第73話 王国始動
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王宮内の転移魔法陣が淡い光を放った。
次の瞬間、王太子と王立研究所の研究員たちの姿が王宮内へと現れる。
待機していた近衛騎士が一斉に膝をついた。
「お帰りなさいませ、殿下。」
王太子は軽く頷くと、そのまま足を止めることなく歩き出した。
「国王陛下へ至急お取次ぎ願う。」
「ベレニケ領調査について、緊急のご報告がある。」
「はっ!」
騎士は一礼すると、すぐさま国王のもとへ駆け出した。
王太子は別の侍従へ視線を向ける。
「宰相、王立研究所長、王宮魔道具管理局長、宮廷図書館長、騎士団長を第一会議室へ招集せよ。」
「至急だ。」
「承知いたしました。」
侍従もまた足早にその場を後にする。
王太子は研究員たちへ振り返った。
「諸君らも第一会議室へ。」
「本日判明した事実を、そのまま報告してもらう。」
「承知いたしました。」
◇ ◇ ◇
ほどなくして第一会議室。
国王をはじめ、王国中枢を担う重鎮たちが席に着いていた。
王太子は一礼すると、洞窟での調査結果を順を追って説明していく。
洞窟最深部に築かれていた祭壇。
地下深くから流入する莫大なエネルギー。
火の魔石が生成される仕組み。
そして、その古代魔道具が火山活動を抑制しているという結論。
報告が終わる頃には、会議室は静まり返っていた。
誰も軽々しく口を開こうとはしない。
やがて国王が静かに口を開く。
「……なるほど。」
「ベレニケ領は、古代文明が遺した魔道具によって守られていたということか。」
「現時点では、その可能性が極めて高いと考えております。」
王太子が答える。
国王はしばらく目を閉じ、静かに考え込んだ。
そして、ゆっくりと会議室を見渡す。
「本件は国家機密とする。」
その一言に、場の空気が張り詰めた。
「この情報が民へ広がれば、不安と混乱を招く。」
「各部署へ命令を下す際は、必要最小限の情報のみ伝達せよ。」
「全容を知る必要がある者は、この場にいる者だけで十分だ。」
全員が静かに頷く。
国王は続けた。
「研究員には調査内容のみを。」
「司書には文献調査のみを。」
「騎士には警備命令のみを伝えよ。」
「理由を知る必要はない。」
「必要なのは成果だけである。」
その言葉に、宰相をはじめ各部署の長も深く頭を下げた。
「承知いたしました。」
国王は王太子へ視線を向ける。
「対策案は。」
王太子は一歩前へ進み、迷うことなく答えた。
「王宮宝物庫に保管されている古代魔道具の再調査。」
「宮廷図書館および各地に残る古文書の精査。」
「王立研究所による古代魔道具の解析。」
「そして、代替魔道具の開発です。」
国王は静かに頷いた。
「余も異論はない。」
そう言うと、ゆっくりと立ち上がる。
「本件対策の総指揮を、お前に命じる。」
「必要な人員、予算、権限はすべて与える。」
「必要と判断したものは、余の名において許可する。」
「王国の未来のため、全力を尽くせ。」
王太子は胸に手を当て、一礼した。
「謹んで、お受けいたします。」
国王は今度は重鎮たちへ目を向ける。
「諸君。」
「本件に関しては、王太子の命令を余の命令と心得よ。」
「各部署は全面的に協力せよ。」
「異議のある者はいるか。」
静寂だけが会議室を包む。
誰一人として異を唱える者はいなかった。
「よろしい。」
国王は再び王太子へ頷く。
「指示を。」
王太子は会議卓の全員を見渡した。
「まず、王立研究所は解析班と代替魔道具開発班の二班へ再編する。」
「研究所長。人員の選定は一任する。」
「了解いたしました。」
「王宮魔道具管理局長。」
「宝物庫に保管される古代魔道具をすべて選別し、研究所へ搬入してほしい。」
「直ちに手配いたします。」
「宮廷図書館長。」
「古代文明に関する文献を年代を問わず収集・精査していただきたい。」
「承知いたしました。」
「騎士団長。」
「王家管理下の遺跡および保管施設の警備を強化してほしい。」
「はっ。お任せください。」
「宰相。」
「必要な予算と人員の確保、各部署との調整をお願いします。」
「承知いたしました。」
「直ちに各部署との調整を開始いたします。」
王太子は満足そうに頷いた。
この場に集う者たちは、それぞれの役目を胸に刻んで席を立った。




