表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無自覚転生令嬢の物理魔法  作者: 深谷 汎
第二部 第5章 ベレニケ領 と 古代魔道具

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
78/90

第76話 令嬢へ伝える想い

※毎日 朝5時に予約投稿で更新中

恋愛感情をそのまま説明しても、おそらく彼女には伝わらない。


アリスが理解できる言葉。


これまで、自分が彼女から学んできた言葉。


セドリックはアリスの前へ歩み寄り、片膝をついた。


「アリス嬢。」


そっと差し出された手に、アリスは自分の手を重ねる。


「私は、あなたと出会うまで、誰かと深く関わりたいと思ったことがありませんでした。」


誰かに自分の心を乱されるくらいなら、一人でいる方がいい。


人との関わりを必要最小限に留め、自分一人で全てを完結させる。


それが、最も安定した生き方だと思っていた。


「物理学的に言えば、私は自分自身を一つの孤立系として生きていたのでしょう。」

(※用語解説 孤立系:エネルギーも物質も、一切外界とやり取りしないシステム


「孤立系……。」


アリスの瞳が僅かに揺れた。


「ですが、あなたと出会い、初めて外から大きな力を加えられました。」


「私が、外力なのですか?」


「はい。それも、決して無視できないほどの。」


セドリックは微笑んだ。


「最初は、あなたの言葉を理解したいだけでした。けれど、理解するほど、もっと知りたいと思うようになった。あなたが笑えば私も嬉しくなり、あなたが傷つけば守りたいと思う。離れていても、気がつけばあなたのことを考えている。」


アリスの手を包むセドリックの指に、僅かに力がこもる。


「私の進む方向は、あなたと出会ったことで変わりました。今では、どのような未来を考えても、その中に必ずあなたがいる。」


「私が……。」


「私は、あなたを縛りたいわけではありません。研究をやめてほしいとも、普通の令嬢になってほしいとも思わない。」


セドリックは真っ直ぐにアリスを見つめる。


「あなたが進みたい方向へ、私も一緒に進みたい。あなたが新しい理論を生み出すなら、私がそれを形にしたい。一人では届かない場所へ、二人で辿り着きたいのです。」


その言葉を聞き、リリィの瞳から大粒の涙が零れ落ちた。


(セドリック様……! アリス様の全てを受け入れ、そのうえで生涯を共にしたいと……!)


ヨハンもまた、胸が熱くなるのを感じていた。


家族は、これまでアリスの研究を否定したことはない。


しかし、本当の意味で理解していたわけでもなかった。


幼いアリスが難しい話をするたびに、「アリスは賢いね」と笑って見守ることしかできなかった。


だが、セドリックは違う。


アリスの言葉を理解するために、自ら物理学を学び、今では同じ言葉で想いを伝えている。


(この方なら、本当の意味でアリスの隣に立ってくれる。)


妹が誰かのもとへ嫁ぐことに、寂しさがないわけではない。


それでもヨハンは、二人の婚約を心から祝福したいと思った。


レオナルドも、腕を組みながら静かに二人を見守っていた。


(ようやく、想いを伝えられたか。)


アリスが関わると、普段の冷静さを失ってしまうセドリックを何度も見てきた。


その長い片想いが、ようやく報われようとしている。


同じ王族の側近として、レオナルドも嬉しく思っていた。


カイルも同じだった。


(良かったな、セドリック。)


女性嫌いだった幼馴染が、初めて心から望んだ相手なのだ。


できることなら、このまま幸せになってほしい。


マクシミリアンも、何度も頷きながら二人を見守っていた。


(セドリック様なら、アリスの扱いにも慣れている。これで、あの悪魔の危険な実験を止める者ができる!)


これまで、アリスの実験に何度巻き込まれてきたことか。


だが、今後は婚約者であるセドリックが、その役割を引き受けてくれるはずだ。


ようやく自分にも、平穏な未来が訪れる。


そう思っていた。


しかし――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ