第95話 マクシミリアンは真面目だった
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王立研究所に専用の開発班が設けられ、翌日から代替魔道具の開発が本格的に始まり、研究所の一角に開発班のための広い部屋が用意された。
壁には、ベレニケ領の洞窟で記録した古代魔道具の図面が掲げられ、机の上には、魔力の測定結果や火の魔石が生み出される周期を記した資料が並べられている。
開発班は、大きく二つのチームに分かれて研究を進めることとなった。
一つは、王宮の宝物庫に保管されている古代魔道具を解析し、古代文明の技術を調べる開発チーム。
もう一つは、古代文明や古代魔道具に関する文献を探し、ベレニケ領の装置につながる記録を見つける調査チーム。
文献の調査は、王立研究所と王宮文書庫の研究員たちが中心となって進められることになった。
アリスたち開発チームは、まず宝物庫にある古代魔道具の解析に着手することになった。
ベレニケ領の古代魔道具そのものは、火山活動を抑えている可能性があるため、停止させることも、分解することもできない。
そのため、王宮に残されている別の古代魔道具を調べ、古代文明がどのような設計思想で魔道具を作っていたのかを知る必要がある。
もっとも、宝物庫の古代魔道具を開発室へ運び込むことはできず、どれも貴重な国有財産であるため、解析は宝物庫に隣接する専用の調査室が使われた。
そして、開発開始から三日目。
マクシミリアンは、調査室の机に突っ伏しながら、
「……なぜ特別講義の直後に、古代魔道具の解析へ立ち会わなければならないんだ」
その手元には、先ほどまで受けていた講義の教本と、書きかけの課題が置かれている。
午前中は学園で特別講義。
昼食後には課題提出。
その後、王立研究所へ移動し、古代魔道具の解析。
夕刻以降は、翌日に予定されている試験の勉強をしなければならない。
王太子が用意した特別日程には、全く無駄がなかった。
「特別講義には、間に合ったのか?」
カイルが尋ねる。
マクシミリアンは、机に伏せたまま顔だけを上げた。
「はい。課題も提出しました。明日の試験範囲も確認してあります」
「ならば、今のところ予定どおりだな」
「予定どおり進んでいますが、私の限界が近づいていることも確かです」
「まだ三日目だぞ」
「三日目だから申し上げているのです。この日程が今後も続けば、間違いなく近いうちに限界を迎えます」
「必要な単位を前もって取得しておかなかったことが原因ではありませんか?」
セドリックが、解析用の図面を整理しながら言う。
マクシミリアンは、恨めしそうにそちらを見た。
「セドリック様まで、アリスと同じことを仰らないでください。普通の学生は、最終学年の授業を受けて単位を取得するものです」
「ですが、開発への参加が決まった以上、卒業に必要な単位も並行して取得していただくしかありません」
「それは理解しておりますが……納得できません」
そう言いながらも、マクシミリアンは課題を放り出してはいなかった。
不満を口にしながらも特別講義には遅れず、提出物も期限を守っている。
開発班の仕事についても、自分に割り振られた調査記録には全て目を通していた。
カイルは、そんなマクシミリアンを見て僅かに微笑んでいた。




