第74話 マクシミリアンの謝罪
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王太子たちを乗せた転移魔法陣の光が静かに消えた。
ベレニケ伯爵はようやく肩の力を抜く。
「ようやく一息つけますな。」
アリスも苦笑した。
「本当に慌ただしかったですね。」
母も優しく微笑む。
「カイル殿下も、セドリック様も、マクシミリアン様も、リリィ様も……せっかくお越しいただいたというのに、まともなおもてなしもできませんでした。」
伯爵は四人へ向き直る。
「改めまして、ベレニケ領へようこそお越しくださいました。」
カイルは立ち上がり、一礼した。
「こちらこそ、お世話になります。」
「火竜の顎の件では、多大なるご協力をいただき、王家を代表して感謝申し上げます。」
穏やかな空気が屋敷を包む。
ようやく本来あるべき歓迎の時間が訪れた。
その時だった。
マクシミリアンが静かに立ち上がる。
「ベレニケ伯爵。」
「その前に、一つだけお許しいただきたいことがあります。」
伯爵は穏やかに頷いた。
「どうぞ。」
マクシミリアンは深々と頭を下げる。
「以前、私はアリス嬢へ婚約破棄を申し入れました。」
「結果として、ご息女にも、ご家族にも、多大なご迷惑をお掛けしました。」
「改めて、お詫び申し上げます。」
部屋が静まり返る。
伯爵は少しだけ目を細めると、小さく笑った。
「顔を上げてください。」
マクシミリアンが顔を上げる。
「確かに、あの時は驚きました。」
「ですが、あれは互いの立場があってのことでしょう。」
母も優しく微笑む。
「それに……。」
「正直に申し上げますと、あの婚約は最初から長く続くとは思っておりませんでした。」
アリスが驚いて振り向く。
「お、お母様!?」
母は笑う。
「だって、お互い恋愛感情なんてありませんでしたもの。」
伯爵も苦笑した。
「政略結婚としては間違っておりませんでしたが……。」
「父親としては、少し複雑でしたな。」
マクシミリアンは思わず目を見開く。
伯爵は続けた。
「今のアリスを見れば分かります。」
「心から笑っております。」
「それだけで十分です。」
母も頷いた。
「リリィ様も、とても素敵なお嬢様です。」
「マクシミリアン様も、ご自分が本当に想う方と出会われました。」
「それで良かったのですよ。」
マクシミリアンの表情から緊張が消えた。
「……ありがとうございます。」
「そのお言葉で、胸のつかえが取れました。」
リリィも嬉しそうに頭を下げる。
「ありがとうございます。」
伯爵は笑顔で頷く。
「今は王国を支える仲間同士。」
「昔の話は終わりにいたしましょう。」
部屋に穏やかな空気が戻る。
その空気を確かめるように、セドリックが静かに立ち上がった。
「ベレニケ伯爵。」
その一言だけで、場の空気が再び引き締まる――。




