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*第90章~しばしの別れ~


 その日は久しぶりにジュダス邸でシーラと共に休を取った紗羅は次の日朝早く目覚めると、横に眠るシーラを起こさないようにそおーっとベッドから降り、ベッドの下でスヤスヤと寝息を立てるアレクをひっぱたいて起こすと、部屋の外へ連れ出した。

 「ったく、いつまで呑気に寝ているんだ、アレク。ちゃんと気を引き締めてシーラを守らないと、後でひどい目に合わせるからな。」

 「ふぁい、すみまへんでした・・。」

 寝起きで滑舌が悪いアレクは気の抜けた返事をすると、益々紗羅の怒りを買ってしまった。


 「いいか、必ずこの護符をお前とシーラ1つずつ持って、片時も離すな。」

 そう言って、紗羅に殴られた頭をさするアレクに緑色の布で造られた小さい巾着のようなものを2つ渡した。その巾着を開けて中を覗いてみると、魔法陣が描かれた紙が入っていた。

 「これは?」

 「最近編み出した守りの魔法でな、既にその護符自体に魔法をかけてあるんだが、この護符を持っている者に敵意を持って近づく者がいると、無数の光の矢がその護符から飛び出し、その者に攻撃するってものだ。そして、護符を持った者は風の結界に守られたまま、その場から別の場所へ移動するようになっている。」

 「さすがは主!!そのような複雑な魔法をも生み出してしまうとは・・・。ですが、何故移動する魔法までかかっているのです?その魔法の矢で敵を倒してしまうのではないのですか?―――――あいたっ!」

 首を傾げるアレクに紗羅はでこぴんをした。

 「お前は馬鹿だな、アレク。確かにその光の矢はかなり強力だが、それでも必ず敵を殲滅できるとは限らない。万が一その敵が強敵だった場合を考えて、逃げる為の移動魔法をかけているんだ。」

 「あ、なるほど。主は先の先まで考えていらっしゃるのですね。」

 素直に感心するアレクを見て、紗羅は先が思いやられると、頭を抱えた。


 「それじゃぁ、行ってくるから、くれぐれもシーラの事をよろしく頼むぞ?」

 「任せてください。主の方こそ、無茶だけは絶対になさらないで下さいよ?」

 言い返してきたアレクに紗羅はフッと微笑むと、【移動(テレポート)】の魔法を使ってその場を去った。

 残されたアレクは最後の紗羅の微笑みに何故か嫌な予感を感じ、ギュッと紗羅からもらった護符を握り締めた。




 ジュダス邸を離れた紗羅は、アイザックの邸まで魔法で飛び、既に顔パスになっている邸の門をくぐり、今もぐうたらと寝ているであろうアイザックの部屋へ向かって一目散に駆け出した。

 勢いよく扉を開けると、以外にも既に目を覚まして支度をしているアイザックがいた。

 「めずらしいな、こんなに早く起きているなんて。」

 紗羅が驚いていると、アイザックが迷惑そうにソファーの方を指差した。指された方向にいたのは何故か久々のジュリィ姿になっているジュダスがいた。

 「ど、どうしたんだ?お前。」

 「どうしたもこうしたも、コイツの邸の見張りの連中、男の姿で入ろうとしたら、断固として通そうとしないのに、この姿で出向いた途端、二つ返事で門をくぐらせやがったんだぜ?一体なんなんだ、こいつは!」

 紗羅はチラリとアイザックを見て、息を吐いた。

 「まさか、お前、女ならだれでも通しているんじゃないだろうな?」

 呆れ顔を紗羅に、アイザックはゆっくりと首を横に振った。

 「さすがに僕でもそんなことはしないよー。ちゃんとある一定以上の基準を超えた美女しか通さないようにしてるよ?」

 さも当然と言わんばかりに話すアイザックを見て、紗羅は頭が痛くなった。

 「おいおい、お前本当にこんなやつを共につける気か?」

 ジュリィの心配も当然のことである。

 「仕方ないだろう?“アカツキ”の連中には2人一緒の時にあっているんだから。怪しまれないようにするためにも、今度も2人一緒にいるべきなんだよ。」

 「ひどいなー。僕だってきっと、役に立つはずだよ?それに僕だって好きで行くんじゃないんですけどー。」

 ぶーっと頬を膨らませて拗ねるアイザックを2人は無視した。

 

 「・・ダラスはどうしている?」

 ボソッと紗羅がジュリィに聞いた。

 「相変わらず王様業に大忙しだよ。というか、俺はここまで真面目に王様業をしているあいつを初めて見たんだが。今までは側近に面倒くさい仕事を押し付けて、自分のやりたいことばーっかりやってきたのに。」

 「いいこと、ではあるんだろう?まぁ、僕にはもう関係のないことだったな。」

 紗羅の表情が暗くなる。

 「僕たちの道は分かれてしまったんだ。僕たちはこれから仲間ではなく、それぞれの国を代表するものになる。今度アイツに会うときは、もうダラスとは呼べないな。」

 「・・・・。」

 悲しそうに話す紗羅にジュリィは何も言えなかった。


 「では、行こうか。」

 アイザックが支度を終え、アイザック邸を少し離れた所で、紗羅がアイザックに声を掛ける。心配で付いてきたジュリィともここでお別れである。

 「アレクとシーラの事は任せたからな。」

 「あぁ、心置きなく自分のすべきことをやってこい。」

 紗羅とジュリィは顔を見合わせ、ニッと笑うと、紗羅はジュリィに背を向け、アイザックと共に【移動(テレポート)】でジュリィの目の前から姿を消した。

次回からは再び紗羅とアイザックの2人旅。そして、新キャラ続々登場の予定で、やばいと思っています。

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