*第83章~大地の国で~
「影の王国の襲撃者がどこかの国の王族かもしれないというのは一体どういうことなんだ?」
時刻はちょうど昼頃。陽の光が燦々と注ぎ込んでいる部屋で、紗羅の話を聞いていたイアンが尋ねた。
「その前に、僕とアイザックが大地の国で調べてたことからまず話そうか。アイザック!」
呼ばれたアイザックはのそりとベッドから起き上がり、大きな欠伸をした。
「はいはい、僕の出番だねー?」
そう言うと、懐から虹色のキューブを取り出した。
「なんだ、ソレ?」
ルイが不思議そうにまじまじと見つめる。
「説明すんのもメンドイから、集めた情報をコレに録音しましたー。」
へラッと笑いながら、魔道書を取り出す。
「我、唱える者。封じられし音よ、再びその音を鳴らせ。【再生】。」
呪文が唱え終えると、虹色のキューブが発行し、まるでスピーカーのように音があふれ出した。
『ねぇねぇ、お姉さん。僕今暇なんだけど、どこかでお茶しません?』
「あー、コレ、僕の声ね。」
言わなくても分かる、と言わんばかりに皆が白い目でアイザックを見る。
『うるさい、失せよ、愚民め。私は忙しいのだ。』
アイザックをあしらう30代くらいの女性の声が聞こえると、ジュダスは聞き覚えがあると、紗羅の顔を見た。
「まぁ、説明は後でするから、とりあえず聞いてくれ。」
紗羅はジュダスの声に出さない質問には答えなかった。
『そんなこと言わないでサー、お姉さんが今、何を急いでいるか僕知っているよ?なんなら手伝おうか?』
『な、何を言っているのだお主!』
『何って、アレだよねー?この前殺された、君のお父さんのことじゃない?』
『っっっ??!』
はっきりとした音は聞こえなかったが、女性の動揺が窺がえる。
『お、お主、一体何者だ?』
『だーかーらー、お茶しようって言ったじゃない。暇なんだって。』
アイザックに従うことにしたのか、その後は声が聞こえず、雑音が入っていた。しばらくすると、再び雑音が消え、2人の会話が聞こえてくる。
『そろそろ答えよ、お主は何者で、一体何が望みだ?』
『んー、望みって訳じゃないけど、情報交換したいなーとか、思っていたりしてー。』
『・・・何の情報が欲しいんだ?そして、お主は何を知っている?』
『おっ?さすがー!話が早いねー。』
『茶化すでない。早く言え。』
アイザックの間延びした声にイラついている様子が手に取るように分かる。
『えーっとね、僕が知っているのは、あの襲撃者の顔と、攻撃の方法かな。僕、さっき襲撃された町にいたからね。どうせお姉さんもその町に情報を集めに行こうとしていたんでしょー?でもー、無駄だよ?
だって、みーんな死んでいたもの。』
『なんだとっ?では何故お主は無事なのだ!』
『こっちの方が人数多かったからねー。力も上だったし・・・。まぁ、僕たちがその町にたどり着いた時にはもう、皆死んでて、アイツが帰ろうとしている時に出くわしたんだけどねー。それで僕が知りたいのは・・・・・アイツが何者かってこと。』
アイザックがそう言うと、がさごそと何かを取り出す音が聞こえてきた。
『我、唱える者。我が頭にありし姿を現せ。【心像】。』
アイザックの詠唱が終わると同時にヴォンッという音が聞こえた。
『こ、こやつは・・・やはりそうか!』
『お?やっぱり思い当たる節があるようだねー。教えてよー。』
『・・・何故私がお主などに応えねばならんのだ。』
『あれー、お姉さん、それはちょっとひどいんじゃないのー?こっちは情報を提供したのに、そっちは出さないっていうのかい?それなら、こいつの攻撃の方法を教えてあげないよー?』
『構わん。もう私は行くぞ。さらばだ。』
『あ、ちょっと、待ってよ!お姉さん。』
椅子を引くガタンという音が聞こえると同時に何故か刃物の擦れる音が聞こえた。
『無礼者。放さぬか!!お前たち、こやつを殺さない程度に痛めつけておやり!』
女性がそう言い放った後、キューブの光が消え、何も聞こえなくなった。
「で、この様さー。」
アイザックが満身創痍だった訳をしった皆はいっせいに紗羅を見た。
「なんだ?僕は何も嘘を言っていないぞ?大地の国の王族の女性に手を出して、護衛兵にボコボコにされたのは事実だろ?」
「そうれはそうだが、経緯が全然違うじゃないか!俺たちはてっきり、こいつの自業自得かとおもっていたら・・・。」
「勝手に勘違いしたのはお前たちだ。そんなこと僕は知らない。」
確かに紗羅の言ったことは真実で、アイザックの人柄で勝手に勘違いをしたルイ達はアイザックにすまないと誤った。
「別にいいよー。気にしてないし。それよりも、この話には続きがあってさー。」
真剣な話なのにどうにも間抜けに聞こえるアイザックの話を制止し、代わりに紗羅が話し始める。
「最後アイザックはその王族の女の腕を掴んで、とある情報を引っ張り出したんだ。【解読】の魔法でね。その情報っていうのが、重要で、僕たちが見た大地の国の襲撃者は殺された大地の国の王族の若いころにそっくりだそうだ。アイザックが腕を掴んだ時間が短すぎて、それ以上は引き出せなかったんだが、殺された男と血縁関係にあることは、その女の様子からしても間違いないと思う。そこで、ジュダス。」
紗羅が突然ジュダスに声を掛ける。ジュダスはいきなりだったにも拘らず、紗羅から話を振られることを知っていたかのように、こくりと頷いた。
「このガキが会ったって女はおそらく現国王の従兄弟の娘だろう。そしてそいつの親にあたる者と、現国王の親である先代の王にはもう1人弟がいたんだ。その弟っていうのは殺された男の親と双子だったそうだ。そして、その弟は今の影の王国の王の前の神の器だ。」
やはり、と、紗羅は腕を組んだまま、ジュダスの言葉を聞いていた。
アイザックさん、意外と活躍していたんですね。やればできる子みたいです。あまりやろうとはしませんけどね。そして、久々に魔法の詠唱を出しました。正直どんなんだったか、忘れてて、過去話を探すの大変でした。




