*第84章~突然の来訪者~
「おい、ナイン。お前、目撃者を殺し損ねただろう。」
うす暗い部屋の一室で、エイトと共にカードゲームをしていたナインの所へエムラがやってきた。
「は?なんのこと?」
振り向くことなく答える。
「大地の国の王族たちが我らの正体に気づき始めているようだ。全く、そもそも王族殺しなど、先走って勝手なことをするからだ。」
「いーじゃない、別に。僕らの正体=僕らの弱みって訳はないんだしさ。むしろ、王族たちは恐怖に脅えているんじゃない?自分たちが今までしてきた所業を思ったらさ。」
「・・・ナインの言うとおり。それに、目撃者を逃がしたのは仕方のないこと・・・。」
「そうさ。だって、きっとあいつらを攻撃したらサフィール様に怒られてたと思うよ。」
「?」
2人の言っている意味が分からず、エムラは首を傾げた。
「初めて見たけどかなりの美人だよね。あれじゃ、ノーレディも敵わないって。」
「・・・まさか、神獣の主を見たのか?!」
ナインの言わんとしていることにようやく気付き、エムラがハッとした。
「ふふっ。おかしいよね。僕は彼女の顔も知らなかったのに、一目でわかったよ。いいなー、僕も思わず欲しくなっちゃった。キラキラと光り輝いているのに、その光の奥には僕たちにも匹敵するほどの闇。少し突いただけで、その光の籠を突き破って闇があふれそうだったもの。」
エイトもナインもまだ幼い見た目だが、ナインは無邪気な笑顔には似合わない、残酷な目をしていた。
「・・遊びもほどほどにしろよ。我らは神獣の主には手は出せぬ。」
そう言うと、エムラはくるりと踵を返し、闇の中に消えていった。
残された2人は再びカードゲームを再開した。
「・・・何を考えているの?ナイン。」
「ん?べっつにー♪ちょっと、楽しいことをね。」
エイトは首を傾げたが、すぐに考えることを止め、目の前カードに視線を戻した。
◆ ◆ ◆
「んで、結局お前は一体何者なんだ?お前の弟だったと言っていたこの坊主は、確か、自分の事を“神獣”と言っていたな。そう言えば、この前風の国に神獣が戻り、そのそばには人間がいて、そいつを風の国の王にすべく動いていると聞いた。ということは・・・。」
「・・あぁ、僕がその人間で、コイツの、一応、主だ。」
嫌そうにアレクを指差す紗羅を見て、アレクは涙をにじませた。
「主、何故そのような言い方で、そのような目で見るのです?一応とはなんですか?!よもや私を見捨てるおつもりですか?」
ガシッと紗羅にしがみつくアレクを紗羅は振り払う。
「そうだな・・。どうせ下僕を作るのならもっと利口で、静かな、頭の良い奴がいいし。そういう奴なら、うっかり口を滑らせるということもないだろう。」
そう言ってアレクを見る紗羅の目は冷たく、その場にいた者を凍りつかせた。
「とまあ、冗談はこのくらいにして、そろそろ本題に入ろうか。」
どう見ても冗談には聞こえなかったが、それ以上この話を引っ張ると、アレクが更にひどい目に遭う確信をしたため、皆紗羅に従った。
「この前言った通り、僕はこの風の国の神獣であるこの僕を風の国の王にしようと思っている。元々この国には王になるべく勉強をしようと来たのだ。ジュダス達に協力してもらってな。本当は1年間勉学に集中するつもりだったが、影の王国の侵攻があまりにも早くてな。僕の独断で計画を早めることにしたのだ。」
「アイザ、お前は元々知っていたのか?」
ルイはチラリとアイザックを見た。
「いいやー。僕も今知ったよー。まぁ、薄々感づいてはいたけどねー。そこの神獣君、態度が弟って感じではなかったしー。」
「僕がこんな大事なことコイツのようにペラペラと喋るわけないだろ。まぁ、そんなことは今更もうどうでもいいのだが。話を戻すぞ。本当はもっとあの学院で過ごして、僕に仕えてくれそうないい人材を探すつもりだったが、もうそのような時間はないし、とりあえず風の国で僕に味方しそうな人間を探していたんだ。たとえば今の国王から罷免されたもと官吏とかな。僕が僕の噂を少し流しただけで、その噂を意図的に広めている奴らもいたな。おそらく、クーデターを起こそうとしているんだろう。」
「そういうことなら何故俺たちにも協力を仰がないんだっ!」
ルイが怒って、思わず立ち上がる。
「は?だって、お前たち、風の国の官吏には絶対なりたくないって言っていたじゃないか。」
「ぐっ。」
痛いところを疲れて、ルイは口をつぐんだ。
「まぁ、そんな僕の思惑も、影の王国の襲撃のせいで一時中断してしまったが。だが、おかげで今風の国の王を攻めるチャンスだと思っている。」
「・・なるほどな。今風の国だけではなく、世界各国の王族たちは脅えていて緊張状態にある。しかも、風の国への襲撃はただの1度のみ。他国の連中は何故風の国だけ1度しか襲撃されないのかと、疑問に思っているころだな。」
「あぁ、そこで、風の国の王は既に影の王国に侵されて、影の王国の配下にあると、噂を流す。それを聞いた4ヶ国、特に王族を殺された大地の国は風の国へ攻め入るだろう。そのどさくさに乗じて僕は風の王国の王と、その裏で王を操っている妾妃を廃し、僕こそが神獣の主だと名を上げる。」
「そ、そんなことをしたら、大勢の犠牲者がでるのではないか?お前は戦争でもしようというのかっ!」
イアンは思わず立ち上がり、紗羅に詰め寄った。
「この際、多少の犠牲はやむを得ない。いついかなる時も、誰かの幸せの下には犠牲になっている人間がいるのだ。お前たちが裕福に暮らせるのも、誰かが代わりに不幸だからだとは思わないか?まぁ、僕の力を最大限に使って被害は最小限に抑えるが。風の国の現朝廷も、4ヶ国に睨まれたらすぐに白旗を揚げると思うがな。今や、長らく神獣の力を失い、聖獣と契約をしていない王の統べる風の国は他国からの攻撃を耐えるだけの力はない。」
紗羅の話を聞いて、ヴィンセントの部屋には一時、沈黙が流れた。その沈黙を破ったのは以外にもヴィンセントであった。
「・・・・俺も、ついていく。」
ポツリとつぶやいたヴィンセントに紗羅が視線を向ける。
「何のために?」
紗羅の声は静かで、且つ強かった。
「俺は、あの学院でお前と出会って、お前のそばにいて、お前を支えたいと思った・・・。親に言われて、あの学院へ行ったのだが、その親の意に反することになるとは思うが、俺は例え、苦難の道であっても、お前の側で、お前の創る世界が見たい。」
揺るがぬ思いがそこにはあった。ヴィンセントに続き、イアンとルイも声を上げる。
「俺たちも、お前についていくぜ。安定なんてくそくらえだ。人生ってのは多少の冒険あってこそ楽しいもんだもんな。」
「元々出来上がっているところで皆と同じことをするより、新しい、誰にもまねできないようなものを創る方がいいからな。」
「お前ら・・・・。」
紗羅は目を見開いて、3人を見た。
「もちろん、俺様も協力するぜ?こーんな面白いこと、俺様抜きでっていうのは、ゆるさねぇからな。」
「ジュダス・・。」
ぐしゃぐしゃと紗羅の頭を撫でるジュダス。
「そうか、それなら―――――――」
「一致団結ってところで悪いけど、そいつは無理な話だぜ?サラ。」
突如、聞こえた声に一斉に扉の方を見る。そこにはダラスが立っていた。
「何故、お前がここにいる?!」
一気に敵意をむき出しにして、睨みつける紗羅。
「怖いねぇ。お前に話があって来たんだ。」
ニヤリと笑うダラスに、紗羅はますます顔をしかめた。
なんだか最近だんだんとダラスさんが悪役になっていっている気がします。悪知恵を働かせたらナンバー1かもしれません。




