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*第24章~紗羅とジュダスの闘い~


 ジュダスは紗羅が選ばなかった武器の中から柄に竜が巻き付いた大剣を手に取った。

「さあ、手始めに軽く手合せをするぞ!」

 ジュダスは少し興奮しながら紗羅に言った。

「…喜んでないか?」

 紗羅が冷めた視線でジュダスを見る。

「分かるか?なんせとっつかまってから一度も暴れてねえからな。身体がうずうずしてたんだ。」

(軽く終わらせる気、ないな。)

 紗羅は面倒臭そうに「了解。」と言った。


 ジュダスは中庭に木の棒で半径15メートル程の円を描き、その中に入るよう紗羅に言った。

「実際はこのくらいの広さで戦う。勝ち負けは相手を場外に出すか、気絶させるか、降参させるかのどれかだ。決して相手を殺しちゃだめだ。失格になるからな。」

 紗羅はすたすたと円の中央に歩いていき、ジュダスと向き合う。

「ぶちのめされる心の準備はできたか?女だからといって、手加減はしねぇぞ。」

 ジュダスがニヤリと笑うのに対し、紗羅は嫌そうな顔で応えた。

「いいから早くはじめないか?」

 辺りがだんだん暗くなり始めたので紗羅がジュダスを急かした。


 二人は剣を構えたまま向き合うと、しばらく微動だにしなかった。相手の出方と、力量を図るためだった。

 10分程経った時、風が吹いた。――その瞬間、紗羅がまず動いた。ジュダスの前から突然消え、ジュダスの後ろに立っていた。そして目で追えない速さでジュダスに剣を振りかざす。


 ジュダスは紗羅が目の前から消えたとき、紗羅の動きの速さに応じて、目を閉じ、紗羅の気配を気で追った。そして、ちょうど今、紗羅が剣を振りかざそうとしたところへ紗羅を見ず、後ろ手で大剣を持ち、紗羅の一振りを防ぐ。


 紗羅は普段ならそこにあるはずのない感触に一瞬驚き、素早くその場から飛びのいた。――紗羅が飛び去る1秒後くらいに、向きを変えたジュダスが大剣を下ろす。

 紗羅はジュダスから少し離れ、一呼吸おく。

(思ったよりもかなり手ごわい。)


 紗羅が次の攻撃を考えていると、ジュダスがいつの間にか目の前に立って大剣を下ろそうとしていた。それを紗羅は間一髪、剣で受け止める。刃の交わる小気味良い音が鳴ると、ジュダスが思いっきり紗羅に撃ち込んできた。

(ぐっっ!!)

 紗羅はある程度鍛えていたため、人並み以上の力がついていたが、ジュダスの力は人並み以上どころのはなしではなかった。大剣の一振り一振りが重いのは決して大剣の重みのせいだけではない。常人なら剣ごと真っ二つにされてしまうような勢いだ。


 カキーンっっ

 紗羅がジュダスの振りかざす大剣の重みに耐え切れず、手が緩んだ一瞬のすきに、ジュダスが紗羅の剣を振り払った。剣は大きく弧を描き、場外へ出てしまった。

 紗羅は信じられないような目をした後、すぐに表情を戻し、体制をかがめ、かがめたときに掴んだ砂をジュダスの顔にかけ、ひるんだところでみぞおちに重い蹴りを入れた。ジュダスが痛みでかがむと、ジュダスの首に足を巻き付け、ぐるりとバク転をして、ジュダスを場外へ放り出しつつ、頭のてっぺんから地面に叩きつけた。


 ズシーンっと、ものすごい音がした後、ジュダスがむくりと起き上がる。

(あれ?よくて病院直行のはずなんだが…。)

 紗羅は平気でスタスタ歩いてくるジュダスに驚いた顔をした。

「さすがに痛かった…が、お前アレはねぇだろ?!ふつう目つぶしなんて姑息な真似するか?」

 ジュダスはまだ目の中にある砂を手でゴシゴシして、とろうとする。

「目つぶしをしてはいけないなんて、聞いていないが。そもそも、僕の手から獲物が離れたときに油断したジュダスが悪いだろ?」

 紗羅が真顔で答える。すると、ジュダスが何か言いたげにと口を開いたが、またすぐに閉じた。くるりと紗羅に背を向け、ひらひらと手を振る。

「とりあえず、今日はこのくらいにしておく。だが、今日のような試合では駄目だ。戦い方も評価に入るんだからな。次は剣術大会のマナーをみっちり叩きこんでやる!」

「…マナーの“マ”の字も知らんだろう。」

 その場を立ち去ろうとするジュダスの後ろで紗羅がぼそっと呟くと、ジュダスがものすごい勢いで引き返してきて、紗羅の頭に思い拳骨を喰らわして再び立ち去った。

(…痛い。てか、ジュダス女装の時と性格ちょっと違わないか?)

 紗羅はそんなことを思いながら、アレクとシーラのいる部屋へ戻った。部屋に入ると、ベッドは3つあるはずなのに仲よさそうに1つのベッドで1人の少女と1匹の虎が寝ていた。


 翌朝、まだ陽が登り始めたばかりで空が薄暗い頃、サラ達の部屋が勢いよく開いた。

「サラちゃん!起きてっ。今日はあたくしの授業よ!さぁ、シーラちゃんと一緒にこの服に着替えてチョーダイっ。」

 朝から甲高い声でジュリアがサラを起こした。ぼやけた視界の端に、ありえないくらいドピンクのぶりぶりしたドレスを目撃すると、紗羅はジュリアからそのドレスを奪い取り、窓の外へ放り投げた。

「まぁ、なんてことをするのっ?!」

 ジュリアが泣きべそをかいている傍を無心で通り抜け、紗羅はシーラを起こし、紗羅の選んだ服に着替えさせた。


 いつのまにか少年の姿に戻っていたアレクとシーラを連れて、紗羅はジュリアと共に屋敷を出た。屋敷の前にはこれまたファンシーな馬車止まっており、迷うことなくジュリアがその中に入り紗羅たちにも入るように言う。

(あ、頭がいくなる…。) 

 紗羅は痛む頭をさすりながらその馬車の中に入ろうとした。

(?)

 馬車に入る直前に、紗羅は馬車の下の地面に【移動テレポート】の魔法陣によく似た大きな陣が描かれていることに気づいた。紗羅はそのまま馬車に入り、扉を閉め、ジュリアにあの魔法陣について聞こうとする。だが、紗羅が口を開く前に、すでに魔道書を手にしたジュリアが詠唱を始めた。


「我、唱える者。我が指し示した点と点を、一つの線として結べ。【空間歪曲ワープドライブ】。」

 空間が紗羅達を乗せた馬車ごとぐにゃりと曲がり、また元に戻るとジュリアが紗羅に扉を開けるように言った。

 「ようこそ、我が家へ。」

 ジュダスの家が古代中国の屋敷ならば、こちらは完全に英国の洋館といった家だった。白い壁に赤茶色の丸い屋根、窓枠は緑で2階の中央にはバルコニー。どこまででも自分の趣味へまっしぐらなジュリアを見てげんなりする紗羅。

(あれは…。)

 馬車の下の地面に目をやると、馬車の下の地面に描かれていたジュダスの屋敷の前で見た魔法陣と同じものがあった。

「ジュリア、これは先ほどの移動魔法に使ったのか?」

 紗羅がスキップしながら進もうとするジュリアの手を掴み、引き留めて聞いた。

「そぉよ。あの魔法は描いた魔法陣の上にあるものを同じ魔法陣の上に空間を歪曲して飛ばす魔法なの。もちろん描く魔法陣のサイズによってはどんなものでも転送できるわよ。そして、これが第3魔法のひとつ。」

「第3魔法…僕がまだ知らない魔法か。」

 紗羅はシーラと手をつないで、ジュリアの屋敷に入っていった。

 アレクも紗羅たちに続いて入ろうとし、屋敷の門のほうで何か禍々しい気を感じ、反射的に振り向いた。だが、そこには何もおらず、ほんの一瞬のことだったのでアレクは気のせいだと思い、屋敷へ入った。

紗羅とジュダスの闘い、見ていただきありがとうございました。…紗羅さん汚いですね。あんな子に育てるつもりはなかったんですが、1回負けそうになって、形勢逆転するという展開を創るためにあのような行動に出させました。さて、次回からは魔法のお勉強です。いっぱい学ばせる予定です。(多分…)

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