第93話 マクシミリアンも開発班へ
※毎日 朝5時に予約投稿で更新中
その日の夕刻。
カイルとレオナルドは、王宮内の一室へアリスたちを集めた。
部屋には、アリスとセドリック、マクシミリアン、そしてリリィが揃っている。
「全員に、王太子殿下からの命令を伝える。」
カイルがそう切り出すと、アリスとセドリックは姿勢を正した。
一方、マクシミリアンは嫌な予感を覚えたのか、僅かに眉をひそめる。
「ベレニケ領で発見された古代魔道具の代替品を開発するため、王立研究所に専用の開発班が設けられた。アリス嬢とセドリックには、その中心となってもらう。」
アリスの目が、見る見る輝いていく。
「古代魔道具の代替品を、わたくしたちが作るのですか?」
「ああ。古代魔道具そのものは、ベレニケ領の火山活動を抑えている可能性がある。分解することも、動きを止めることもできない。王宮の宝物庫に保管されていた古代魔道具や、洞窟で得た調査記録を基に、仕組みを推定することになる。」
「それは、とても興味深いですわ!」
アリスは早くも、どの資料から確認するべきか考え始めていた。
その隣で、セドリックも静かに頷く。
「承知しました。必要となる数値や構造については、私が整理します。」
二人とも、断るという考えは最初からないらしい。
カイルは予想どおりの反応に頷いた後、マクシミリアンへ視線を向けた。
「それから、私とレオナルド、マクシミリアンも開発班へ加わることになった。」
「待ってください。」
マクシミリアンが即座に止めた。
「なぜ私まで加わることになっているのですか?」
「王太子殿下の決定だ。」
「理由を教えてください!」
カイルは王太子から渡された書類を開いた。
「マクシミリアンには、装置の安全性と、実際に使用する者の立場から意見を出してもらう。お前は騎士として革製の防具や馬具を扱ってきた。その経験が、温風送風装置を作る際にも役立った。」
「それは、革を直接火へ近づけると傷むと指摘しただけです。」
「その指摘がなければ、温めた空気を送るという案は生まれなかったかもしれない。」
「だからといって、なぜ代替魔道具の開発にまで参加しなければならないんですか!」
「お前は、アリス嬢たちが見落とした危険に、誰よりも早く気づくことが多いからだそうだ。」
マクシミリアンの表情が険しくなる。
「気づいているのではありません。誰よりも先に巻き込まれているだけです!」
揚水装置から噴き出した水を真正面から浴び、泥の中へ沈んだ記憶が蘇る。
あれを危険の発見と呼ぶのなら、あまりにも代償が大きい。
「だからこそ、危険を予測する側へ回ってもらうと、兄上は言っていた。」
「それでも納得できません!」
「まあ! 素晴らしいではありませんか!」
それまで黙って話を聞いていたリリィが、嬉しそうに声を上げた。
「マクシミリアン様が、王国を守るための大切な開発へ参加なさるのですね!」
「リリィ、これは決して安全な仕事ではない。」
「ですが、マクシミリアン様なら、皆様が安心して使える装置を作れますわ!」
リリィは、期待に満ちた目でマクシミリアンを見上げている。
その眼差しを向けられ、マクシミリアンの勢いが急速に失われていった。
「いや、私は装置を作れるわけでは……。」
「わたくし、マクシミリアン様が作った装置を使ってみたいですわ!」
「うっ、君が使う可能性があるなら、なおさら安全性を確認しなければならないではないか。」
「はい。ですから、開発を頑張ってくださいませ!」
「……。」
どう答えても、開発へ参加する方向にしか進まない。
マクシミリアンは助けを求めるようにカイルを見た。
だが、カイルは静かに首を横へ振る。
「諦めろ。私とレオナルドも、同じように加えられた。」
「既に決定事項です。」
レオナルドも淡々と付け加える。
マクシミリアンは、深く息を吐いた。
「……分かりました。できる範囲で協力いたします。」
「ありがとうございます、マクシミリアン様!」
リリィが満面の笑みを浮かべる。
その笑顔を見たマクシミリアンは、少しだけ頬を緩めた。
だが、そこでアリスが首を傾げた。
「ところで、マクシミリアン様。」




