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【完結】無自覚転生令嬢の物理魔法  作者: 深谷 汎
第6章 古代魔道具 と 代替品開発

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第92話 開発への参加は決定済み

※毎日 朝5時に予約投稿で更新中

王太子は、カイルを真っ直ぐに見た。


「アリス嬢とセドリックには、明日から代替魔道具の開発へ取り掛かるよう伝えてくれ」


「明日からですか?」


「既に準備は整っている。二人には、開発班の中心に入ってもらう」


アリスは、古代魔道具を見て、その仕組みを物理学の観点から考えることができる。


セドリックは、アリスの理論を理解し、必要な数値や構造へ落とし込める。


二人が代替魔道具の開発に欠かせないことは、カイルにも分かっていた。


「承知しました。二人には、私から伝えます」


「ああ。それから、開発班にはお前たちも加われ」


「私たちもですか?」


カイルとレオナルドの声が重なった。


「お前とレオナルド、それにマクシミリアンにも参加してもらう」


「お待ちください」


カイルは思わず聞き返した。


「アリス嬢とセドリックは分かります。王立研究所の研究員が加わるのも当然でしょう。しかし、なぜ私たちまで?」


王太子は答える代わりに、先ほど読んでいた視察報告書を持ち上げた。


「王宮の門へ、取水門の歯車と釣り合い重りを応用する案」


カイルが黙る。


「それを思いついたのは、お前だ」


「……使えるのではないかと、口にしただけです」


王太子は次のページを開いた。


「温風送風装置を、騎士団の防具や馬具の乾燥へ利用する案」


今度はレオナルドを見る。


「それは、兄が喜ぶだろうと呟いただけです」


「その一言から、騎士団、貴族の屋敷、王宮、村の保存食、書庫へと用途が広がっている」


レオナルドは視線を逸らした。


「マクシミリアンは、革を直接火へ近づけると傷むことを指摘した。その知識がなければ、温風送風装置は生まれなかったかもしれない」


「ですが、それは騎士として革製の防具や馬具を扱ってきた経験です。古代魔道具の開発とは違うのではありませんか?」


「違わない」


王太子は即座に否定した。


「研究員だけでは、理論や古代魔道具の構造へ目が向きやすい。だが、新たな装置を作るには、実際に使う者の視点や、別の分野へ応用する発想も必要だ」


王太子は、木箱へ収められた大量の報告書を指した。


「この報告書を読めば、それがよく分かる。アリス嬢とセドリックが問題を解決し、お前たちが別の使い道や新たな危険性を見つけている」


「私たちは、そこまで意識していたわけでは……」


「意識せずに、これだけの案件を増やしたのか?」


カイルは言葉に詰まった。


「古代魔道具の代わりを作るには、これまでにない発想が必要になる。その発想力が役立つかもしれん」


王太子は、まずカイルを見る。


「カイル。お前には、各部署の意見をまとめ、開発の方向を判断してもらう」


続いて、レオナルドへ視線を移す。


「レオナルドは、調査記録や文献、研究員から上がってくる情報の整理だ。異なる情報同士を結び付け、新たな可能性を見つけてほしい」


最後に、ここにはいないマクシミリアンの名が挙げられる。


「マクシミリアンには、装置の安全性と、実際に使用する者の立場から意見を出してもらう。アリス嬢たちが見落とした危険に、最初に気づくことが多いのも彼だろう」


カイルの脳裏に、揚水装置から噴き出した水を真正面から浴び、泥の中へ沈んだマクシミリアンの姿が浮かんだ。


「気づくというより、誰よりも先に巻き込まれているような気がしますが」


「だからこそ、危険を予測する側へ回ってもらう」


もっともらしい言葉だった。


だが、マクシミリアン本人が聞けば、きっと納得しないだろう。


「以上が、決定した開発体制だ」


「既に決定しているのですか?」


「ああ。古代魔道具の開発については、陛下から全権を任されている」


「私たちの意見を聞く前に?」


「断るつもりなのか?」


王太子の問いに、カイルとレオナルドは顔を見合わせた。


古代魔道具が、ベレニケ領を火山の脅威から守っている。


その代わりとなる装置の開発が、王国にとって必要であることは理解していた。


さらに、その装置は王国内の火山地帯を守り、今後必要となる火の魔石を生み出す可能性もある。


断れるはずがない。


「……承知しました」


「私も、できる限り協力いたします」


二人の返事を聞き、王太子は満足そうに頷いた。


「では、アリス嬢、セドリック、マクシミリアンへ伝えてくれ。明朝、王立研究所の開発室へ集合だ」


「分かりました」


王太子は再び、積み上げられた木箱へ目を向ける。


「視察報告書の整理も忘れるな。代替魔道具の開発とは別に、こちらの優先順位も決めてもらう」


カイルとレオナルドも、つられるように木箱の山を見た。


視察で増やした、当初予定の十倍以上に及ぶ案件。


それらを実現するために必要となる、膨大な量の火の魔石。


さらに明日からは、その供給問題まで解決する可能性を持つ、古代魔道具の代替品開発が始まる。


王都へ戻れば、少しは休めると思っていた。


どうやら、それは大きな間違いだったらしい。


こうして、ベレニケ領を守るために始まった代替魔道具の開発は、王国内の火山地帯を安定させ、火の魔石を供給するための国家事業へ発展することになった。


そして、視察先で新たな用途や危険性を見つけたカイル、レオナルド、マクシミリアンも、その発想力と現場での知見を王太子に評価され、正式に開発班へ加えられることになったのである。


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