*第28章~再び聖域へ~
紗羅は出発する前に、魔道書を取り出し、ページを捲った。
「我。唱える者。我が呼びかけに答えよ。【呼応】。」
魔法陣が光り、シーラの声が聞こえてきた。
「お兄ちゃんどうしたの?」
「シーラ、すまないが僕とジュダスはしばらく出かけてくる。いつ戻るか分からないけど、いい子にしていてくれるか?」
「わかった。シーラいい子にする。」
シーラがそう言うと、紗羅は「じゃあね。」と言って通信を切った。
「それじゃあ、ジュダス。準備はいいか?」
「あぁ、いつでもいいぜ。」
紗羅はジュダスにもらった剣を背負い、ジュダスに自分に捕まるように言って、魔道書を開いた。
「我、唱える者。かの場所へ扉よ、開け。【移動】。」
紗羅達は風の国の聖域についた。紗羅はジュダスがちゃんと無事に着いたのを確認し、ほっと息を吐いた。
「よかった。無事についてこれて。」
てっきり光の国の王都ライツの大門の前にいる者と思っていたジュダスが辺りを見回していたが、紗羅の言葉を聞いて、紗羅のほうに振り向いた。
「おまっ、まさか、無事にこれないことも想定していたのか?!」
ジュダスに詰め寄られ、紗羅は苦笑いで答える。
「いやぁ、だってここは聖域だし。僕はアレクと契約しているからここに来れるけど、本当ならダラスだってここには入れないんだよ?でもアレクが神獣と契約したものには神獣と同じ権利が得られるって言っていたから、誰かを招き入れることもできるかなーって思って。まあ、確率50%くらいの賭けだったけどさ。」
ジュダスがブチ切れそうだったので、紗羅はその場を急いで離れた。
「怒らないでよ。結果無事だったのだからいいじゃないか。それにジュダス、危険な目にあってもいいって言ってたし。」
「サラ…てめぇ…。」
ジュダスが怒りで震えてる。
「1発殴らせろ!!」
ジュダスが拳を振り上げる。…が、その拳が紗羅に当たることはなかった。ジュダスの体が拳を振り上げた状態で固まってしまっているのだ。
「「??」」
紗羅もジュダスも何が起きているのか分からなかった。そこへ、1つの影が近づいてくる。
「我が国の王に何をするのだ貴様!!」
紗羅は声のするほうへ振り向き、笑顔を見せた。
「リューイではないか!無事だったのか?!」
紗羅の目の前にはこの聖域を守護する聖獣、リューイがいた。
「私はなんともありません。それより、何故ここに国王陛下がいらっしゃるのでしょうか?白虎の神獣様はいかがされたのです?」
「え?!アレクは1日前にここに向かって以来戻ってこなかったんだが。連絡がなくて、僕が探しにきたんだよ?」
「おい、ちょっと、お前ら!」
ジュダスが何か言っているが、紗羅達は話を続ける。
「ふーむ。私のところもあのお方は随分前に去ったのです。ちょっと気になることがあると行っていたので、風の国に向かわれたと思うんですが…。それにしても何も連絡もなく戻っていらっしゃらないというのはおかしいですね。」
「お前ら、聞こえているんだろ?!」
「そうなのか。いや、僕も聖域に行ったはずなのにいつまでたっても戻らないからおかしいと思っていたんだ。リューイ、行き先に心当たりないか?」
「無視すんな!!早くこれを何とかしろ!!」
あまりにも話の邪魔をするので、リューイはジュダスにかけた金縛りを解いた。
「今後、一切国王陛下に危害を加える出ないぞ。」
リューイが偉そうに言うので、ジュダスの怒りが爆発しそうになった。
「て、てめぇっっ!!」
「ジュダス。怒るのは後にしてくれないか。僕たちはアレクを探しに来ているんだよ?」
紗羅が冷静にジュダスに言った。ジュダスは言葉に詰まってそれ以上は何も言わなくなった。
「それで、リューイ。心当たりは?」
紗羅が話を再開する。
「はい、それがあのお方は残りの聖獣たちの居所を私に聞きに来られたのですが、あまりめぼしい情報がなく、帰られようとされたのです。ところが帰る直前に、風の王国から狐のような魔物が出たと、風が情報を運んできました。」
「狐のような魔物?なにか消えた聖獣たちと関係あるのか?」
紗羅がリューイに聞いた。
「まだ、はっきりとは分からないのですが…。ただ、我ら風の国の聖獣の中に、確かに狐の聖獣がいたのです。それもまだ若く、ちょうど20年ほど前に聖獣になったばかりの者です。」
「そういえば、今日の講義で聖獣たちは途中から増えることもあると習ったな。」
紗羅はカイルに渡された本の内容を思い出した。
「さようでございます。私たち聖獣はよっぽどのことをしない限り、死ぬことはないのです。死ななければ、聖獣の数が減ることもございませんので、特に必要がなければ聖獣を増やすこともないのですが、あの狐の聖獣はあのお方が死にかけている狐を気まぐれ拾い、聖獣にあげたのです。」
「へぇ。で、その狐の聖獣とやらが噂の魔物かもしれないってことなのか?」
リューイはいきなり質問してきたジュダスに一瞬嫌な顔をしたが、コホンと咳払いをして、質問に答えた。
「まだ確定ではありませんが。ですが、実あの聖獣は10年ほど前、国王に仕えていた 馬の聖獣が殺されたときに、1番最初に魔物に取りつかれたのです。」
リューイが悲しそうに話す。
「それで、狐のような魔物がその聖獣かもしれないと思ったのか?」
紗羅の質問にリューイが横に首を振る。
「いいえ。その聖獣は、魔物に憑りつかれたとき、出くわした1人の女魔導師に救われ、彼女と契約を交わしたのです。ですが、今は彼女も、その魔物もいないはずなのです。」
「どういうことだ?まさか死んでしまったとか…いや、お前は先ほど聖獣はよっぽどのことがない限り死なないといっていたな。」
紗羅がリューイに答えを迫る。そしてリューイは唾を飲み込んで、答えた。
「そのまさかなのです。彼女も、その聖獣も死んでしまったのです。」
「なっ?!ということはよっぽどのことが起きたということか?」
紗羅はリューイの答えに驚いた。反対にジュダスは確信したように、呟いた。
「主人殺しか。」
ジュダスの言葉に、リューイは「その通りです。」と言って、目を伏せた。
この話から少しシリアス感が入れようと思っていました。…でも、ついジュダスさんをいじってしまいました。我慢できずに…。次こそは、シリアスで通して見せます!!




