*第85章~険悪~
すっかり外は暗くなって来たころ、突然の来訪者に誰もが席を立ちあがり、視線を注いでいた。
「おいおい、ダラス。お前、確か会議に行っていたんじゃないのか?」
ジュダスが声を掛ける。
「んなもん、とっくに終わったぜ。あー、だるかった。んで、お前さんたちの話は聞かせてもらっていたぜ?」
ダラスの言葉にハッとした紗羅はジュダスの背中を探った。
「・・・・これは!」
紗羅が見つけたのは魔法陣が中に浮かんでいる虹色の小さい珠だった。
「国王のやることかよ。そんなんじゃ支持率おとすぜ?」
さすがのジュダスも紗羅の持っている珠を見て、ダラスに怒りを露にする。
「だって、仕方ねーじゃねぇか。こうでもしねーと、コイツ、俺とは会おうとしねーし。きっと、ジュダスの前には姿を現すと思っていたから、サラが現れたときにだけ魔法が発動するようにしていたんだよ。」
「ちょ、ちょっと待ってください。その珠は一体なんです?」
突然現れたダラスと、ダラスに対する紗羅の怒りっぷりに、事態を把握できないルイが口をはさんだ。
「【盗聴】の魔法がかけられた珠だねー。つけられた相手の会話を盗聴するものだよ。へー、王様って、そんなせこいこともするんだー。」
いつのまにかベッドに寝そべっていたアイザックが横向きになり、ニヤニヤと笑っている。
「お前、詳しいな。」
呆れたようにイアンが言う。
「そういうのだけは得意だからね。盗聴とかー、吹聴とかー、我が家で代々受け継がれる魔道書には情報を集めたり噂を広めたりするための魔法がいーっぱい載っているからねー。だからキミも僕を連れて行ったんだよね?」
チラリと紗羅を見ると、フンッと紗羅の鼻が鳴った。
「それでー、そんなせこい真似までして、王様は彼に何の話をしたかったのかなー?」
サッとダラスに視線が集まる。
「おいおい、そんな国家の機密ともいえる内容をこんなガキどもの前で披露しなきゃならんのか?ちょっとは空気を読めよ、お前ら。」
ダラスはジュダスに目配せすると、ジュダスがルイ達に席を外すように言う。ルイ達もしぶしぶ部屋を出ようとしたが、それを紗羅が扉の前に立ち、制止した。
「ジュダスは良くて、こいつらがここにいちゃまずいのか?」
「そりゃーさ、この話は朝廷の人間にだって話せない内容なのに、まだ官吏でもない、ただの学生が聞ける内容じゃーねーよな。ジュダスは一応、我が国の宰相でもあるんだし、こいつらとじゃ身分がちげぇよ。」
「・・お前、僕たちの話を盗み聞きしていたんだろ?なら、こいつらが、僕の最初の臣下だ。こいつらにも聞く権利はある。」
紗羅は断固として、扉の前を動かない。ダラスはため息をつき、紗羅を睨む。
「お前さん、何か勘違いしていないか?こいつらはただ、お前についていくと言っただけで、正式に臣下になった訳じゃーねーんだよ。まだ、ただの、学生にすぎない。」
「お前こそ、勘違いしているんじゃないのか?こいつらがまだ学生にすぎないというのであれば、僕だって、まだただの学生だ。国王になった訳でもないのに、僕だけお前の話を聞く理由はない。」
一向に譲らない紗羅を見て、ダラスは再びため息をついた。
「わかった。俺の負けだ。いいぜ、別に聞いてても。」
ダラスのその一言で、一気に緊張が解かれ、皆息を吐いた。
「ったく、俺にこれほどまでたてつく奴はそうそういねーぞ?」
「盗聴までして、一介の学生と会おうとする王もそうそういないと思うが。」
ダラスの苦言にイヤミで返す紗羅。
「カーっっ!本ッ当に可愛くねぇな!!」
「なんだとっ?!貴様!!」
突然、今まで大人しく黙っていたアレクが声を荒げた。
「なんだ、神獣もいたのか。いつもうるさいくらいなのに、珍しいな。気づかなかったぞ。」
「うるさいのはお前だ!黙って聞いていれば抜け抜けとっ。我が主へのこれまでの無礼、詫びぬつもりかッ!!お前のせいで、どれほど主が苦しまれたと思っておる!」
「アレク。」
「は、なんでしょう?主。」
ダレスにまくしたてるアレクの肩を、紗羅がポンと叩き、声を掛けた。クルリと振り向き、紗羅の顔を見たアレクはその場で固まってしまった。
「うるさいのは、お前、だよね?誰が勝手にしゃべっていいと言った?その口、縫い付けてやろうか?」
底の冷えるような声で紗羅が言うと、アレクはそのまま縮こまり、何も言わなくなった。
「さて、わざわざ光の国の国王様が足をお運び頂いて、盗聴までして僕に話したいという内容を聞かせてもらおうか。」
紗羅は椅子に座り直し、ふんぞり返ってダラスを見た。
「さぁ、話せ。どうして僕の考えが、無理な話なのだ?」
「そいつはな・・・。」
ダラスがにやけ顔から一気に厳しい表情になった。
「どの国も、風の国に攻撃する暇なんてないからだ。うちを含めた4ヶ国は、影の王国と戦争をすると、決めたのだ。」
その瞬間、窓の外でピカッ!と稲妻が走り、突如、大雨が降りだした。まるで、その場にいた者の衝撃を現すかのように。




