*第25章~ジュリアの魔法講義~
紗羅たちはジュリアの屋敷に入って左のほうへ進み、地下に下りる階段を下って、大きな部屋に入った。手前の方には何も置いていないスペースが50畳ほどあり、部屋の奥には机と椅子、そしてたくさんの本が並んでいた。ジュリアは奥の椅子へ紗羅たちを座らせると、シーラに分厚い何も書かれていない本を渡し、紗羅には自分の魔道書を出すように言った。
「さあ、まずは初歩の初歩。第1魔法からきちんと覚えてもらうわよ。はい、サラちゃんとシーラちゃん、このペンをもってね。」
渡されたペンはあきらかにジュリアのデザインと思われる見た目で、薔薇の細工がしてあったが、握った感じで以前、アレクに渡されたものと同じ種類のものだと分かった。
「シーラのペンもこれと同じなのか?」
「そうですわ。だって、魔法陣を描くにはこのペンが1番なんですもの。」
紗羅はシーラのほうを見て言った。
「シーラ、僕はお前が少しでも自分の身を守れるように、魔法を覚えてもらいたいと思ったが、嫌だったらやめてもいいんだ。そのペンは自分の血がインクとなるから、書くときは痛みが走るぞ?」
シーラは手に握ったペンを見た後、紗羅に笑いかけた。
「だいじょうぶ。シーラお兄ちゃんのためにつよくなる!」
紗羅は無邪気に言うシーラの頭を撫でた。
「それでは、最初にその魔道書を自分の手に収納する魔法、【収納】から覚えてもらいますわよ。さあ、手のひらにこの魔法陣を描いてね。」
紗羅とシーラはジュリアの手のひらの魔法陣を自分たちの手のひら(紗羅は右手、シーラは左手)に描いた。
「特殊な方法でないといけないのではなかったのか?」
紗羅はダラスの話を思い出した。
「これから特殊な方法をするのよ。今の状態だと汗をかいただけでも魔法陣が消えちゃうわ。だからね…。」
ジュリアは自分の魔道書を開き、ページを捲る…というよりも、魔道書が勝手にそのページを開いているようだった。
「さあ、2人とも手のひらを上にしてちょうだい。」
紗羅とシーラは魔法陣を描いた手のひらをジュリアのほうに差し出す。
「我、唱える者。書き記されるまま、焼き付けろ。【烙印】。」
その瞬間、紗羅とシーラの手のひらに描かれた魔法陣が熱を帯び、肉の焼ける匂いがした。
「きゃぁぁぁぁぁあっ!!」
シーラが痛みで悲鳴を上げる。
「何をするっ!これは一体どういうことだ?!」
紗羅が痛む左手を抑えながらジュリアに怒りを向ける。
「だってぇ、消えないようにするには焼印を押すしかないでしょう?今の魔法は肌の上に描かれたモノを描かれるまま焼いて、焼印にするものなのよ。」
「だったら初めからそう予告しておけ!いきなりするやつがいるかっ!!」
紗羅はまだ泣いているシーラを抱きしめて怒った。
「んもうっ。そんなに怒らなくてもいいじゃなあい。痛かったら【治癒】を使えばいいでしょう?」
ジュリアがプイッとそっぽを向く。
「そんなことをしたら、せっかくの焼印まで治ってしまうんじゃあないのか?」
「平気よ。【烙印】で刻まれた印は絶対に何をしても消えないから。」
(そんなものを断りもなく行ったのか…。)
怒りを通り越して、呆れる紗羅。すぐに気を取り直して、自分の魔道書を開く。
「我、唱える者。癒しの風よ、包め。【治癒】。」
ふわっとあたたかい風が紗羅とシーラを包む。するとみるみる痛みが引いていき、手のひらには魔法陣だけが残った。
「ありがとぉっ!お兄ちゃん。」
シーラは涙を自分の服の袖でぬぐい、笑顔を取り戻した。
「それじゃあ、2人とも、早速【収納】を使ってみてちょおだい。入れるときは『納めよ』で、出すときは『出現せよ』ですわよ。」
紗羅とシーラは顔を見合わせて頷く。
「「我、唱える者。納めよ。【収納】。」
紗羅とシーラの手のひらが光り、分厚い魔道書がスポンと中に入った。
「やったぁ。出来たよ!おにいちゃん。」
「あぁ、よくできたな、シーラ。」
はしゃぐシーラに笑顔をむける紗羅。
「次に進むからもう1度魔道書を出してね。」
ジュリアに言われると、2人は再び【収納】で魔道書を取り出した。
「次に、魔法の種類についてだけど、紗羅ちゃん、何があるか知ってるかしら?」
「第1魔法とかそんなやつか?」
「それよ。魔法にはね、4種類あって、第1から第4魔法と分けられるの。【火炎】や【放水】のように、自然の力をそのまま使う魔法や、【操作】や、【捕縛】のように、物理的な魔法で、詠唱時間が短い魔法が第1魔法。第2魔法は第1魔法より、詠唱時間が長いわ。あとは同じ自然の力を使う魔法でも【炎上】や【竜巻】、【氷刃】のように第1魔法を応用した魔法。第3魔法は、第1魔法や第2魔法同士を組み合わせた魔法で【空間歪曲】のように、かなり高度な魔法よ。それだけ魔力も消費するけど、複雑な魔法も、威力の大きい魔法も使えるようになるわ。そして最後が第4魔法。これは幻の魔法とも呼ばれていて、私も2つしか知らなのよ。この世界に全部で10個存在するって言われてるわ。」
紗羅には理解できたが、シーラは難しい話が理解できず、困ったをしていた。
「つまり、第1、第2、第3、第4の順に、威力が強く、複雑、高度になっていて、魔力の消費量も比例するってことだ。」
「なんとなく、わかったぁ。」
シーラは紗羅の説明に頑張って応えた。
「今から教えるのはとりあえず第1魔法と第2魔法だけよ。シーラちゃんが一緒だからね。」
「第3魔法は危険なのか?」
紗羅がジュリアに聞く。
「それもあるけどぉ、第3魔法はそれだけ大きな魔力を消費するのよ。使いすぎると、魔力が底をついたり、使う魔力の量を誤れば暴走してしまうことも、あるのよ。サラちゃんはともかく、シーラちゃんはまだ小さいから、自分の魔力を扱うのは難しいと思うわ。」
「小さいから魔力も少ないのか?」
紗羅の質問に首を振る。
「違うわ。魔力の絶対数の量は生まれた時から変わることはないの。むしろ、シーラちゃんの魔力の量はかなり多いと思うわ。」
「そんなことも分かるのか?」
「熟練しているとだいたいね。」
紗羅が感心しながら聞いていると、紗羅達の講義を部屋の隅で見ていたアレクが紗羅の心に語りかけた。
『主、あの少女の魔力に少し思うところがあるのですが。』
紗羅は何事もないようにジュリアの話を聞きながら、アレクに心の中で答える。
(どのような力だ?)
『私の属性に係る力のようです。おそらく私の聖獣の誰かの力が…。申し訳ございません。力の輪郭が薄く、これ以上は分かりません。』
(そうか…。)
風の国の聖獣は、リューイ以外まだ見つかっていない。この子が聖獣の1匹に係っているかもしれないと、紗羅はシーラをじっと見つめる。
「なあに?お兄ちゃん。」
シーラに気づかれて、慌てて紗羅は「なんでもない。」と言う。
「さあ、今から教える魔法陣を魔道書に描いて、詠唱の言葉をおぼえてね!」
ジュリアが部屋の壁にかかっている黒板に魔法陣を描き始めたので、紗羅とシーラは全てを急いで描いていった。
魔法の説明は結構難しいです。なかなか手が進みませんでした…。




