*第15章~美女の正体~
「サラとジュダ…ジュリィ、何故ここにいる?」
紗羅の帰りを待っていたダラスはずっと部屋の扉に意識を集中させていた――が、紗羅と美女は何故か突然ベッドの上に現れた。
「ジュリィ、お前魔法なんて使えなかったはずだよな?だとしたら、この部屋にジュリィを連れてきたのはサラ、お前か?」
ダラスとカイルが紗羅を見つめる。
「なんだ?お前ら、魔導師かどうかも分からないやつをこの俺様を助ける重要な役目に就かせたのか?!」
美女が怒ってベッドから飛び降り、ズカズカとダラスの前に立ち、ダラスの胸ぐらを掴んだ。
「お前、何考えてんだよっ!ていうか、そもそもこいつは誰だ?」
もっともな疑問をぶつける美女の手を振りほどき、ダラスは美女から離れてカイルの後ろに隠れた。
「お、落ち着けって。ちゃんと説明するから。って、おい、カイル!何すんだ、やめろって!!」
カイルは冷や汗を流しながらカイルの後ろに隠れたダラスを引っ張り出し、美女の前に出した。
「私もご主人様の考えにはついて行けません。しっかり怒られるべきです。ジュリィ様、この者は昨日ご主人様の命を狙った奴隷です。」
「ちょ、お前よりによって何でそこをチョイスするかなぁ!…うわぁ、まてまて!早まるなジュダス!!話せば分か――」
「この姿の時はジュリィと呼べっつっただろう!!!!!!!!!」
ダラスの必死の弁明も遮り、美女がダラスの顔を殴った。
「いってぇ!何でそこに切れるんだよ!だったらお前もっと徹底して女になりきれよ!!見た目美女でそんな喋り方するやついねえよ!」
ダラスは涙目で頬をさすりながら言った。
「うるせえ!そんなことしたら馬鹿な男どもが湧くだろうが!俺は自分の女装した姿が好きだからこの格好をしているだけであって、むさい男どもとなれ合う気はねえんだよ!」
ぎゃあぎゃあ言い合いをする二人を遠い目で見ながら紗羅はため息をついた。
(いつまで続くのだろうか。)
「さて、本題にもどろうか。」
2時間ほど言い合いをした後何とか落ち着き、ダラスがコホンと咳をして言った。
「サラ、こいつはジュダス。話の流れで気づいただろうが、女装癖のある男で、俺の従兄弟だ。…て、睨むなよ!」
ダラスが「ジュダス」と言った瞬間ジロリとジュダスがダラスを睨んだ。
「すまんがサラ、今後こいつが女装をしている時はジュリィと呼んでくれ。」
紗羅が頷くとダラスが話を続ける。
「俺とカイルとジュダスは実はこの国の人間ではないんだ。俺たちはこの国である情報を探るために来たんだが、情報収集の途中でジュリィが街の酔っ払いと喧嘩しちまって、そのまましょっ引かれたんだ。こいつは見た目はいいのに短気で喧嘩っ早いから行く先々で面倒を起こすんだよ。」
ダラスがため息をつきながら話すと「余計なことを言うな!」とジュダスが再び切れそうになったため、ダラスは慌てて紗羅の紹介に入った。
「ジュリィ、こいつはサラ。昨日お前が出品されてるかもしれないと思って行った競り会場の商品の中にこいつがいてな?素晴らしい鍵開けの技と身のこなしをしてたんで、スカウトしてみた。」
「ふざけるなよ!お前奴隷なんぞに頼ったのか?!」
軽く話すダラスにジュリィが怒鳴る。
『こいつ、我が主に向かってなんと無礼な…。主、この女男、殺りましょう。』
(おいおい、お前まで短気になってどうするんだ。まだシーラに会えていないんだ。こらえろ。)
自分の頭の中で殺気を放つアレクを抑えて、紗羅はジュダスに言った。
「僕は奴隷ではない。あの場にいたのは事情があったんだ。それにお前を助けたのは取り引きだったからだ。おい、ダラス。僕は約束を守ったんだから、さっさとシーラを渡せ!もう僕に用はないだろう?」
「まあまぁ、明日ちゃあんと返してあげるから。それに、俺お前のこと気に入ったから、これっきりにはしたくないんだよね~。」
ダラスの言葉に皆耳を疑った。
「僕はこれっきりにしたいんだが?」
「そうつれないこと言うなよ。お前まだこの世界に来て日が浅いだろ?あのお嬢ちゃんもまだ幼いし、もっとこの世界のことを知る必要があるんじゃないのか?」
ダラスの言葉に疑問を持ったジュリィがダラスに聞く。
「この世界というのは一体何のことだ?」
「気になるかい?なんとサラは我々の知らない、どこか違う世界から来たんだ。すっげえ、興味深いだろ?」
何故か偉そうに言うダラスに紗羅とジュダスの二人の拳がいっぺんに飛んできた。それをダラスがしゃがんでよけ、逃げようとすると、紗羅とジュダスは二人ともダラスの服の裾を踏んづけて逃げられないようにした。
「おい、ダラス!よくもそうべらべらと人の事情を話せるな!」
「ふざけんなよダラス、寝ぼけたことを言うのもたいがいにしろ!違う世界なんてあるわけないだろう!」
同時に責められ、ダラスが縮こまる。
「いいじゃねぇか、本当のことだし。ジュリィは悪い奴ではないし。カイル、隣の部屋のアレを持ってこい。」
ダラスがそう言うと、カイルが部屋を出って行った。
ガチャリと再び部屋の扉が開き、入ってきたカイルの手にあるものを見て、紗羅は絶句した。
「ほら見ろ、ジュリィ。この服サラが着てた服なんだが、この丸い物を見てみろ。こんなものこの世界のどこを探してもないぞ!」
ダラスが指差すところについていたのはただのボタンだった。
(そういえばこの服にはボタンがついていないな。それよりあいつら、勝手に人の物を断りもなく持ち出したりして…!)
紗羅がひそかに心の中で怒りを燃やす。
「サラの話だと、数日前突然目の前が真っ白に光ったと思って、気が付いたら風の国の外れにある森の中にいたんだと。そこでサラを助けたのが、さっき言ってた取り引きの嬢ちゃんで、サラは森の近くの村人たちに一服盛られて売られちまったんだとよ。」
紗羅の怒りなど知らず、紗羅から聞いた話をジュリィに説明するダラス。ダラスの話を聞きながら、紗羅が違う世界から来たということをどうやら信じたジュダスが、ふと疑問を口にする。
「おい、お前。お前の世界にも魔法なんてあるのかさっきお前は魔法を使っていただろう?それにその左手の人差し指の文字、それは【言語】の魔法が籠められているだろう?それは我々が使用している文字だし、そんな魔法を使うってことはお前の世界の言語とこの世界の言語がちがうってことじゃあないのか?」
「っっ…。」
ジュダスは質問しながら徐々に自分で答えを導き出しているようだった。そしてその、ジュダスの鋭い質問に言葉に詰まる紗羅。追いつめるようにジュダスが話を続ける。
「言葉を知らない状態でそんな魔法が使えるわけじゃあないよな。ならお前にその魔法をかけたやつがいて、そいつがお前に魔法を教えたって考えるほうが早い。そしてその相手はその少女でもなければ村人でもない。少女がお前に魔法を教えたのなら途中で二人で逃げることができたはずだ。村人から教わった場合もまた然りだ。おそらくお前が魔法を習得したのはダラスとこの宿屋に来て、別れた後。さもなければ結界のかかっていない競り会場から、そんな派手な行動をして逃げようとする必要なんてないからな。問題は隣の部屋にいるダラス達に気づかれず、誰から、どうやって魔法を習ったか。」
(ヤバイ。こいつ、かなり頭が切れる。こんな面倒な奴なのに、ダラスが同行させた意味がやっと理解できた。)
緊張した紗羅の頬をタラリと冷や汗が伝う。
そしてジュダスが紗羅に問う。
「お前は一体誰に魔法を教わったんだ?」
ジュリィ姐さん大暴走!紗羅さん大ピンチ!な今回のお話。それにしても周りにあんまキャラ濃いやつばっかりいると、主人公がかすんできますね…。




