*第89章~それぞれの役割~
紗羅への糾弾も終わり、本題に戻る。
「とりあえず、手分けしてこの名簿の連中たちの動向をさぐる。おそらく今風の国は僕の噂でもちきりのはずだ。その噂を聞いて、彼らがどう動くかで、僕たちの行動も決まる。それで、それぞれの行き先だが・・・。」
紗羅はジュダスとアイザックを除いて、3人に名簿の中から監視対象の人物を当てていった。
「俺はどうすればいい?」
指示を与えられなかったジュダス。
「お前は仮にもこの国の宰相だろう?お前はこのままこの国にいろ。そして、こいつらの集めてくる情報を整理して、今後の戦略を考えてくれ。」
「だが―――――」
「頼むから、困らせないでくれ。」
他国の力は借りないとダラスに誓った今、その他国、光の国の宰相であるジュダスを堂々と風の国に送り込むことはダラスとの約束に反すると、紗羅はダラスを諭し、ダラスはしぶしぶ折れた。
「それじゃあ、お前とこのボンボンはどうするんだ?」
「僕とアイザックは例の“アカツキ”と接触しようと思っている。」
紗羅がニヤリと笑う。が、ジュダスは厳しい顔をした。
「駄目だ。危険すぎる。お前自ら出向いてまで必要なヤツラか?」
紗羅は深いため息をついて、ジュダスを睨んだ。
「忘れたのか?ジュダス。僕たちには時間がない。最短で現王を引きずり下ろすには、はむかう気も起きないほど圧倒的な力で責めるしかないんだ。そのためには、より多くの力が必要になる。“アカツキ”には手練れが数多くいると聞く。頼りにしていた他国の軍は使えないのであれば、自ら調達しに行くべきだろう。もう少し時間があるのであれば他にも方法があると思うが、今の僕にとってはこいつらの力を借りるのが最善だ。そして、力を借りる為には1度面識のある僕らが接触するのが妥当だと思うが。」
「う、うーむ・・・。ちきしょー、だいたいダラスがあんなこと言わなければこいつもこんな無茶しねぇのに!そうだ、アイツが全部悪い!!」
紗羅に言いかえすことが出来なかったジュダスは、矛先をダラスに向けて、ブツブツと文句を言っていた。
「ところでさ。」
ルイが何かを思い出したかのように声を上げた。
「結構前から気にはなっていたんだが、サイル、お前なんでジュダス様からサラって呼ばれているんだ?」
ルイの突然の質問に紗羅とジュダスは一瞬目をぱちくりとさせる。そして互いに顔を見合わせ、タラーッと冷や汗を流した。
「サイルの名前ってもしや、偽名か?」
疑うルイの目をごまかし切れず、紗羅は観念した。
「そうだよ、僕の本当の名はサラ。ファミリーネームはないよ。あの学院に入るために、偽名を使ったんだ。まぁ、風の国に戻ったら元の名前で王になるつもりだったから、いずれは言おうと思っていたが、すまない。」
嘘をついていたことに変わりはないので、紗羅は潔く頭を下げた。
「べ、別にいいよ、そんなん。ただ気になったから聞いただけだ。・・それで、俺たちはどっちの名前でお前を呼べばいいんだ?」
「好きなように呼べ。」
そう言って、この件については早々に話を終わらせ、話を元に戻した。
「あのー・・・。」
着々と作戦が立てられていく中で、その場の空気を壊すような、呑気な声が聞こえた。
「なんだ?アイザック。」
声の主、アイザックは至極面倒くさそうな顔をして、気怠そうに紗羅を見た。
「僕、1度も参加するなんて言っていないんだけどなー。その“アカツキ”だっけ?いやだなー、そんな面倒くさそうな連中のところに行くの・・・。ねぇ、他に遊郭とかの仕事はないのー?」
この場に来ても、揺るがないアイザックの言葉を聞いて、紗羅達は開いた口がふさがらなかった。
一通り、作戦を立て終えると、明日からの決行を前にして、紗羅は1度ジュダスの邸へ戻った。もちろん、アレク・・・・ではなくシーラに会うためだ。
「あ、お兄ちゃん!」
シーラは紗羅の姿を見つけると、満面の笑顔で紗羅に飛びついた。
「元気にしてたか?シーラ。」
「うん、でもお兄ちゃんがいないのはやっぱりさみしいよ。」
紗羅はシーラをギュッと抱きしめると、そのままシーラを抱えて紗羅の部屋へ向かった。
「また、どこかへ行っちゃうの?」
部屋へ入った紗羅とシーラは横に並んでベッドに座った。そのそばをアレクがうらやましそうにうろちょろしている。
「あぁ、悪いな。あんまり遊んであげれなくて。」
紗羅が悲しそうに言うと、シーラはブンブンと首を横に振った。
「大丈夫よ。シーラ、1人でも平気。その間お兄ちゃんにほめられるように、もっともっとお勉強する!」
意気込むシーラに紗羅はニコッと微笑んだ。
「えらいな、シーラは。大丈夫だよ、今回もアレクは置いていくから。」
「「え??!」」
喜ぶシーラと寝耳に水なアレクの声が重なった。
「何故です?!主!!このごろ全くといって私をお側に置いて下さらぬではないですか!よもや、この私を見限ってしまわれたのですか?!」
ヒシっと紗羅にすがりついて、泣き叫ぶアレクを紗羅は一瞥して黙らせた。
(もしかしたら。影の王国の者がシーラを狙うかもしれないんだ。ダラスやジュダスは一応味方でいるつもりのようだが、信用ならん。いざというときシーラを守らない可能性だってある。お前も、油断することないよう、しっかり僕の留守を守って、シーラに指1本触れさせるな!分かったな?)
「御意!・・あ。」
久々に心の中でアレクに声を掛けた紗羅だが、あまりにも久しぶりだったため、アレクは思わず声に出して返事をしてしまい、紗羅の心の声が聞こえていないシーラは勿論不思議そうにアレクを見た。
(本ッ当にお前はいつまでたっても、その抜けている性格が治らんのだな。よくそれで神獣になれた者だ。お前を神獣に選んだ神とやらに文句を言ってやりたいくらいだ。)
わざとアレクに聞こえるように盛大にアレクを心の中でなじる。アレクは土下座の体制に入ろうとしたが、紗羅がそれを睨みつけて止める。
(お前、この状況で土下座なんてしたら、ますますシーラが不審に思うだろうが!ちょっとは頭を使えよ、僕の神獣ならばな!)
何も言い返すことのできないアレクはただ黙って、こくりと頷いた。
久々にアレクの土下座芸を描こうと思ったのですが、控えました。
最近出番の少ないアレクさんですが、ますます少なくなりそうです・・・。




