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*第73章~澱んだ心~

 その日の空は紗羅の心情とは裏腹に雲1つない青空だった。

 紗羅達は王都の1つ手前の街まで【移動(テレポート)】で飛び、そこからは歩いて王都へ向かうことにした。それは国王に謁見する前に歩きながら考えをまとめたいと紗羅が提案したからであった。

 ロヴィスコ州での紗羅の任務は完ぺきとまではいかないがある程度納得のいく結果に終わった。だが、その間起きたことは紗羅にとっては納得のいかないものであり、それは王都に近づくにつれ、紗羅の心に黒い染みをにじませていった。

 紗羅の脇ではアレクが紗羅の顔が曇っていくと同じペースで青ざめていった。

「なーんか、空気重くねぇか?」

 ピリピリとした空気を醸し出していた紗羅に緊張感のない声が降りかかった。

「お前ら、無事任務も終わったって言うのになんでそんな暗い顔してんだよ。」

 ルイはそう言うと、紗羅とアレクの顔を自分に引き寄せた。突然ルイの顔が至近距離になり、思わず紗羅はルイを突き飛ばした。

「いってぇ!ったく、突き飛ばすことねぇだろ?」

「わ、悪い。ちょっと驚いただけだ。」

「にしても、少しは手加減しろよー。お前、体つきの割に力強ぇんだからさ。」

 勢いでしりもちをついたルイは腰をさすりながら立ち上がる。

「ある…兄上、そんなに謝らなくとも、不用意に兄上に触れたこの者が悪いのです。」

 本当にすまなそうな顔をしている紗羅にアレクが当然と言うようにルイに喰ってかかった。

「なんだとー?!このガキ、年長者に対して失礼なんじゃねぇのか?」

 どうやら精神年齢が同じらしく、ルイもアレクに対抗する。

「それを言うなら貴様こそ口をつつしめ!!…あ。」

「???」

 思わず口に出した言葉に対して、紗羅が怒気を孕んだ空気を自分に向けているのに気付いたアレクは、また自分が口を滑らしたのだと、固まってしまった。

「なんだ?何かお前変なことでも言ったのか?」

 意味が分からないとルイが首を傾げる。

(どうやらルイは気づかなかったようだが…アレク、本当にお前のその軽い口はどうにかならないのか?)

 紗羅はアレクにも分かるように心で問いかける。

『も、申し訳ございません…自分でも注意しているつもりなのですが。』

 しゅんと首を落とすアレク。紗羅は息を吐くと、何事もなかったように歩き始めた。皆もそれに続いた。


 しばらくすると、王都の大門が見えてきた。紗羅は自分の中にある黒い靄を振り払うかのように首をプルプルとふり、前を見据えた。そして、大門の前に立っている人物に気が付いた。

 「ジュリィ?」

 迫力の美女がそこにいた。ジュダスは少し、罰が悪そうな顔をしており、紗羅達に気づくと、取り繕ったような笑顔を向けた。

 「遅かったじゃねえか。何でお前ら魔法を使ってここまで来なかったんだ?」

 紗羅達に走って駆け寄り、紗羅の顔色を伺いながら、話しかける。いつもとは様子が違うジュダスに紗羅とアレク以外の皆が首を傾げていたが、それに構うことなく紗羅はジュダスに近づき、にっこりとほほ笑んだ。 

 「少し考えたいことがあってね、途中から歩きにしたんだ。何か問題でも?」

 言葉の端々に棘を感じたジュダスは口をつぐんだ。

 「さて、我らが国王陛下にお目通り願おうか。」

 紗羅は何か言いたげなジュダスを無視し、ルイ達を連れて大門の中へと入っていった。



 身なりを整える為、一旦皆と別れた紗羅はアレクと共にジュダス邸へと戻った。邸の門の前には、紗羅達の帰りを今か今かと待ち受けていたシーラが立っており、紗羅達を見つけるやいなや、もうダッシュで駆け寄り紗羅に飛びついた。

 「おにいちゃんっ!おかえりなさぁいっっ!!」

 ぎゅうッと紗羅にしがみついたシーラは嬉しそうに笑った。

 「ただいま、シーラ。いい子にしていた?」

 さらはふわっと顔をほころばせると、シーラの頭を優しく撫でた。


 シーラを連れて紗羅達は邸の中へ入る。約束の時間まであまり余裕がなかったため、急いで身なりを整えて、出かける支度をする。

 「またどこかへ行っちゃうの?」

 悲しそうにしょ気るシーラを見て、紗羅はシーラを抱きかかえた。

 「ごめんね。少しだけ出かけるから、アレクと遊んでおいてくれる?」

 「「え??!」」

 シーラとアレクの口から別の意味での驚きの言葉が漏れた。

 「やったぁ!ひとりぼっちじゃなくて。」

 シーラが喜んで紗羅に抱き着いている傍らで、アレクが泣きそうな顔で紗羅を見る。

 「な、何故ですか?主!!」

 「何故って、邪魔だし。今回の謁見はルイやイアンたちも来るし。お前墓穴ばっかり掘るし。また口滑らされたら困るからな。」

 ツンッと冷たい表情でアレクを見る。もっともな理由にアレクは何も言えなくなった。

 「まぁ、シーラに寂しい思いをさせたから、存分に遊んでもらえ。」

 紗羅はシーラを下ろすと、真剣な表情でアレクを見た。

 (奴らがシーラを狙ってくる可能性がある。お前も狙われているから不安だが、シーラを1人にするよりはましだからな。シーラが邸の外に出ないように中で見張っていろ。僕はこの邸に結界を張ってから1人で城へ向かう。くれぐれも警戒を怠るなよ?)

 『・・・かしこまりました。』

 まだ不満そうではあったが、アレクは頷いた。




 

前回の更新から1年と2ヶ月・・・。すみませんでした。こんなに更新が遅れてしまい、大変申し訳ないです。諸事情により、中々PCを使えず、続きを描けませんでした。今後このようなことがないように、こまめに更新していきます。

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