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道具師ジェマ、所有者固定魔道具師への道。6  作者: こーの新


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道具師ジェマ、魔道具師への道。


 埋葬を終えてジェマとハリスがリビングでお茶を楽しんでいると、外を警戒していたカポックが剣の柄に手を置く。ジェマはその仕草に外に意識を向けた。全く分からないけれど。



「ジェマッ」



 店のベルが激しく鳴るほど勢いよくドアが開かれ、飛び込んできた男。店番をしていたジェットは嬉しそうに身体を揺らす。聞き覚えのある声に力が抜けたジェマは続けてジェットの嬉しそうな感情が伝わると小さく笑みを零した。



「カポックさん、大丈夫です。多分これ、ラルドです。ハリス、少し行ってくるね」


「あ、私も行く。ジェットちゃんに店番のこと教えてもらいたいし」


「では、行こう」



 護衛のカポックも一緒に店に向かうと、珍しく額を汗で濡らしたラルドが書状を握りしめていた。



「ラルドさん、こんにちは」



 ジェマがのんびりとした笑みを向けると、ラルドは幾分か気が抜けたような顔をした。けれどその後ろからやってきた見知らぬ少女とカポックに眉を顰めた。



「ジェマ、何かあったのか?」


「あ、紹介しますね。この子はハリス」



 ハリスが頭を下げると、ラルドはすっと目を細める。そして小さく口角を上げた。



「ああ、シヴァリーから聞いている。〈エメラルド商会〉のメイドたち向けの教育に混ぜてやって欲しいって。手続きは進めているから、決まり次第そっちも書状を出す。待っていてくれ」


「ありがとうございます」



 ラルドの見定めるような眼差しに、ハリスは少し怯む。そんなハリスにはそれ以上声を掛けず、ラルドはカポックを見る。



「それで? シヴァリーの部下がなんでここで警護してるんだ?」


「王妃と騎士に狙われているらしくて。念のためカポックさんが警護についてくれているんです。ナンブモスの討伐のとき、目を付けられたみたいで」


「ナンブモス、か。正直助かった。うちの商会もかなり助けられたからな」



 渋い顔で腕を組んだラルド。街中の人を避難させたということは、当然〈エメラルド商会〉の面々もそこにいた。その騒動のあらましは報告を受けている。



「街の人のために冒険者の皆さんが立ち上がってくれたおかげです。それで、ラルドさん?」


「ん?」



 ラルドは首を傾げると、妙に商売っ気のあるジェマの振る舞いにハッとして手に持っていた書状を渡した。書状の印は道具師ギルドファスフォリア支部のギルドマスターの紋があしらわれている。ジェマは思わず背筋が伸びた。



「商売の話じゃないわけではないが、うちとの取引の話じゃない。力抜いて良いぞ」


「うん。これ、ラルドのところに届いたの?」


「ああ。配達員曰く、ここが留守だったからってさ。でも、こんな重要書類は普通手渡しだ。配達員の方は注意して上にも報告しておいたから大丈夫だ。問題は、ギルドからジェマ宛になんの話かってことだよな」



 ジェマは小さく頷いて、書状の紐をしゅるりと外す。そして、目を通すと途端にそわそわと落ち着きなくその場をうろうろと歩き回り始めた。



「おい、ジェマ? そんな変なことが書いてあったのか?」


「魔道具師」


「は?」


「魔道具師認定試験のお知らせだった」



 魔道具師は道具師の次のランク。魔術を付与した魔道具の制作が許される段階に進むための試験だ。所有者指定魔道具師の一つ前のランク。大抵の道具師はこの魔道具師のランクのまま一生を終える。



「学園に行かずに、この早さで認定試験か」


「ラルドのおかげ。〈エメラルド商会〉に商品を卸していたから、その分早く売り上げが規定を超えたみたい」



 魔道具師認定試験を受けるための条件は2種類。1つは王立学園で12歳まで魔道具師認定試験講座を受講すること。大抵の魔道具師はこの手順を踏んでいる。スレートも、その両親のターコイズとアイオライトも例外ではない。


 もう1つは自作の道具の総売り上げと顧客数が規定値を超えること、道具師として新商品登録や販売している道具の品質を評価する抜き打ちテストで道具師としての評価を上げ、評価ランクがAランク以上になること。


 このルートだと、新規店舗の店主には時間がかなり掛かる。大商会のお抱え道具師や代々道具師を輩出している銘家なら話は別だが。


 ジェマの場合、スレートの評価を引き継いで多少の客が〈チェリッシュ〉についていたものの、それだけでは規定の総売り上げと顧客数には遠く及ばなかった。突出していたのは新商品登録の頻度と道具の品質の抜き打ちテストの評価。けれどそれだけでは魔道具師としての資質は認められない。


 そこに〈エメラルド商会〉で商品を販売し始めた。ジェマの店は森の中。そこまでは足を延ばさない人たちも、街中の、いつも買い物をしている大商会の中で売られている商品ならば手を出す。


 そしてそこでジェマのアクセサリーの売れ行きが伸びたり、ジェットの【次元袋】が話題を掴んだことが大きかった。顧客数を増やし、リピーターを獲得し続けることができた。ジェットの【次元袋】はジェマの名前で新商品登録はされているがジェマが評価の辞退を申し出たために評価に加算はされていないが。



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