*第75章~決別~
紗羅は皆と別れると、1人、王城へ出向いた。門の所でダラスへの謁見を申し出ると、いつもならダラスが兵士たちに紗羅は問答無用で通すように言われているはずなのに、ダラスは不在と言われ、門前払いを喰らった。
(仕方ない、ジュダスに会いに行くか。)
紗羅は兵士たちにジュダスの居場所を聞き、訓練場へ向かって歩き始めた。
訓練場に着いた紗羅はそこにジュダスの姿がないことに気づく。周りの兵士に聞いても、知らないと言われ、ジュダスに会うことが出来なかった。
(まさか・・・。)
紗羅は急いでジュリアの邸へと向かったが、そこももぬけの殻だった。
「あいつら、そろいもそろって逃げたな。」
少なくとも信頼に足る人物、そう彼らを評価していた紗羅は今回の件で彼らへの信頼がほとんど消えかけていた。だが、どこかでまだ彼らを信じたい気持ちがあり、直接彼らから話を聞きたかったのだが、彼らは紗羅を避けているようだった。
(ハハッ、何を勘違いしていたのだ僕は。そもそも人間なんて自分勝手な生き物じゃないか。僕はその人間の醜さをずーっと見て来たじゃないか。今更人間を信じようとするなんて。)
日もすっかり落ち、暗い気持ちを抱えたまま、紗羅はジュダス邸に着いた。
シーラに心配させまいと、笑顔を作り、邸の扉を開ける。
「よお、遅かったじゃないか。ずっと待ってたんだぜ?」
扉の前には何故かダラスが立っていた。
「・・・え?」
紗羅が目を丸くしていると、廊下の角からジュダスとジュリアもあらわれた。
「一体どこをほっつき歩いてたんだ?お前と一緒にいたやつらからはとっくの昔に分かれたって聞いていたぞ?」
「そうよ。待っている間シーラちゃんをおめかししようとしたのに、ダラスちゃんに止められて、あたくし、ずっと紗羅ちゃんの部屋を模様替えしていたんだからねっ。」
嫌な言葉を聞いた紗羅は急いで自分の部屋へと駆け出し、勢いよく扉を開ける。
「っっ・・・・・・。」
言葉が出なかった。殺風景だった紗羅の部屋は一転、全面ピンク張りになっており、窓を覆うカーテンは厚みのあるフリフリのレース。また、シンプルだったベットも映画に出てくるような天蓋付きの御姫様仕様となっており、そこら中にリボンだったり、ぬいぐるみだったりがあふれかえっていた。
サーッと青ざめてた紗羅は、ふらつきながら、これまた白基調の洋服ダンスへ向かい、恐る恐る中を覗く。瞬間、思わずガクッと膝をついてしまった。
そこには地味な色にまとめていた紗羅の服はなく、すべてフリルのついた女用のドレスが並んでいた。
「ね、素敵でしょ?」
紗羅の後を追って、ジュリアたちが入ってくる。
「じゅ、ジュリア、僕の服は?」
完全に力が抜けてしまった紗羅は、覇気のない声で聞いた。
「え?もちろん全部捨てちゃったわよ?だって全然可愛くなかったんだもの。」
その言葉を聞いた瞬間、血の気が引き、紗羅は意識を失ってしまった。
「・・・るじ、主!!!」
アレクの呼ぶ声が聞こえ、ぼんやりと瞼を開くと、心配そうにのぞきこむアレクとシーラの顔があった。
「申し訳ございません!!あの女の奇行を止めたのですが、そうすると矛先がシーラに向いてしまいそうでしたので、やむを得ず主の部屋を犠牲にしてしまいました。」
深く謝りすぎて、ベットの下に隠れてしまった、アレクに一瞥をくれてやると、紗羅は自分のせいだと悲しむシーラを抱き寄せ、優しく撫でた。
「ごめんね、お兄ちゃん。シーラが我慢すればよかった。」
「いいんだよ、また元に戻せばいいことだから。それより今から僕たちは大事な話をするから悪いけどジュダスの部屋で先に寝ておいで。明日また、ゆっくりお話しようね。」
紗羅がにっこりと笑うと、シーラはこくりと頷き部屋から出て行った。
「なによっ、皆して。そんなに邪険にすることないじゃないっ!!」
自分の趣味を完全否定されたジュリアはぷくーっと膨れていた。
「・・・そんなことより、皆、僕に何か言うことがあってきたんじゃないのか?」
勝手に拗ねるジュリアを無視し、紗羅は厳しい表情で皆を見回す。
ジュダスも、ジュリアも、アレクでさえも皆口を結び、俯いて紗羅と視線を合わせようとしない。
(この3人は口を開かないな。)
紗羅は視線をダラスに向け、応えを待つ。
「何も、言うことはないさ。ただ、お前さんの土産話でも聞こうと思って、待ってただけだ。」
「なッッ??!」
思いもよらないダラスの返事に一気に頭に血がのぼる紗羅。
「お前が、僕に言うことは何もないだとっ?!ふざけるなッ!!」
思わず壁力いっぱいを殴ッてしまったため、壁がへこんだ。
「そうか、お前たちから何も言わないのであれば、僕が言おう。・・・何故、黙ってた?」
静かに、しかし、怒りを込めて問う。
「・・・何のことだ?」
ダラスは無表情で聞き返す。
「何のことだと?分からないはずはないだろう!お前の弟の話だよ!!」
紗羅はしらばっくれるダラスに詰め寄り、胸ぐらを掴んだ。それでもダラスは表情を変えない。
「あぁ。そういえばお前、アイツにあったんだっけ?どうだった?俺に似て色男だった――――――」
ガツッ
と、鈍い音がしてダラスが倒れる。目の前には拳を振り下ろした紗羅が立っていた。
「いいかげんにしろよ、ダラス。お前たちもだッ!!」
紗羅はぐるりと皆を睨みつける。
「僕はお前たちを信用していたのに。お前たちクラスの者なら知っていたんだろう?神の器のことを。それを何故僕に教えなかった!それほどまでに僕は信用されていないのか?僕はそのことを知るに値しない人物なのか?ならば何故そんな僕を一国の国王に据えようとする!!」
血を吐くような紗羅の叫びに、皆言葉が詰まる。ただ一人、ダラスを覗いて。
「クックック。」
座り込んだまま突然笑い出したダラスを紗羅は睨む。
「・・・何がおかしい?」
紗羅の声が震える。
「何かと思えば、仲間外れにされたくらいでギャーギャー喚くなっガキがッッ!!」
ダラスの声が空気を震わせた。
「な、んだとッ?!」
紗羅は怒りで身体が震える。
「何もくそもねーよ。あいつのことは追々時期を見てお前に話すつもりだった。お前には影の王国を気にするよりも先にやることがあったからな。それにお前はまだ王ではないんだ。王ではないただの学生のお前にこんな重要機密を話す必要はない。」
ダラスの言葉で紗羅の中の何かが壊れていく音が聞こえた。
「分かったなら、誰彼かまわず当り散らすのはやめろ。迷惑だ。」
「貴様っ!黙って聞いていれば我が主になんて言い草だっ!!」
さすがに聞くに堪えかねたアレクがダラスにつっかかる。
「おーおー、風の王国はそろいもそろってガキばっかりだな。小さなことですぐ切れる。こんなんじゃ風の王国もお先真っ暗だぜ。」
ダラスはそう言いながら、紗羅の部屋を出て行った。
ダラスの去った部屋はシーンと静まり返り、怒ったアレクと気まずそうな顔をしているジュダスとジュリア、そして俯いたままの紗羅が残された。
ダラスさん、酷いですね。いつのまにあんなに冷たくなってしまったんでしょうか。ジュリアはいつもと変わらず通常運転ですね。いい感じのところなんで、サクサク手が進みます!頑張って早く更新します。




