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道具師ジェマ、所有者固定魔道具師への道。6  作者: こーの新


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5


 グラスは頷くと、手を掲げた。



「作戦決行!」


「おぉぉぉっ」



 冒険者たちはギルドを飛び出していく。ジェマとヒュプノス、ドルゲも後に続いて走り出す。ジェマの隣に近付いてきたセインはジェマに声を掛けた。



「ジェマ、回復魔法の魔石付与魔道具は?」


「大丈夫です。常に持参していますから」



 ジェマは腰に下げている【次元袋】の隣に装備している、いつも解体に使っているナイフを取り出した。



「この解体用ナイフには、回復の精霊魔石が埋め込まれているんです。断面の酸化を防いだり、抉れてしまった箇所の修復に使う目的で付けたんですけど、全然使わないんですよね」


「どうして?」


「上手く倒せば良いですし、【次元袋】に入れてしまえば酸化も何もないですから」



 セインは走りながら肩を震わせて笑った。浮世離れした天才。その全ては理解できなくても、その思考は聞いているだけで面白い。



「それじゃあ、普段は眠っているそのナイフの才能が、この戦闘で開花されるのですね」


「そういうことです! さあ、やりましょう」


「はい。全力で戦います」



 2人が正門に辿り着いたころ。騎士団も詰め所から駆けつけていた。シヴァリーは騎士たちに指示を出していたが、ジェマに気が付くとすぐに駆け寄った。



「ジェマ!」


「シヴァリーさん、あの、ジェットたちは」



 不安げに見上げるジェマに膝を屈めたシヴァリーは安心させるように笑って髪を撫でてやった。



「大丈夫だ。ハリスは騎士団詰め所で預かっている。モアレは馬車に隠してあるから、迎えにいってやれ。モアレは、まあ。冒険者の前には余り現れない方が良い」



 モアレはグラトニースライム。街1つくらい、簡単に飲み込んでしまう伝説上の魔物。教育を受けていて知らない者はいない。冒険者たちの輪に入ったモアレが何をされるか。ジェマは少しだけ、不安で拳を握りしめた。



「私、魔力をたくさん使うことになるので、モアレには影に隠れていてもらいます。それで、あの、ジェットは?」


「定位置にいるよ」



 シヴァリーが指差した先。カポックがハナナから指示を受けていた。その黒髪の中にもそもそと動くそれ。



「ふふ、本当ですね」



 ジェマは嬉しそうに笑って小さく手を振る。ジェットはカポックの頭上でぴょんぴょんと飛び跳ねていたけれど、カポックの頭上から離れるつもりはないようだった。



「すっかりお友達ですね」


「カポックも嬉しそうだ。あれでいて小さな生き物や子どもが好きなんだ」


「あれでいて? カポックさんは、ずっとそうじゃないですか?」



 ジェマが首を傾げると、シヴァリーは一瞬目を見開いて頭を掻いた。



「そうか。ジェマも子どもだもんな。あいつは最初から優しかったか」


「わ、私、成人してます!」


「それでも、だ。まだ守られる年ごろの娘だ。前線に立つことは、できれば避けて欲しい。だけど、ジェマに頼らなければ私たちは街を守ることができない。申し訳ないな」



 シヴァリーは眉を下げてジェマの頭を優しく撫でた。その手つきにジェマが嬉しそうに笑うと、シヴァリーの背後に影が差した。



「シヴァリー。隊長なんですから、指揮を」


「ああ、ハナナ。悪い悪い」



 肩をすくめると、シヴァリーはハナナの肩を叩く。そしてこそりとハナナの耳元で囁いた。



「そんなに不安になるな。ジェマのことは死んでも守る。それに、ジェマのことを必ず守ると誓っているのは私たちだけじゃない。だろ?」



 シヴァリーの目はグラスと話しているヒュプノスに向けられた。その視線は時折ジェマに向けられている。ハナナは小さく肩をすくめる。



「有難いことだと、思っていますよ」



 その複雑そうな表情にシヴァリーは小さく笑うと、セインに目を向けた。セインは小さく手を挙げる。



「久しぶり、シヴァリー」


「……セイン、か?」


「うん。随分変わった、かな? そうだと嬉しいな」



 どこか恥じらうようにはにかんだセイン。ジェマは不思議そうにハナナを見上げた。知識が足りないといつもハナナを見るジェマ。ハナナはその幸せを噛み締めると腰を屈めた。



「あの二人は学園の同級生だったんですよ」


「そういえば。同い年って聞きました」


「学園では、剣のシヴァリー、魔法のセインと有名だったそうですよ」


「なるほど。お2人の実力ならあり得ないことではありませんね」



 ジェマは羨望の眼差しで2人を見ていた。そして、ハッと森の方を振り向いた。ジェットはグラスの方へと飛んでいく。



「来るぞ。陣形は整えたな?」


「ああ、作戦は共有してある。すぐに動ける。ジェマとセイン、そしてヒュプノス殿下。よろしくお願いいたします」



 グラスはヒュプノスに深く頭を下げた。冒険者たちも頭を下げた。ヒュプノスは深呼吸をすると、震える拳を掲げた。



「全員で、勝ちましょう」



 全員で。その言葉に、冒険者たちは咆哮を上げた。そして、その刹那。



「来たぞ!」



 大量の鱗粉が木々の間から舞い上がる。姿は見えなくても、接近はすぐに分かった。グラスは冒険者たちのやる気に応えるように声を張り上げた。



「セイン、ジェマ、回復魔法の用意! 戦闘する魔剣士たちは剣を構えろ! 弓兵部隊、森へ向かって、放て!」



 一斉に矢が放たれる。そして、その矢を避けるように現れたナンブモスたちの姿に冒険者たちは息を飲んだ。



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