*第81章~会議~
影の王国が侵攻してきたという一報は瞬く間に広まり、世界中を恐怖と混沌で包んだ。各国の王たちは【映像】という人物の映像と音声を離れた所へ具現化する魔法で会議を行った。
だが、そこには召集したはずの風の国の王の姿はなく、4か国のみでの会議となった。
『やはり1秒でも早く結界を確固たるものにして、影の王国の侵攻を止めねばならぬ。』
『だが、それには風の国の力が必要だ。風の国には今正当な王はおらんではないか。』
『風の噂では、あの国の神獣が主と認めた人間がいるとか。その者を見つけ出すのが先決では?』
『その噂は本当なのか?そのようなものがいるのであれば、何故風の国の王座についていないのだ。』
『おやおや、大地の国の王はお忘れになっているようだが、風の国の現国王はその資格を失くしたにもかかわらず、未だにその玉座にしがみついている、ちっぽけで醜い男だ。おそらく、その玉座に座るべき正当な風の国の王は名乗るに名乗れないのだよ。』
『同感だ。だから、我らがそれを手助けせねば。おい、光の国の王よ、いつまで黙っているつもりだ?いつも饒舌な貴公がめずらしいな。』
『・・・・・・。』
『全くだ。いつもはうるさいくらいなのに。何か悪いものでも食ったか?あぁ、そう言えば今回の件を引き起こしている現神の器はお前の弟だったな。』
『なるほど。一応責任を感じているという訳か。』
『・・・・ちげぇよ。俺様は一体いつまでこんなくだらない話し合いを続けるのかと、嘆いていただけだ。』
『な、なんだと?!無礼にもほどがあるぞ!もとはと言えばお前の国の問題ではないか!!』
『生命の国の王の言うとおりだ。少しはしおらしくしたらどうだ!』
『あーもう、うるせぇなぁ。いいか、お前たちが言っている策はもう時代遅れなんだよ。既に闇が侵攻して、ほころびが来ている結界を今更張りなおしても無駄だっつってんだよ。それより、別の方法を考えろって。』
『別の方法だと?何か策でもあるような物言いだな。』
『あぁ、俺は国王になったときからずーっと考えていたぜ?』
『もったいぶらずに教えたらどうだ。』
『どうせろくな案ではないのであろう?』
『はぁー、本ッ当にお前らは口だけのヤツラだよなー。いいか、よーく聞けよ?――――――――――――――。』
『そ、そんなことを本気で考えているのか?!正気じゃないぞ!』
『下手をすれば、世界が破滅へと向かうやもしれん!!』
『いかに歴代最強を誇る光の国と言えど、とても成し遂げられるとは思えん。』
『だーかーらー、そこは新しい風の国の王に手伝ってもらうってわけだ。』
『風の国の王だと?まさかもう、見つけているのかッ?神獣の主を!!』
『なるほど、貴公が最近こそこそと何かをしていると思っていたが、そういうことか。』
『確かに、神獣の主ともなればそれ相応の力を持っている筈・・・。さらにその者が風の国の王となれば、崩れた均衡も元通りになるな。』
『んじゃま、全員一致ってことで、終わりにしようぜ。』
◆ ◆ ◆
「少し動き出すのが遅かったようだな。」
荒れ果てた村を見て、紗羅はぽつりと呟いた。
「驚いたな・・・。ほんの数日でここまで変わるなんて。キミ、一体何と闘っているの?」
めずらしく驚きの感情を表に出しながら、アイザックが尋ねる。
「さぁ。自分自身とか?」
少し茶化したように答えるが、その表情は険しいままだった。
「この国だけではなく、世界中で襲撃された町があるそうだ。僕たちも急がねばな・・・。」
そう言うと、足早に村を去っていった。
◆ ◆ ◆
ダラス達が会議をする少し前、光の国のヴィンセント宅にはルイ、イアン、ヴィンセントと、何故かアレクとジュダスが集まっていた。
「・・説明してもらえますか?ジュダス様。今一体世界中で何が起こってるんです?そして、アイツは何をしようとしているんですか。」
イアンが眼鏡の奥でジュダスを見据える。
「悪いが、詳しくはまだ言えねえ。いずれはお前たちにも話すつもりだ。だが、その前にお前たちには協力してもらいたいことがある。」
ジュダスの答えにハンっと、ルイが鼻で笑った。
「どいつもこいつも、隠し事ばっかりで嫌になるな!言わせてもらいますがね、ジュダス様。俺たちだって馬鹿じゃないんだ。今、何かとてつもなくやばいことが起こっているってことくらいは分かる。もちろん協力したいのは山々だが、何も話してもらえないってのは、こっちだって納得できねぇよ!!」
イライラと、ルイが怒鳴るのを見て、いつもなら止めに入るはずのイアンとヴィンセントも、ルイに激しく同意した。
「我々も、ただ黙ってあなたに従うことは出来ない。何より、僕がライバルと認めたサイルに関わることです。いずれ、では到底納得できませんね。」
「・・・俺もだ。」
めずらしく3人の意見が一致すると、一斉にアレクを見た。
「な、なんだ?」
急に視線が集まり動揺するアレク。3人はそんなアレクを囲んで、上から見下ろした。
「きっとジュダス様ではこれ以上聞き出すことは出来ないだろう。となると、やはりこいつから聞き出すべきだな。」
「あぁ。サイルとコイツの様子から見ると、こいつはかなり口が軽いらしいからな。少しつつけばきっとボロを出すだろう。」
「・・・・。」
本人の目の前で作戦を話す3人を見て、アレクは溜め込んでいた何かが爆発したように、大声を上げた。
「お前たち、調子に乗るのもいい加減にしろ!!私を誰だと思っているんだ!本来ならばお前らごときが近づくことも出来ない存在なのだぞ?!大体、あのひげ親父や、そこの女男たちが我が主に内緒でこそこそと陰謀を働かせるからこのようなことになったのだ。おかげで私はもう何日も我が主に会えぬまま・・・居場所を知ろうにも風たちには主が情報規制をかけている始末・・・。この恨み、いかにして晴らしてやろうかッ!!!!」
紗羅のそばにいられないストレスがたまりにたまり、一気に噴き出したアレクは、体に鋭利な風を纏わせて、3人を睨んだ。
「ちょ、ちょっと待て。一旦落ち着け。冷静になるんだ。そんなものこんな狭い部屋でぶっ放したら、皆巻き添えに――――――」
「そんなこと、私の知ったことではない!むしろ願ったり叶ったりだ。我が神獣の力を持って、お前たち邪魔者を皆吹き飛ばしてくれるわっ!!!!」
「「「え?神獣?」」」
「アレクーーーー!!!!!!!」
暴走したアレクと、そのアレクが漏らした重要な秘密に気づき、驚く3人の耳を割くような声が部屋中に響いた。
声の主にいち早く気付いたアレクはサァーッと顔がみるみる青ざめていき、恐る恐る自分の背後を見た。
「あ、あるじ・・・。」
そこにいたのは勿論、端正な顔立ちから怒りしかくみ取れない、紗羅であった。
「お前、覚悟はいいんだろうな?」
先ほど叫んだ声とは打って変わって静かな声だったが、先ほどよりも格段に怒りを含んでおり、アレクはその場を蛇に睨まれた蛙のように一歩も動くことが出来なかった。
はい、とうとうやってしまいました。アレクさん。数話ぶりの登場だから、暴走させてみました。次話での紗羅さんの怒りっぷりに期待です。




