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*第3章~伝承と契約~

――シーラの話は小さい子供に聞かせる童話のようだった。


「ずーっとずーっととおい昔、一人の神様がこの世界に、大地と水と植物と生物、そして光と影をつくりました。神様はこの世界をいつくしみ、やがて特にあいじょうを注いだ5匹の獣に自分のちからを与えました。そしてその獣たちにそれぞれ大地を5つにわけ、その土地にすむいきものたちを愛し、守るように言いました。

 大地は横長の円のようにひろがり、いちばんおおきくて北にある土地に光のちからを与えた虹色のユニコーンを、その土地のすぐ西隣にある小さいけど緑がたくさんの土地に風のちからを与えられた白い虎を、そこから南隣の山々にかこまれた生き物が多く棲む土地に炎のちからを与えられた紅い狼を、その隣の鉱山と地下資源にめぐまれた土地に大地のちからを与えられた黄金のグリフォンを、最後に1年中まんかいの花にあふれうつくしい生き物たちがせいそくするに土地に水のちからを与えられた蒼い竜を棲まわせました。そして神様は自分と似たすがたのにんげんを創り、大地に解き放ちました。

 神様はやくめを終えると、大地にかこまれた湖のてんくうに浮かぶ島へもどり、ひとねむりしました。

 そのあいだ、神様のちからを与えられた獣たちはそこに棲む獣の中から、気に入った獣をみつけると、自分のちからのいちぶを分け与え、自分たちの土地を守りつづけ、そのちからの加護は時にはにんげんたちにもおよび、魔力をもって生まれるにんげんたちもいました。

 ところが、にんげんたちは5つに分けられた土地でそれぞれ自分たちの国をつくり、他の国との戦いをはじめました。

 眠りからめざめた神様がみたのはあらそいとにくしみでけがれてしまった大地。神様は哀しみのかんじょうに沈んでしまいました。神様は自分のちからのほとんどを獣たちに与えていたため、のこったのは闇のちからだけでした。じぶんのかんじょうを止めることができなかった神様はぼうそうし、てんくうの島は影の王国となしてしまいました。そして、てんくうに棲んでいた生き物はすべて魔物となり、せかいじゅうにはかいとこんらんを呼びました。

 神様にちからを与えられた獣たちはそれぞれの国のいちばん魔力のつよいにんげんとけいやくを結び、自分のちからを与えるかわりに神様をしずめるよう言いました。

 選ばれたにんげんたちはそれぞれの国の王となり、協力して5人で神様をふういんしようとしましたが、あとすこしのところで、ふたたび神のちからがぼうそうしました。

 神様のぼうそうを止めるはなしあいの場で、北の土地の王がていあんしました。神様のちからを封印するために、器をささげようと。

 そして器にえらばれたのが、提案をした北の土地の王の子供でした。うまれてまもないわが子を差出し、4人の王と共に神様を子供のからだへ封印しました。

 やがて、魔物は大地からすがたを消し、大地に生息する生き物は平穏をとりもどしました。そしてその時に分かれた土地がそれぞれ、光の国、風の国、生命の国、大地の国、花の国となり、神のちからを与えられた獣は神獣として、その配下の獣は聖獣として、かれらの土地と王をまもりつづけました。」



 一通り話し終えると、シーラは話疲れたようで、うつらうつらとなりながら白い虎に寄りかかりました。

「あ・・のね、この子がその・・・じゅうにすごく・・・にてい・・・・。」

 そういいながらシーラはスースーと眠りについた。

 紗羅はシーラを横に寝かせ、自分が着ていたスーツの上着をシーラに掛けた。


 ふと、そばに寝そべっている白い虎に視線をやる。確かに、シーラが寝ぼけながら言っていたように、この白い虎は不思議な力を持っているようだった。何より、この虎の身に纏う空気がとても澄んでいた。


(すごく綺麗な虎だな。)

 白い虎を見つめながらそう思うと、白い虎がのそりと起き上がり、紗羅の前に立った。

『我が主よ、もうすぐ日が暮れます。日が落ちると、この森はすごく危険です。できれば日があるうちにこの森を抜けてください。』

 「えっ?」

 突然目の前の白い虎が喋り出し紗羅は驚いた。

(この世界は動物も喋るのか。)

『そうではありません。意志の疎通ができるのは限られた獣だけです。』

「心をよんでいるのか?!というか、最初の『我が主』というのは一体何のことだ?」

口に出していないはずの問いかけに返事があったことに対して動揺しつつ、紗羅は白い虎へ聞いた。

『主はこの世界で唯一、私を召喚することができました。そして契約の証として、その召喚に応える為、先ほど主の力の一部を頂きました。』

 前半に覚えはなかったが、後半には心当たりがあった。

「それはお前が勝手に私の指をかじっただけだろう!なんだその一方的な契約は!!」


 憤る紗羅を余所に、白い虎は紗羅の前に座り、頭を垂れた。

『それでは我が主よ、契約のくさびとして、私に名をお与えください。』

「何勝手に話を進めているんだ。私はそもそもそんな得体の知れない契約など結ぶ気は――。」

『主、私と契約を結べば先ほどのような言葉はもちろん、いろんな力が使えるようになります。この世界に来て日が浅い主に少しでも役立ててほしいのです。」

「う・・・。」

 確かに、彼と契約しないと、このまま言葉も話せず訳が分からないまま死んでしまうかもしれない。


「わかった。名を与えればよいのだな。美しき白虎よ、お前を今日この時より、アレクと呼ぶ。」

 虎ながらに王の風格を持っていたため、自分の世界の有名な王【アレクサンドル】から名前をとった。

『わが魂が朽ちるか、主が最期を迎えるまでお仕え致します。』


 アレクがそう言うと、アレクの身体が緑に発光し、そのまま紗羅の身体の中に入っていった。

「え?どういうことだ?」

 突然アレクが自分の中に入ったため、動揺する紗羅。

『しばらくは私の力になじんでもらうため、主の中でサポートします。何かあれば、お呼びください。』

頭の中でアレクの声が響き、そして消えた。


伝承の部分がかなり長ったらしくなってしまい、すみません。書きたいことが多くて、上手く表現できませんでした。

さて、この世界の成り立ちを知り、これから紗羅の冒険が始まりますので、もうしばらくお付き合いください。

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