*第21章~光の国の首都、ライツ~
光の国へこれから向かうと決めた紗羅たちは、寝ているシーラを起こし、シーラの意思を聞いた。
「僕はシーラと一緒に行きたい。向こうにいけば知っている人はいないし、僕も忙しくてあまり相手をできないかもしれない。それでもよければ、ついてきてくれないか?」
紗羅の問いにシーラは笑顔ですぐに答えた。
「シーラもいっていいの?うれしい!」
ぎゅっと抱き着いてきたシーラを紗羅は抱きかかえて、笑った。
「さて、それじゃあ魔道師らしく、魔法でサクッと光の国へいこうじゃないか。」
ダラスはそう言うと、自分の右手の手のひらを上にした。よく見ると、手のひらには魔法陣が描かれている。
「我、唱える者。出現せよ【収納】。」
ダラスが詠唱すると、突然ダラスの右手に魔道書が現れた。
「それがさっき馬車で言っていた魔法か?」
「ああ。ふつう魔道書をそのまま持って歩く奴なんていない。魔導師はたいてい体のどこか、一番多いのは手のひらだが、消えないように特殊な方法で【収納】の魔法陣を描いてその陣の中に魔道書を収納する。で、使いたいときはいつでも取り出せるようにするんだ。」
ダラスが紗羅に魔法陣の描かれた手のひらを見せた。
「特殊な方法って?」
「それはむこうに行ってから説明する。アレクとカイルは自分たちで俺の城にいけるだろう?俺はサラとシーラを連れてくから、ジュリアはジュリィを連れてきてくれ。」
ダラスがそう指示すると、皆了承した。
「それじゃあ皆、後でな。」
ダラスはシーラを担ぎ、紗羅の手を握って魔道書を開いた。
「我、唱える者。かの場所へ扉よ、開け。【移動】。」
ダラスが唱えた直後、紗羅たちは風の国の王都ウエンディの門の前にいた。
てっきりもう光の国についていると思っていた紗羅は目を丸くした。
「直接お前の国に飛ぶんじゃないのか?」
紗羅はダラスに聞いた。
「あのな、それぞれの国の王都、国境には結界が張ってあるんだ。どんな魔導師でも必ず門や関所を通らないと進めない。」
ダラスは説明しながら自分の懐をあさり、文字とユニコーンが描かれた札を出した。そして、紗羅とシーラを連れて門番のところへ行き、その札を見せた。門番は札を確認すると、顔色を変えて何も言わず紗羅たちを通した。
「あの札は身分証のようなものか?」
「まあ、そういうところだ。この札は通行証でな、自分の国の神獣が描かれているんだが、その絵が描かれている色で身分が分かる。色の使い分けは国によって違うんだが、例えば俺の国だとこの虹色に描かれた札が一番身分が高い。」
ダラスはそう言って紗羅に札を見せる。
「と言っても、これは俺が王である証ではなくて、王族であったり、高位の官吏でも持てる代物だ。まあ、この札を持つものを詮索するなという意味合いも込められているがな。で、次に身分の高い色が、白、赤、緑の順で分けられる。」
ダラスは門を離れ、人目のつかない茂みの中に入っていく。そして再び魔道書を開き、【移動】を使った。
国境に出たダラスは、関所でも同じように札を見せ、難なく通過すると、人気のないところへ行き、また【移動】を使う。
紗羅が気が付くと、風の国とは違う、センスのいい飾りが施された立派な門の前に立っていた。行き交う人々の顔は風の国よりも活気があふれ、あまり貧しい恰好をしているものはいなかった。
その大きな門を抜けると、そこには賑わう、けれどもきちんと整ったそれこそ“都”と呼ぶにふさわしい街並みが広がっていた。
「ようこそ、我が王都ライツへ。」
紗羅とシーラは田舎から上京してきたおのぼりさんのようにぽかーんとしながら辺りを見渡した。
「この国と風の国の違いは神獣と聖獣が消えたことだけなのだろうか。それとも治める者の差か?」
紗羅が聞くと、ダラスがニヤリと笑った。
「前者ももちろんだが、後者も当てはまるぞ。お前らの国は長いこと愚王ばっかだったからなー。どんなに強い魔力を持ってても、治める者があれじゃあね。おい、シーラ。お前もこの国に来るのは初めてか?」
ダラスの問いにシーラが頷く。
「うん、シーラね、ママが死んでからあの村を出たことがなかったし、ママが生きてた頃もずっと風の国にいたから他の国にはいったことがないの。」
「そうか、それじゃあ、これから俺の城まで見物しながら歩いてみるか?」
「うん!!」
シーラが元気よく返事をした。
街を歩きながら、シーラの質問攻めにあったダラスは嫌な顔1つせず、優しく答えていった。街に売ってある食べ物のこと、今はやりの服、みたことない道具や、装飾品の数々、都を訪れていた旅の一座。紗羅とシーラはそのどれもに興味を示し、特にシーラはダラスにかなり甘やかされて、いろいろ買ってもらっていた。
ダラスに買ってもらったものを握り締め、シーラは涙を浮かべた。心配そうに顔を覗き込む紗羅に、シーラは泣きながら笑った。
「あのね、シーラね、こんなに楽しいのはママが死んでから初めてなの。だからうれしくてなみだがでるの。」
紗羅はシーラを抱きかかえ、ギュッと抱きしめた。
しばらく街を歩くと、大きな橋にさしかかった。橋の奥にそびえたつのは巨大な城。城ひとつでシーラのいた村が数10個入るのではないかというくらいの大きさだった。
3人は城の中へ入り、そこから中央の階段を上がって、すぐの部屋に入った。その部屋に行く途中の城の内装も、すばらしく、豪華なシャンデリアに趣味のいい石造、赤いじゅうたんに、細かい細工が施された階段の手摺。それを見たシーラをあっという間に虜にするほどだった。
案内された部屋に入ると、アレク、カイル、ジュダスが怒りながら待っていた。彼らの怒りがなんなのか理解していた紗羅は、1人足りないことに気づいた。
「あれ?ジュリアは?」
紗羅が聞くと、アレクが答えた。
「あの魔女は着いて早々、化粧直しをしてくると言って、部屋を出ていきました。それより、主。こんな時間までどこをうろついていたんです?この国は私の国ではないから感知するのが大変なんですよ?!」
アレクが少し怒っていうと、カイルが止めた。
「申し訳ございません。おそらく私のご主人様が連れまわしたのでしょう。このかたはいつも考えるということをせず、行き当たりばったりで行動するので困っているんです。」
カイルが恨みがましい目でダラスを見ると、ダラスが慌てて釈明した。
「おいおい、俺はこの国に来るのがはじめてなお2人さんにこの国を案内してあげただけだぜ?みろよ、あの満足したお嬢ちゃんの顔を。」
ダラスが指差す先にうれしそうにお土産を見ているシーラを見て、アレクもカイルも何も言えなくなった。
代わって、ジュダスが口を開く。
「それならそうとあれかじめ言っておけよ!どこの国に従者も連れず、女子供だけ連れて街を歩く王がいるんだ!何かあったらどうするんだよ!」
「うっっ…。」
もっともなジュダスの言い分にダラスは言葉を詰まらせた。
ここにきて、魔法を使うにもいろいろと制限があるんだなーという、設定を出しました。じゃなきゃ、かなり不公平だと思うんですよ。さてさて、次回から紗羅さんの修業が始まります。スパルタな講師陣もお楽しみにっ!




