*第17章~決意~
――光の国は他の国よりも恵まれていた。広大な土地、豊富な水、適度な気温、そして影の国の影響を一番受けにくい力をもつ虹色のユニコーンが守護していたので、どの国よりも魔物の侵攻が少なかった――
「で、俺様がその光の国第26代国王だ。俺が即位したのはちょうど17年前だ。当時の俺は、若く、見た目がかっこいいのはモチロンだが、性格もよくてな?向上心が厚く、この国をもっと豊かにしようと励んでいた。新しいことに挑戦し、改善すべきとこは改善して。だが、その矢先、即位わずか1年にして前代未聞のあの事件が起きちまった。」
ダラスは真剣な顔つきで話す。
「目標が『発展』から『現状維持』に変わっちまって、ここ数年はもう、すっかりやる気を失ってしまってな?正直禅位しようと思っていたくらいだ。そんな時、風の国の神獣の情報が入ってきた。俺たちは確かな情報を得る為、この国に入り、調査を続けた結果、お前と巡り合えた。」
ダラスはそう言って紗羅を見つめると、紗羅に頭を下げた。
「何で異世界の人間であるお前が、神獣と契約してるかは分からんが、頼む。どうかお前がこの国の王となってくれ。いや、お前にはこの国の王となる義務がある。」
ダラスの言葉に紗羅は目を見張る。
「何故だ?神獣と契約したものが王とならなければならない法律でもあるのか?そもそもこの国にはすでに国王が存在するではないか!」
「今のこの国の王は聖獣との契約を反故にしてしまった。それどころか、噂では契約していた聖獣を殺してしまったとも聞いている。そんな奴に国を治める資格はない。」
「だったら、他に跡継ぎでもなんでもいるだろう?そいつらが王になればいいではないか!」
紗羅がダンっと机をたたく。
「いいか、サラ。今この国の朝廷は腐っている。それというのも今の国王の妾妃が国王を意のままに操り、朝廷を掌握してしまっている。そしてその妾妃は自分が産んだ子供以外は、国外へ追放したり、魔力を強く持って生まれてくる子供に関しては暗殺までしているという噂だ。そんな状態で育った子供は、母親の操り人形になるのが分かっている。あの妾妃の子供以外はこの国にはいないんだ。それに今この国には聖獣がいない。聖獣と契約出来ない王などもっての外だし、なにより王が契約する獣はその国で人間と契約している獣よりも高位でなければいけない。でなければ例え神獣が望んでいても、その国への守護が十分になることはない。以前一度だけ、何代か前の花の国の王が契約していた聖獣よりも、息子が幼い時に契約してしまった聖獣のほうが高位だったとき、花の国は魔物が大勢侵攻して、崩壊しかけてしまったんだ。」
ダラスは立ち上がり、紗羅のほうへ向かい、紗羅の肩を掴む。
「神獣が戻っただけで随分魔物の侵攻を止めることは出来るだろう。ただ、それだけでは駄目なんだ。国の守護を元通りに建て直さないと世界のバランスは崩れたままなんだ。このままだと、後2年で、世界は影に沈んでしまう。そうなる前にこの国を神獣の加護のある国に戻さなければいけないんだ。戸惑うのは分かるが、お前には王になる以外の選択肢はない。」
「っ…。」
ダラスの切羽詰まった訴えにも、すぐに返事を出すことが出来ない紗羅。
《私からも、お頼み申します。》
突然沈黙を破るかのようにアレクの声が部屋に響き渡ると、風が紗羅の身体から吹き、紗羅の目の前に少年の姿のアレクが現れた。紗羅以外はその少年が何者か分かっていても、突然目の前に現れたことに、驚きを隠せないでいた。
「主、私は自分がこの世界からいなくなることでこれほどまで悪影響を与えたとは思ってもみませんでした。ですから、私にはこの状況を何とかする義務があります。そしてそれには主の力が必要なのです。どうかお願いします。私と共に、この国を治めてください。」
自分に頭を下げるアレクをじっと見つめる紗羅。そして重い口を開く。
「…、駄目だ。僕は今、王になることは出来ない。」
「何故です?主はこの世界がどうなってもよいとお思いですか?」
必死の形相で紗羅に詰め寄るアレク。
「主は今でもご自身は前の世界の人間だとお思いかもしれませんが、だからと言って、この世界の民を見捨て――っ。」
紗羅がアレクを鋭く睨んだ。
「アレク、僕のすることに口を出すなと言っただろう?」
紗羅の冷たい声にアレクは「申し訳ございません。」と言い、下を向いて後ろへ下がった。
「だいたい、話はちゃんと聞け。僕は『王にならない』といったわけではない。『今、王になることは出来ない』と言ったんだ。」
紗羅の言葉に顔を上げるアレク。
「一体、どういう意味なのですか?」
紗羅はフッと笑みを浮かべた。
「1年だ。1年たったらお望み通り即位してやる。だから僕に時間をくれ。」
紗羅の言う意味が理解できなくて、皆が目を丸くした。
「サラ、それは何のためだ?1年も必要なのか?」
ダラスは紗羅に聞いた。
「ダラスが言ったんじゃないか。この国の朝廷はすべて妾妃が実権を握ってるって。例え僕がアレクを連れて行っても、そう簡単には国を明け渡しはしないだろう。だから僕が王になるにはそれだけの人材がいる。だが、ふつうこの世界について、政について何も知らない者についてくる優秀な人間などいないだろう?だから僕にこの世界のことを学ぶ時間と、人材を集める時間をくれないか?」
「で、では準備が整えば…。」
アレクが恐る恐る聞くと、紗羅がニッと笑った。
「ああ、この僕が、この国の王となろう!」
紗羅さん、王様になります。そして、なかなかシーラちゃんに会う話が書けません。毎回、次こそは!と思うんですが、じらすのが上手な女の子で困ったものです(笑)




