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*第23章~武術の試験と紗羅の武器~


 

「さて、まず試験についての説明だが…。」

 ジュダスは紗羅を中庭に面する屋敷の縁側に連れて行って隅のほうに座らせた。縁側にはたくさんの弓と、武器が並んでいた。

「武術の試験は弓の試験と剣術の試験。あと武術ではないが、一般実技として乗馬の試験がある。」

「内容は?」

 紗羅が聞くと、ジュダスは懐から丸めた紙を取り出し、紗羅の前で広げた。

「まず弓の試験がある。弓は射距離60メートル、直径50センチの的に4射して得点を競う。上位300名が合格者だ。」

「意外といるんだな。」

 紗羅の言葉にジュダスがため息をついた。

「あのな、一体何人の受験者がいると思うんだ。この世界中の国々から集まるんだぞ?志願者は毎年3万人を超える。」

「3万人?!一気にそこから300人に絞るのか?」

 紗羅は驚いて、思わず立ち上がった。

「いや、武術の試験を受けれるのは筆記試験を合格した500人だけだ。筆記試験もそれぞれの地方で行われる準試に合格すると城で行われる本試が受けられるようになる。」

(すごいな…倍率高すぎるぞ。)

「それで、弓の試験に合格した奴らが次に受けるのが馬術の試験と剣術大会だ。」

「2つとも受けるのか、それともどちらかで構わないのか?」

 紗羅が聞く。

「両方だ。本当は片方だけでも合格すれば構わないんだが、受けるためには事前申請をしとかなければいけない。片方が落ちてもいいように受験者は大抵両方とも試験を受ける。特に片方だけでないといけないというルールは存在せんからな。あと、試験の成績によって組み分けされるし、両方ともいい成績残すとそれだけいい組に入れる。いい組っていうのは将来の出世コースだから皆躍起になって試験をうけるぞ!」

(僕の当面の目標は受かることだから特に成績に関しては気にすることはないな。受かればどこの組に入っても構わないし。勉強が出来れば問題ない。) 

 紗羅はジュダスの説明を聞き、考え込む。紗羅の返事が返ってこないため、ジュダスが紗羅に「続けていいか?」と聞くと、紗羅は「あぁ、すまない続けてくれ。」と返した。

「で、最終的に残るのが150人。この中から筆記と実技の試験の成績で5つの組に分かれる。これが入試のすべてだ。」

 ジュダスの説明を黙って聞いていた紗羅が、ふと質問をする。

「魔法に関しては試験はないのか?」

「魔法は本試の中の問題に一部含まれている。試験の前に魔力があるかないかをある方法で調べて、魔力のあるやつ、ない奴でその魔法に関するところだけ問題が違う。まぁ、ここら辺は先生やカイルが教えてくれると思うが、ちなみに魔力がない奴が受ける問題は魔導師と出会った時の対処の仕方とかだ。」

「そうなのか…。分かった、で今日は何をするんだ?」

 紗羅が聞くと、ジュダスは「とりあえず」と言って、紗羅を弓の前に立たせた。

「お前がどれくらいの実力を持っているか知りたいから試しに4本放ってみろ。弓はどれを使ってもいい。しっくりくるものがあれば、それをそのまま試験で使ってもいいぞ?」

「試験専用の弓が用意されるんじゃあないのか?」

 紗羅並んでいる弓を見た後、ジュダスに振り返って聞く。

「矢は用意してあるが、弓は持参だ。もちろん試験の前にチェックは受けるがな。あと剣も持参で、剣術といっても、形に規定はなく大剣から短剣、鎖刀や斧まで、刃物であればなんでも自由に使用可能だ。」

 ジュダスの返事を聞き、紗羅は再び目の前に並ぶ弓を眺める。


 紗羅は少しだけ悩んだ後、すぐに黒い長弓を手に取った。ジュダスは紗羅がとった弓を見て、感心した。

「お前、弓を使ったことがあるのか?それを選ぶなんて、かなりの目利きだな。」

「高いのか?」 

 紗羅が不安そうに聞くとジュダスが5本指を出した。

「500万Gだ。」

「そんなにするのか?」

 紗羅は手に取った弓を戻そうとする。

 馬車の中でジュダスに聞いた話の中で紗羅はこの世界のお金の価値を知った。だいたい城勤めの平兵の1ヶ月の給金が20万Gと言っていたので、元の世界での1円と1Gが同じくらいの価値だと紗羅は判断した。

「いいよ、それお前にやる。」

 ジュダスは弓を戻そうとする紗羅の手を止めた。

「だが、そんなにするならもらえない。貸してもらうのも気が引ける。」

「いいっつってんだろ!お前いずれ王様になるんだからその時何かで返せよ。」

 ジュダスはそう言うと紗羅が他の弓と交換しないように使用人を呼んで残った弓を片付けさせた。

(何か、人生初の大借金を抱えた気分だ。)

 紗羅は暗い顔で手に取った弓を見つめる。

「さて、その弓を使いこなせるか見せてもらうぞ!」

 ジュダスが楽しそうに笑った。


 紗羅は試験と同じように的から60メートル離れた場所へ立たされ、矢を4本渡された。

「それぞれを撃つ感覚は15秒以内。矢を放つのにもたもたしてたら戦場で何も役に立たないからな。」 ジュダスの説明を頭に入れながら紗羅は深呼吸をした。握った弓が手にしっくりはまるのを実感し、少し笑みが漏れた。

「準備はいいか?それじゃあ、始め!」

 ジュダスの合図とともに紗羅は構え、矢を放つ。矢がどこに刺さったかも確認せず、2本目の矢を構えて放つ。すべてを打ち終わるまでにかかった時間は30秒もなかった。

「意外と時間がかかったな。」

 紗羅がそう言うとジュダスは的を確認する。ジュダスは紗羅の後ろにいたため、遠目にしか見ていない状態で、「おいおい」と紗羅に言った。

「いくら早く放っても、4射中1当っていうのはないだろう!」

 ジュダスは紗羅にダメ出しをしながら的の方へ進んでいく。進むにつれて、ジュダスの顔に冷や汗が流れだした。1本しか当たっていなかったのではない、すべて同じところに当たったのだ。

「いやいや、ふつう同じところに当てても、相当強く引かないとこんな風に全部突き刺さったりしないぞ?しかもあの距離でよくこれだけのことをしてくれたな。」

 ジュダスは素直に紗羅を褒めた。

「これじゃあ、弓に関して、俺が教えることはないな。」

 ジュダスは紗羅に弓を縁側に置いてくるよう、言った。


「じゃあ、次だが、馬術はここで練習するにはちょっと狭いから、剣術の練習をする。紗羅、その中から好きな武器を選べ。」

 ジュダスは弓を縁側に置きに来た紗羅の後を追い、紗羅の後ろに立って、言った。縁側にはいろんな種類の武器が並び、そのほとんどに立派な装飾がついていた。紗羅はその中から何も装飾がついていない、見た目にしては結構な重みがある中剣を手に取った。それを見たジュダスが紗羅が弓を選んだ時と同じような顔をした。その顔を見て、紗羅は再び不安になる。

「…これも高いのか?」

 おそるおそる聞くと、ジュダスがあきらめたような顔をした。

「お前、どんだけいい目をしているんだ?その剣はな、花の国の竜の抜けた歯から作ったんだ。どんな鉱石よりも強く、持つ者に魔力がなくても水の力を使えるんだ。その剣には値段がつけられない。魔力があるやつにも分からんように施してたんだがなー。見破られちまうとは思わなかった。」

 紗羅はジュダスの言葉を聞いて、青ざめた。

「そんな顔するなって。その剣もやるよ。」

「いや、だめだろう、そんな簡単にもらえる代物ではないんじゃないのか?」

 紗羅が慌てて拒否する。

「無駄だぞ?その剣は使い手を選ぶからな。気に入られないと握ることもできない。」

 ジュダスは紗羅に言いながら使用人の1人を呼んだ。

「お前、これに触れてみろ。そしたら3倍の給金をやる。」

 ジュダスが呼び寄せた使用人の男に破格の条件を出して紗羅の持つ剣に触るよう言うが、使用人の男は全力で拒否をする。

「いやです、それだけはご勘弁を!!」

「俺にさからうのか?!それならお前はクビだ。そして今後一切仕事に就けないように手を回すからな!」

 ジュダスが無茶苦茶なことを言うと、男は泣きながら紗羅に近づいた。そしておそるおそる手を伸ばす――男が剣に触れた途端、男の身体がビクッと痙攣し、男が失神した。

「??!」

 紗羅は慌てて男に近づき、生きているか確認する。脈があることに安心して、ジュダスを睨む。

「これはどういうことだ?」

 ジュダスはえらそうに紗羅に答える。

「だから言っただろう?使い手を選ぶって。剣に気に入られないやつはそいつのように強い電流を喰らうんだ。俺は失神しないけど、受ける電流は同じだからなー。痛いから触りたくない。ここに持ってくるときも、魔導師に頼んで魔法で持ってきた。」

(だからといって、他人で試すな!)

 悪びれもせず話すジュダスに紗羅は呆れた。

RPGの王道!『伝説の剣』みたいなのは出てきました。次回は紗羅とジュダス兄さんとの手合せの話を書きます。

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