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道具師ジェマ、所有者固定魔道具師への道。6  作者: こーの新


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2


 王妃が去って再び魔剣士たちの動きが軽やかになる。戦うことを止めないと決めても、その手には重みが残った。緊張が解けたとき、オハイアリィが咆哮を上げた。



「任せろ!」



 スコーチアが体内の魔力を丁寧に練り上げてオハイアリィが握る魔剣イグナスに炎を纏わせる。その業火は瞬く間にオハイアリィの近くにいたナンブモスを飲み込んだ。



「ジェマさん! 消火を!」


「水よ、我が呼び声に応え、具現化せよ!」



 視界の隅にハナナが飛び火した枯草が燃えていることに気が付いて叫ぶと、ジェマが片手間に消火した。戦闘はしばらく続き、最後の一体を倒したのはヴォルグ。その肩が荒く上下する中、グラスが勝どきを上げた。



「俺たちの勝ちだ!」



 その声は冒険者ギルドへ、そしてそのそばに陣を移した冒険者たちにも届いた。街中からも歓声が響き、正門へ冒険者たちが集まってきた。



「勝ったぞ!」


「ああ、俺たちの勝ちだ!」


「ぶぇっくしょいっ、あ、り、鱗粉がまだ残ってるぞ!」


「ポーションくれぇ……」



 浮かれて残った鱗粉を浴びてしまった冒険者たちには、後方支援に回っていたワンドマスターたちのなかで回復魔法が使える者たちが呆れながら回復を施した。



「全員で掴んだ勝利だ。特に、ジェマ。こんな突拍子もない作戦を立ててくれたことに感謝する」


「いえ。皆さんが信じてくれたおかげです。あ、【回復ポーション】販売中ですよ」



 しれっと商売っ気を出すジェマに、冒険者たちは笑いながら【回復ポーション】を買っていく。怪我なんてしていない。けれどジェマのアイデアと馬鹿げた魔法の使い方のおかげで街を守ることができた。感謝を伝えるには手っ取り早い方法だった。



「ありがとうな、嬢ちゃん」


「オハイアリィさん、お疲れ様です。スコーチアも頑張っていましたね」


「はっはっ。嬢ちゃんのおかげだ。俺の身体が疲れることなく、それでいて火力は全盛期と変わらないなんてな。最高だ」



 ムッキムキな身体を震わせて豪快に笑うと、オハイアリィはジェマの頭を撫でて立ち去った。



「ジェマ、来てください。解体しますよ」


「はぁい!」



 ハナナに呼ばれて、ジェマの目がキラキラと輝く。そして、その足がはたと止まった。



「グラスさん。解体、任せてもらっても良いですか? 買い取りの代金は皆さんで山分けで大丈夫なので」


「ああ。任せる。ついでにジェマが欲しい素材があるならジェマにくれてやる」


「ありがとうございます!」



 グラスの大盤振る舞いにジェマは目を輝かせた。大喜びでナンブモスの解体に駆けていく背中に、グラスは小さく笑った。



「ああしていると、意外と子どもらしいんだけどな」



 解体を進めるジェマと騎士たちの手捌き。遠巻きに見ていた冒険者たちも思わず近付いていってその手元をじっくり観察し始める。冒険者たちは解体した素材を冒険者ギルドに卸すことで依頼の報酬に付随して稼ぐことができる。


 解体の腕が良ければより多く稼ぐことができる。分かってはいても、その腕を学ぶ機会はなかなかない。冒険者たちの興味深そうな様子にグラスは顎に手を当てた。



「戦闘訓練以外にも教えてやった方が良いことは多いな」



 冒険者自体は根無し草とも言われるほど流動的で、目当ての魔獣を見つければ街を渡り歩く冒険者も多い。一方で冒険者ギルドはギルド間の調和を保つために閉鎖的で保守的な運営になりやすい。見た目に反した実情を抱えて、冒険者たちの成長に追いつけないまま足を引っ張ってしまうこともままあった。



「ストレリチアにでも相談するか」



 冒険者ギルドファスフォリア支部の頼れる解体師、ストレリチア。ストレリチアは作業場に籠ることが多くて技術を教える時間を作ることは難しい。けれどそれは、技術のない冒険者たちがお金を払ってでもより高く売るためにストレリチアに依頼しているから。


 冒険者たちに技術を教えることでストレリチアの仕事量が減れば、冒険者たちに教える時間もできる。



「その分冒険者ギルドの収入は減るが……いや、より良い素材を卸せば道具師ギルドも高く買い取ってくれる。それにここで指導を受けて冒険者が潤えば装備をより良くすることができて、早く次のランクに挑むことができるようになる……そうなれば高ランクの依頼が多く循環してその素材の売値で儲かる、か」



 高ランクの冒険者が増えてその活躍が広まれば、憧れを持って冒険者になろうとする人も増える。定期的に新人冒険者が現れれば低ランクの依頼が回らなくなることもない。むしろベテランに低ランクの依頼を持っていかれて新人が定着しなくなる事態を防ぐこともできる。



「悪くないな。よし。早速やるか」



 グラスはその場を離れて冒険者ギルドへと向かう。早速計画を立てて、本部へ提示して実行するために。安定を求める冒険者ギルド本部の腰は重い。それでも声を上げない理由がなかった。


 グラスが去った後もその場に残った冒険者たちとナンブモスを解体していたジェマと騎士団。ジェマが教えながら解体を進める姿を微笑ましそうに見守っていたハナナ。その視線が、颯爽と駆けてきた馬に向けられると表情が硬くなった。



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