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無自覚転生令嬢の物理魔法  作者: 深谷 汎
第二部 第5章 ベレニケ領 と 古代魔道具

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第74話 マクシミリアンの謝罪

※毎日 朝5時に予約投稿で更新中

王太子たちを乗せた転移魔法陣の光が静かに消えた。


ベレニケ伯爵はようやく肩の力を抜く。


「ようやく一息つけますな。」


アリスも苦笑した。


「本当に慌ただしかったですね。」


母も優しく微笑む。


「カイル殿下も、セドリック様も、マクシミリアン様も、リリィ様も……せっかくお越しいただいたというのに、まともなおもてなしもできませんでした。」


伯爵は四人へ向き直る。


「改めまして、ベレニケ領へようこそお越しくださいました。」


カイルは立ち上がり、一礼した。


「こちらこそ、お世話になります。」


「火竜の顎の件では、多大なるご協力をいただき、王家を代表して感謝申し上げます。」


穏やかな空気が屋敷を包む。


ようやく本来あるべき歓迎の時間が訪れた。


その時だった。


マクシミリアンが静かに立ち上がる。


「ベレニケ伯爵。」


「その前に、一つだけお許しいただきたいことがあります。」


伯爵は穏やかに頷いた。


「どうぞ。」


マクシミリアンは深々と頭を下げる。


「以前、私はアリス嬢へ婚約破棄を申し入れました。」


「結果として、ご息女にも、ご家族にも、多大なご迷惑をお掛けしました。」


「改めて、お詫び申し上げます。」


部屋が静まり返る。


伯爵は少しだけ目を細めると、小さく笑った。


「顔を上げてください。」


マクシミリアンが顔を上げる。


「確かに、あの時は驚きました。」


「ですが、あれは互いの立場があってのことでしょう。」


母も優しく微笑む。


「それに……。」


「正直に申し上げますと、あの婚約は最初から長く続くとは思っておりませんでした。」


アリスが驚いて振り向く。


「お、お母様!?」


母は笑う。


「だって、お互い恋愛感情なんてありませんでしたもの。」


伯爵も苦笑した。


「政略結婚としては間違っておりませんでしたが……。」


「父親としては、少し複雑でしたな。」


マクシミリアンは思わず目を見開く。


伯爵は続けた。


「今のアリスを見れば分かります。」


「心から笑っております。」


「それだけで十分です。」


母も頷いた。


「リリィ様も、とても素敵なお嬢様です。」


「マクシミリアン様も、ご自分が本当に想う方と出会われました。」


「それで良かったのですよ。」


マクシミリアンの表情から緊張が消えた。


「……ありがとうございます。」


「そのお言葉で、胸のつかえが取れました。」


リリィも嬉しそうに頭を下げる。


「ありがとうございます。」


伯爵は笑顔で頷く。


「今は王国を支える仲間同士。」


「昔の話は終わりにいたしましょう。」


部屋に穏やかな空気が戻る。


その空気を確かめるように、セドリックが静かに立ち上がった。


「ベレニケ伯爵。」


その一言だけで、場の空気が再び引き締まる――。



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