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【完結】無自覚転生令嬢の物理魔法  作者: 深谷 汎
第6章 古代魔道具 と 代替品開発

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第91話 代替魔道具のもう一つの役割

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王太子は、積み上げられた視察報告書へ目を向けた。


「だが、この報告書を見て、代替魔道具に担わせるべきもう一つの役割が明確になった」


「必要な役割?」


王太子は、まとめられた視察報告書を開く。


「例えば温風送風装置には、空気を温めるための火の魔石が必要だ。工房の革帯を乾かす小型のものだけなら、大した量ではないだろう」


ページをめくる。


「だが、騎士団の装備を乾かす大型乾燥室。貴族の屋敷や王宮で洗濯物を乾かす設備。村で保存食を作るための乾燥装置。書庫から湿気を取り除く送風設備」


報告書には、それぞれの装置に必要となる火の魔石の数量も、今後の調査項目として記録されていた。


「これらを実際に作り、さらに王国各地へ広げるのであれば、必要となる火の魔石は膨大な量になる」


カイルは、積み上げられた木箱を見る。


報告書の中には、温風送風装置以外にも、火の魔石を利用する改良案がいくつも収められている。


物理道具が普及すればするほど、それを動かすための魔石も必要になる。


「現在は、王立研究所で開発された術式を使い、火の魔石を生成しています」


レオナルドが言う。


「ああ。しかし、あの術式で一度に生成できる量には限りがある」


王太子は、火の魔石の生産量と使用量をまとめた資料を二人へ渡した。


「王立研究所で生成できる量だけでは、ここに記された全ての設備を動かすには足りない。ベレニケ領の古代魔道具によって生成される火の魔石を加えても、将来的な需要を満たせないという試算が出ている」


「ベレニケ領の分を加えてもですか?」


「ああ。しかも、これは視察報告書に記載された案だけを実現した場合の試算だ。物理道具がさらに国中へ広がれば、火の魔石を必要とする場所も増えていく」


「では、せっかく新しい物理道具を作っても、動かすための火の魔石が足りなくなる可能性があると?」


「そのとおりだ」


王太子は、王国の地図を机の上へ広げ、ベレニケ領だけでなく、王国内に存在する複数の火山地帯へ印を付けていった。


「だからこそ、古代魔道具に代わる装置を開発する必要がある」


王太子は、地図の印を順番に指した。


「完成した代替魔道具をベレニケ領だけでなく、王国内の火山地帯へ設置する。地下から上昇するエネルギーを安全に取り出し、火の魔石へ変換するのだ」


カイルは、その意味を理解した。


「火山活動を抑えると同時に、火の魔石を生成するのですか?」


「ああ。それが実現すれば、火山周辺の危険を減らしながら、今後必要となる火の魔石も確保できる」


ベレニケ領を守るための代替魔道具。


それだけでも、王国にとって極めて重要な開発である。


だが、同じ装置をほかの火山地帯へ設置できれば、王国全体へ火の魔石を供給する、新たな仕組みにもなり得る。


「もちろん、全ての火山がベレニケ領と同じ状態とは限らない」


王太子が続ける。


「地下から上昇するエネルギーの量、地盤、噴火の危険性は場所によって異なる。装置を設置する前に、各地で十分な調査が必要だ」


「まずはベレニケ領の古代魔道具を参考に、試作機を完成させることが先ですね」


「ああ。その試作機で、取り出すエネルギーの量を調整できるか、安全に火の魔石へ変換できるかを確認する」

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