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*第33章~ジュダスの過去と、解放


 先ほどまで晴れていた空が曇り、いつのまにか雨が降っていた。

 紗羅とジュダスは雨に打たれながら、見つめあっていた。2人の間に流れる沈黙。紗羅は聞くのを戸惑ったが、やがてジュダスに尋ねた。

「友を殺したって、どういうことだ?」

 ジュダスはつらそうな顔をして、ゆっくりと語り始めた。

「この剣はな、ライツ家の中から、代々使い手を剣自身が選んできた。だが剣が選ぶのは決して王ではない。剣の使い手は王を守る騎士でなくてはならないからだ。ゆえに、先代の使い手までは王に次ぐ、魔力をもった王族が使い手として、剣に選ばれていった。」

 紗羅はジュダスの話を聞きながら疑問が生じた。

「でも、ジュダスって魔力がないんじゃなかったのか?」

 ジュダスは苦笑いして、話を続ける。

「あぁ、お前の言うとおり、俺には魔力がない。これまで王族から魔力を持たない者は生まれたことがなかった。たとえどんなに少ない魔力でも、王族たちにはあったんだ。それゆえ、俺は異端として、生まれて10年間、城の奥にある北の塔に幽閉されていた。」

 自嘲気味に話すジュダスに紗羅は表情を曇らせた。

「そんな顔するなって。たった10年で出れたんだ。そこまで悲惨じゃねえよ。ダラスがな、王になったとき俺を出すように王族を説得したんだ。王様の命令だし、とくに俺が生まれたことで災いなんて起こっていなかったから、王族たちもしぶしぶ俺を解放したよ。そんで俺はダラスの恩に報いる為、魔力なんてものに頼らなくても、十分戦えるように必死で鍛練をし、勉強をした。結果、俺はみるみる強くなっていったし、頭のほうも1番の成績だったよ。ダラスはビリッケツだったがな。」

 ジュダスが紗羅にニカッと笑いかける。

「もちろん、魔力を持っているエリート軍団たちは俺を気に入らねぇってんで、さんざん嫌がらせをしてきたけど、そんな中で俺に唯一、王族としてでも、能無しとしても扱わなかった奴がいたんだ。」

「それが例の…。」

 ジュダスは紗羅に頷き、空を見上げた。

「あぁ、俺が殺した人間。コンラッドだ。」

 ジュダスの頬に水が伝っていたが、どれが雨なのか、涙なのか紗羅には分からなかった。


「俺たちはな、お前が受ける学院に通う同級生で、いつも一緒に過ごしてた。あいつは俺なんかと違って、かなりの魔力を持っていたが、同じエリート集団ではなく、俺と一緒にいることを選んだんだ。俺はあいつの存在に何度も救われた。ダラスにも感謝していたが、コンラッドには感謝してもしきれない恩がある。いつか、その恩をかえせればと思って、俺は更に鍛練を続けた。

 ところがある日、この剣の先代の使い手が急死し、次代の使い手を選ぶ儀式が執り行われたんだ。俺は選ばれることはないと思っていたし、選ばれる必要もないと思っていたけど、仮にも王族だからって、ダラスに無理やり参加させられた。結果、何故かコイツは俺を選んじまったんだ。」

 ジュダスは憎々しそうに大剣を見る。

「案の定、周りの王族たちは大反発。散々けなされた俺は切れちまって、コイツは絶対に使わんと言って、受け取ろうとしなかった。ダラスは見かねて、せめて携帯くらいはするようにと俺に言い、周りの王族には剣が決めたことを覆すことはできんと説得した。いずれにせよ、絶対にこの剣は使わないと意地になっていた俺が剣を抜くことはあの日が来るまではなかった。」

 一呼吸置き、話を続ける。

「5年前、俺もコンラッドも学院を卒業して、全線で魔物と戦う兵士に志願して、幾度となく魔物を退治してきた。だが、あの日あの場所にいた魔物は強く、その場にいた者たち全員でかかっても歯が立たなかった。100人以上いた隊は壊滅状態、生き残りはわずか10人になってしまったとき、コンラッドが俺にコイツを使うように言ったんだ。俺は一瞬躊躇したが、ここで死ぬくらいならと、この剣を抜いた。」

「その時、剣の力が暴走したのか?」

 紗羅が聞くと、ジュダスの顔に少し、怒りが浮かんだ。

「あぁ。お前の剣やこの剣みたいに、神獣の力が入っているものは、ほぼ無限にその魔力を使える。逆に使わないと、魔力がどんどん溜っていって、最後にはあふれ出してしまう。俺は溢れた魔力を操ることが出来ずに、力を暴走させてしまった。その時に魔物を退治することは出来たが、暴走した魔力は、俺を残して俺の隊を全滅させてしまったんだ…。俺が、日頃からこの剣を扱っていれば、俺がこんな剣に頼らずとも戦えるくらいに強かったらと、何度も、何度も後悔した。そして俺は未熟なうちは絶対にこの剣を使わぬように決め、使わない間魔力が溜らぬよう封印をしたんだ。」

 ジュダスは一通り話し終えると、懐から虹色の珠を出した。

「これがこの剣の魔力を封印している珠だ。今日、この力を解放する。」

「ちょ、ちょっと待て。それならお前の剣だけ力を解放すればいい話だろ?僕の剣はこのままでいい。」

 紗羅はジュダスに水色の珠を突き返した。ジュダスはそれをやんわりと止める。

「いやぁ、それがさ。一応珠に封印したのはいいんだが、その封印を解いた時、またしても剣の力が暴走しないって、言いきれないんだ。暴走した剣の力を止められるのは同じく神獣の魔力が込められている剣だけだ。頼む!一緒に剣の力を解放してくれ!!!」

 ジュダスが珍しく本気で頭を下げたので、紗羅は少し言葉に詰まった。

「だ、だがそれなら、僕の剣にも同じことが言えるのではないのか?僕の剣の力を解放したとき、暴走しないって保証はないだろう?」

 紗羅が心配そうに言うと、ジュダスが笑って否定した。

「それはないだろう。仮に剣の魔力があふれ出そうとしても、お前の魔力なら十分コントロールできるって。ダラスの保証済みだ。」

(この場にいないやつに保証されても、安心できない…。)

 紗羅はげんなりした顔をいた。が、ジュダスの本気がひしひしと伝わってきたので、それ以上は言い返すことが出来なった。

「分かったよ。どうなっても僕は知らないからな。」

 紗羅の返事を聞き、ジュダスが喜んだ。


「ジュリアからお前がすでに封印を解く魔法を習得したと聞いている。その魔法でまず、お前の剣の封印を解いて、その後俺の剣の封印も解くんだ。」

「了解。」

 紗羅は魔道書を【収納ストレージ】で手のひらから取り出し、ページを捲った。そして、竜剣と水色の珠を並べて置き、その上に自分の手をかざす。


「我、唱える者。己が戒めを解き放て。【解放レリーズ】。」

 途端、水色の珠にひびが入り、割れたところから水が勢いよく飛び出し、竜剣の中に入っていった。

 紗羅は竜剣に近づき、手に取る。

「だ、大丈夫か?」

 ジュダスが心配そうに様子を伺う。

(確かに、前とは違って、水の流れがこの剣から感じられる…。よし、やってみるか。)

 紗羅は竜剣の切っ先を天に向け、目をつぶった。すると、空を覆っていた雲が切っ先が向けられたころからみるみる晴れていき、すっかり雨が上がった。

 ジュダスはその光景を感心しながら見ていた。

「やっぱりすげえな、お前。もうそこまで剣の力を操るなんて…。」

「まぁまぁってところかな。さて、次はいよいよお前の番だ。この剣を解放したくらいのことが起きるんなら、魔力を持っていないお前には確かに難しい問題かもな。」

 紗羅の言うとおり、紗羅でも、竜剣を扱った後、すごい汗をかいていた。

「けっこうな暴れ馬だぞ?こいつら。上手く操れるか?」

 紗羅が茶化すようにジュダスに聞いた。

「やってみせるよ。必ずな。」

 ジュダスの顔にはもう、先ほどの憂いの表情はなかった。


「我、唱える者。己が戒めを解き放て。【解放レリーズ】。」

 魔法が発動したと同時に、【解放レリーズ】の力で珠が割れたのか、すでに溜め込んだ力を珠が抑え込むことが出来ずに内側から割れたのか分からないくらい、勢いよく、珠の中から虹色の光が飛び出してジュダスが手に持った大剣の中に入っていった。

 ジュダスはその衝撃に耐えきれず、膝をつく。

「ぐっっ…くぅっ!」

 剣の中で暴れまわる魔力を必死で抑えようとするジュダス。だが、力が大きすぎて、再び暴走しようとしていた。それを見た紗羅が竜剣を構えて叫ぶ。

「ジュダス、抑え込もうとするな!その力を僕に向かって放て!必ず受け止めてやるから!!」

 ジュダスは暴れようとする大剣をしっかりと握りしめ、紗羅のほうを見て頷く。

「頼む、サラ!!」

 ジュダスが紗羅の方を向き、剣を振り下ろす。すると剣から大きな光の刃が飛び出し、紗羅の方へ放たれた。紗羅はその光の刃に向き合い、竜剣で光の刃を受け止めた。

「くっ…こんっな攻撃、僕にはなんでもない!」

 紗羅は叫びながら、光の刃を振り払うと、光の刃は消滅した。

 紗羅は息を整えながら、ジュダスの方を見た。魔力を放出したことで、すっかり剣の暴走は止まっていた。

「すまない…。やっぱり、お前に助けてもらってしまった。俺にはまだこの魔力を操ることが出来なかったようだ。」

 ジュダスが落ち込んでいる様を見て、紗羅は笑った。

「何言っているんだ。それだけの魔力を秘めた剣の力があんなものだとでも思っているのか?お前はしっかり、その剣をコントロールして、力を最小限に収めただろ?それで十分だよ。後はその魔力を抑えようとせず、たまには放出させてやれば問題ないはずだ。」

「そう、なのか?」

 ジュダスがまだ不安な顔をしていたので、紗羅は竜剣を構えて、剣を振り下ろすと同時に、水の刃をジュダスめがけて放った。ジュダスは咄嗟に大剣を自分の前にかざした。水の刃はジュダスの目の前まで飛んでいき、ジュダスの大剣に当たる前に、ジュダスの前にできた虹色の壁のようなものにぶつかって、消えた。

「な、なんだぁ?」

 何が起こったのか分からず、ぽかーんとするジュダスに紗羅が笑って、答えた。

「ほらな、ちゃーんと、剣の力を使えているじゃあないか。」

 自分が何をしたのか理解したジュダスは安心したように笑った。

…今日初めて気づいたのですが、私今まで、1つの本文につき、4000文字しか入力できないと思っていたんですが、この話は4000文字を超えたんで、大丈夫かなーって思っていたんです。でもよく見たら40000文字まで入力可能でした…。もっと早く気付けば、こんなに小出しに更新しなくてもよかったのに!!今までちまちまと書いてすみませんでした。以後、気を付けます。

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