*第18章~カイルとアレクの墓穴~
紗羅たちが話し込んでいると、いつのまにか夜が明けていた。
「さあて、そろそろ約束のお嬢ちゃんのところに行くとするか。」
ダラスがそう言って立ち上がるのを紗羅が引き留める。
「その前に、1つ聞きたいことがあるんだが…。」
「なんだ?」
紗羅はチラリとカイルのほうを見た。
「カイル、お前って、ダラスの聖獣なのか?」
思いがけない言葉にカイルとカイルとジュダスが顔を見合わせる。
「…どうしてそう思った?」
カイルではなく、ダラスが紗羅に問う。
「他の国の聖獣はアレクの気を感じることが出来ないと聞いていたけど、あの時、アレクが僕の中から自分の力を発したのを見て、僕の中に何がいるのか、気づいただろう?最初は魔道師だったら気づくものなのかと思っていたけど、ダラスはカイルの反応を見て、確信したようだっし。。ダラスは王である以上、それなりの魔力があるはずだろう?」
紗羅はダラスとカイルを交互に見て、様子をうかがう。
「おそらく、アレクが僕の中に隠れている内は気づくことは出来ないが、さすがにその力に触れると他国の聖獣でも分かるんだろう。神獣が人型になれるのなら、聖獣の中にも人型になれる者がいてもおかしくないと思うんだ。あと、カイル。」
紗羅は話しながらカイルに近づき、匂いを嗅ぐ。
「お前ちょっと、獣臭い。」
カイルは一瞬何を言われたのか分からなかったかのように固まっていたが、紗羅の言葉を理解すると、顔を真っ赤にして紗羅に詰め寄った。
「け、獣臭いだと?!そんなはずはない。我らは聖獣で、普通の獣とは違う!獣臭などは放っていない!!それに私はがさつで大雑把なご主人様と違って、綺麗好きだ。毎日欠かさず湯あみをしているんだぞ。そんな私が臭いなんてこと、ある訳がないんだ!」
カイルは勢い余って、一気に話終わった後、紗羅がニヤリと笑ったのを見て、自分が何を言ったのか理解した。
「カイル…この馬鹿が。」
ダレスはそう言って、頭を押さえた。
「御前で失礼します。」
カイルがそう言うと、カイルの身体が虹色の光に包まれて、カイルがいた場所に綺麗な白鳥が現れた。
『これが私の本来の姿です。人型になるときは目立たぬようにしろというご主人様のご命令から、黒髪でいますが、私も光の属性ですので、あの姿でいると、力が半減してしまいます。それであなたの中にいたとはいえ、神獣であるアレク様とこれだけ近くにいても気づくことが出来なかったのです。私が完全に人型で力を発揮する場合、髪の色が虹色になります。」
「このように」と言いながら再びカイルの身体が虹色の光に包まれると、今度は人間のカイルの姿だが、髪が虹色に輝く青年になっていた。
「気づかなかったとはいえ、これまでの数々の無礼、お詫び申し上げます。」
カイルはそういうと、紗羅とアレクに頭を下げた。
「当然だ。我が主への非礼の数々、そこの男二人の首を持ってしても、足りないぞ!」
アレクがカイルとジュダスを睨みつける。
「そう言うな、アレク。ジュリィはともかく、カイルに対して僕はそんなに怒ってない。ジュリィも、ダラスの従兄弟というと、きっと王族なのだろう。あの唯我独尊という気質は生まれ持った者に違いないよ。おそらく、誰に対してもああなのだろう。あの牢に入ることになった原因の喧嘩もジュリィの性格が災いしているんだろうよ。」
紗羅の言葉にうんうんと頷くダラスとカイル。
「ジュリィはな、自分があんな恰好をしているから男どもが近づいてくるのに、身内やカイル以外の男が少しでも体に触れると暴走してしまうんだ。ただ、道で肩がぶつかっただけでもひどい拒否反応を起こしてな。今回は酔っぱらった男がジュリィとぶつかって、ジュリィがその男を半殺しにしてしまったんだ。そして捕まった後も、牢に一緒に入ってた男の態度が気に入らないってんで、口論になった挙句、とっさにジュリィに掴みかかってしまった男をまたもや半殺しにしちまって、独房送りになったみたいなんだ。そんで自分たちでは扱い切れないからってんで、今日ジュリィは別の、もっと大きな罪を犯した奴らが入れられるあそこよりもっと、警備が厳しい監獄へ移される予定だったんだ。だからそうなる前にお前に助け出してもらう必要があったという訳だ。」
ダラスがやれやれというように話す。
「うっせぇ!俺は何も悪くねぇぞ。俺に触れる男どもが悪いんだ。本当はお前らにだって、触れられると鳥肌が立ってしまうのを我慢しているん…だ、ぞ…?」
紗羅が(とんだ問題児じゃないか!)と内心考えていると、怒りながら話してたジュダスが何かに気づいたように紗羅を見た。
「?」
紗羅がその視線の意図を解さないうちにジュダスがズカズカと紗羅のほうに近づき、紗羅の腕を掴んだ。
「な、何をするんだ!」
紗羅が慌ててジュダスの手を振りほどく。
「出ない…ここに来る時もそうだったが、今も鳥肌すら出ない…。」
(まずい…。)
ジュダスの行動の意味を理解した紗羅がその場から後ずさる。
「お前、まさか女か?!」
ジュダスの問いにダラスとカイルも紗羅を見た。紗羅は「何のことだ?」と後ずさりを続ける。が、ジュダスが再び紗羅の腕を掴んだ。
「男に触れていたら1秒でも耐え切れない俺が、男のはずのお前に触れていて平気なはずがないんだ。それがたとえどんなに女っぽい男でも、どんなに綺麗な男でも、そんなことはありえねぇ。考えられるのはお前が女ということだ。」
「れ、例外もいるんじゃあないのかな?」
紗羅がジュダスの腕を振りほどこうとするが、ジュダスの紗羅を掴む力は思ったよりも強く、なかなか振り払えない。
「いいや、生まれてこの方、そんな奴はいなかった。白状しないなら、その服引っぺがしてでも確かめる!」
そう言って、紗羅の服に手をかけたジュダスにまたもや突風が襲う。もちろん、それをしたのはアレクだ。
「我が主に何たる無礼!正気か、貴様!!八つ裂きにしてくれる!!」
「なんだ、やるっていうのか?!小僧!」
アレクの怒りに闘志をむき出しにして、ジュダスが応える。見かねた紗羅がアレクの前に立ち、止めに入った。
「ストップ。アレク、そういちいち感情を昂ぶらせるな。」
「ですが主、こやつは女性の身であられる主の衣服をとろうと、主に触れたのですよ?八つ裂きだけでは済まされません!」
「…アレク、お前それは無意識なのか?それともわざとやっているのか?…。」
「?どれはどういう意味で……あ。」
アレクははぁーっと深いため息をついて言った紗羅の言葉で、自分が墓穴を掘ったことに気づいた。カイルと言い、アレクと言い、獣たちは時々抜けているところがあるようだった。
カイルとアレク。2人(?)とも馬鹿ですねー。そしてこれでお互いの秘密をすべてさらけ出してしまいました。さあ、次回。やっとシーラさんの登場です。(*本当はこの話で出す予定でしたが予定を変更してこのようなことになってしまいました。)




