは恐らくもう不可能だろう。例え戻ってきたとしても、きっと見る影もないほど変わり果てているに違いない。そう自分に言い聞かせて諦めた。諦めてしまった。



――だというのに、ああ神様、なんということをしてくれるのか。



すぐ目の前にあるのだ。彼がこの上なく愛し、求めた宝物が。

簡単に触れることのできる距離。しかし、彼と宝物の間には、大きく硬い壁――彼の側からは決して破ることのできないであろう壁が立ち塞がっているのが、ありありと見えた。


どうして。何故。

何で今更、希望をちらつかせるような真似をするのか。


頬を悲しみが伝った。

意識が、遠のいていく。

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