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*第14章~作戦実行~


 紗羅とダラスとカイルは紗羅の部屋を出て、隣のダラス達の部屋に移った。

 紗羅がいた部屋の2倍くらいの広さだったが、何故かベッドは一つしかなく、代わりに部屋の中央に机と椅子があった。

 ダラスは紗羅に椅子に座るよう勧めると、自分はその向かいの椅子に座った。

「さて、まずはこれを見てもらおうか。」

 ダラスがそういうと、カイルが机の上に地図のようなものを広げた。

「これはこの街の地図だ。今俺たちがいるのが、ここ。ここから右手に出て、4つ目の角を曲がると橋がある。その橋を渡って2つ角を過ぎると、右手に北の捕盗署ほとうしょがある。ここは、傷害、泥棒、強盗、殺人などを犯した罪人達が捕えられる場所なんだが、俺らが捜している奴はここにいる。」

 紗羅はダラスが指し示す目的地への経路を一瞬で覚えた。

「あいつはどうやらこの中の一番奥の牢に入れられているようだ。すまないが、すぐにでも助け出さないといけないんだ。」

「奴隷として売られそうなのか?それとも何かひどい目にあっているのか?」

 ダラスがいつになく真剣な表情をしたので紗羅は少し心配した。

「いや、…むしろひどい目にあうのは捕盗署の奴らなんだが…。」

(どういう意味だ?)

 ダラスの言っている意味が理解できなかったが、紗羅は何も言わず立ち上がり、そのまま部屋を出ていこうとした。そして部屋の扉の前で立ち止まると、くるりとダラス達のほうを振り返った。

「今夜、日が沈むと同時に決行する。お前たちは何もせず、ここで待っていろ。」

 紗羅はそう言い放ち、そのままダラスの部屋を後にした。



 夕暮れ時、紗羅はダラスの指し示した建物の前にいた。辺りは暗くなりかけていたので、行き交う人の数は少ない。道を歩く人に紛れて、紗羅はその建物をぐるりと一周する。建物の周りは高いへいで囲われ、入り口は通りの大門一つのみ。門の前には衛士が二人。

(アレク、中の人間はどれくらいいるか分かるか?)

『少々お待ちください。』

 頭の中から返事が返ってくると、突然紗羅から風が吹いた。

『主、中には牢に捕まっている人間が15人、中の見張りが30人程いるようです。』

 割と早く自分の問いに答えたアレクに紗羅が先ほどの風は一体何なのか、質問した。

『あれは、私の力の一つです。風に乗せて意識を飛ばすことができるのです。主、お気を付け下さい。あの塀には強い魔法封じの結界が張ってあります。これより、魔法は使えぬでしょう。』

 アレクのもたらした情報に紗羅は残念そうな顔をした。

(使ってみたい魔法があったんだがな…。)

 そうこうしている内に、辺りは日が沈み、すっかり暗くなっていた。

(約束の時間だ。いくぞ、アレク)

『御意。』

 

 紗羅は予め【合成シンセサイズ】の魔法で作っていたかぎのついた縄を懐から取り出し、それを大門の反対側にある塀に向かって勢いよく投げる。上手く、とっかかりにひっかけた感触を確かめると、そのまま縄を握り締め、塀に足をつけて登り始めた。

 頂上まで登り終えると、自分の着地地点付近に誰もいない事を確認し、塀から飛び降り音を立てずに着地した。

 紗羅は塀の中への侵入に成功すると、辺りを見回して建物への入り口以外の侵入経路を探す。

『大門の前の扉以外は、ここから右に進んで、建物の角にある通気口だけです。』

 紗羅はアレクに言われた通り、右方向に進もうとする。が、角のほうからやってくる2つの人影に気づき、慌てて近くの茂みに隠れる。

 見回りに来た2人が紗羅に気づかず通り過ぎるのを待ち、紗羅は茂みから出て、通気口へ向かった。

 通気口は多少小さいが、細身の紗羅にはたやすく侵入できる大きさだった。通気口の蓋を開け、その中に潜り込む。ある程度匍匐前進ほふくぜんしんで進んでいくと、明かりが見えた。


 通気口の出口の蓋をそっと外すと、目の前の小さな部屋に男が3人、紗羅から見てその部屋の奥には廊下のような通路があり、そのわきには左右それぞれ6部屋ずつ、牢があった。そしてその一番奥の正面に鉄の扉の牢がある。おそらくあそこにダラスの連れが囚われているのだろう。

(まずはここにいる監視の男どもを何とかしないとな。)

 紗羅はズボンの裾から短剣を取り出し、それを部屋のむこうの廊下へ素早く男たちの目に留まらぬように放り投げた。

 カキーンっ

 男たちは音のしたほうへ一斉に振り向き、1人の男が立ち上がり、音の正体を確認した。

「あれ、何であんなところに短剣があるんだ?囚人たちがとる前に拾わなきゃ。」

 そう言いながら歩き出す男。それを見ている2人の男達。

 紗羅は通気口の出口に手をかけると、腕の力を利用して一気に這い出し、一番手前にいた男の後ろの首に手刀を喰らわせ、そのまま向かいの席にいた男にも手刀をお見舞いした。男達は何が起きたのかもわからないまま気を失って倒れる。

 2人が倒れるよりも早く紗羅はその場を離れ、短剣をとりに行く男のもとへ向かった。

 紗羅は、男が2人の倒れた音に気づき振り向いたと同時に男のみぞおちに思い拳を喰らわせた。

 紗羅が通気口から出て、最後の男を倒すまでの時間はわずか5秒しか経っていなかった。


 事の一部始終をみていた牢の中の囚人たちは一瞬息を飲んだ後、騒ぎ立て始めた。自分をここから出せと、叫ぶ囚人たちを無視し、急いで一番奥の牢へ向かい、鉄の扉の前に立つと、髪につけていたヘアピンを2本抜き、それを真っ直ぐに伸ばしてから扉にかかっている大きな錠前の鍵穴に差し込んだ。

 15秒後、カチリと音が鳴り錠前が開き、扉を閉めていた鉄の棒を引き抜くと、鉄の扉を開けた。


(あれ?この人?)

 扉の中にはその場に似つかわしくない、美人な女性が両手を縛られていた。着ている着物は町民のものと変わらない素材だったが、女性が醸し出している雰囲気が高貴な人間と分かるようなものだった。

(何でこんな人がこんなところにいるんだ?というか、この人がダラスの連れなのか?)

 紗羅は目の前の光景が信じられなかった。

――が、紗羅の存在に気づいた女性が、口を開いた瞬間、紗羅は理解した。

「おい、お前ダラスの手の者だろう?ったく、おっせえよ!あんまり遅くてイライラさせるから、ちょっと気に入らなかった同じ牢に入れられてたやつ半殺しにしたらこんな目にあっちまったじゃねぇか!さっさと助けに来いよなっ。」

 本当に目の前の美女から発せられた言葉とは思えないほど、下品な言葉遣いだった。

「さあ、さっさとこの鎖を外してくれ。この鎖、力を吸い取るような魔法がかけられているから力が出ねぇんだ。そうでなかったらこんな鎖、すぐに引きちぎってやるのに。全く気持ち悪いッたらありゃしない。それもこれも全部、愚図ぐず鈍間のろまなダラスと、役に立たないカイルのせいだ!」

 紗羅が鎖を解きながらも、美女は文句を言い続けた。

 ガチャンと音がして、美女を縛っていた鎖が外れると、美女は肩をぐるりと回し、指を鳴らして笑った。

「あー、やっと解放された。ここのやつらすっごくムカつくから、全員しめてきてもいいだろ?」

「駄目に決まってるでしょう。あなたがまた牢に入るのは勝手だが、僕を巻き込まないでほしい。」

 紗羅は美女を叱り、そのまま手を引っ張って、入ってきた通気口に押し込めて、建物の中から出た。

 紗羅たちが通気口を出る頃、騒ぎに気づいた見張り達が逃げた囚人を追おうと一斉に騒ぎ出した。

「うーん、これは中々まずいんでないかい?どうやって脱出する?」

自分がもたもたしていたせいで遅れたのに悪びれもせず美女が紗羅に聞く。

「あそこに大きめの樹があるから、そこから塀に飛び移ればいいよ。」

 紗羅は塀のそばにある背の高い樹を指した。

「あんまり美しくない脱出方法だが、この際仕方ないな。もう一度捕まるのはごめんだからね。」

 美女は紗羅に言われた通り、軽やかに樹に登り、塀へ飛び移った。紗羅もその後を追う。

 塀から飛び降りて、街路に出ると、捕盗署の大門のほうから衛士が駆けつけてきた。

「ね、暴れていいだろう?」

 わくわくしながら紗羅をみる美女の手を掴み、紗羅は片手で懐から魔道書を出す。そして、ページをめくって、詠唱する。


「我、唱える者。かの場所へ扉よ、開け。【移動テレポート】。」

 一瞬の間に、紗羅たちはダラスの部屋に出ていた。

 部屋にいたダラスとカイルは突然現れた紗羅と美女に目を丸くして驚いていた。



新キャラ登場!そして、私が忘れがちなキャラ設定。そうです、紗羅さんは強いのです。魔法とか使いだしたから、忘れかけてましたが、身体能力が素晴らしいのです。もっと、元いた世界で身に着けたことを披露できればいいんですけどね。

次話も是非よんでください!

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