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無自覚転生令嬢の物理魔法  作者: 深谷 汎
第5章 ベレニケ領 と 古代魔道具

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第73話 王国始動

※毎日 朝5時に予約投稿で更新中

王宮内の転移魔法陣が淡い光を放った。


次の瞬間、王太子と王立研究所の研究員たちの姿が王宮内へと現れる。


待機していた近衛騎士が一斉に膝をついた。


「お帰りなさいませ、殿下。」


王太子は軽く頷くと、そのまま足を止めることなく歩き出した。


「国王陛下へ至急お取次ぎ願う。」


「ベレニケ領調査について、緊急のご報告がある。」


「はっ!」


騎士は一礼すると、すぐさま国王のもとへ駆け出した。


王太子は別の侍従へ視線を向ける。


「宰相、王立研究所長、王宮魔道具管理局長、宮廷図書館長、騎士団長を第一会議室へ招集せよ。」


「至急だ。」


「承知いたしました。」


侍従もまた足早にその場を後にする。


王太子は研究員たちへ振り返った。


「諸君らも第一会議室へ。」


「本日判明した事実を、そのまま報告してもらう。」


「承知いたしました。」


◇ ◇ ◇


ほどなくして第一会議室。


国王をはじめ、王国中枢を担う重鎮たちが席に着いていた。


王太子は一礼すると、洞窟での調査結果を順を追って説明していく。


洞窟最深部に築かれていた祭壇。


地下深くから流入する莫大なエネルギー。


火の魔石が生成される仕組み。


そして、その古代魔道具が火山活動を抑制しているという結論。


報告が終わる頃には、会議室は静まり返っていた。


誰も軽々しく口を開こうとはしない。


やがて国王が静かに口を開く。


「……なるほど。」


「ベレニケ領は、古代文明が遺した魔道具によって守られていたということか。」


「現時点では、その可能性が極めて高いと考えております。」


王太子が答える。


国王はしばらく目を閉じ、静かに考え込んだ。


そして、ゆっくりと会議室を見渡す。


「本件は国家機密とする。」


その一言に、場の空気が張り詰めた。


「この情報が民へ広がれば、不安と混乱を招く。」


「各部署へ命令を下す際は、必要最小限の情報のみ伝達せよ。」


「全容を知る必要がある者は、この場にいる者だけで十分だ。」


全員が静かに頷く。


国王は続けた。


「研究員には調査内容のみを。」


「司書には文献調査のみを。」


「騎士には警備命令のみを伝えよ。」


「理由を知る必要はない。」


「必要なのは成果だけである。」


その言葉に、宰相をはじめ各部署の長も深く頭を下げた。


「承知いたしました。」


国王は王太子へ視線を向ける。


「対策案は。」


王太子は一歩前へ進み、迷うことなく答えた。


「王宮宝物庫に保管されている古代魔道具の再調査。」


「宮廷図書館および各地に残る古文書の精査。」


「王立研究所による古代魔道具の解析。」


「そして、代替魔道具の開発です。」


国王は静かに頷いた。


「余も異論はない。」


そう言うと、ゆっくりと立ち上がる。


「本件対策の総指揮を、お前に命じる。」


「必要な人員、予算、権限はすべて与える。」


「必要と判断したものは、余の名において許可する。」


「王国の未来のため、全力を尽くせ。」


王太子は胸に手を当て、一礼した。


「謹んで、お受けいたします。」


国王は今度は重鎮たちへ目を向ける。


「諸君。」


「本件に関しては、王太子の命令を余の命令と心得よ。」


「各部署は全面的に協力せよ。」


「異議のある者はいるか。」


静寂だけが会議室を包む。


誰一人として異を唱える者はいなかった。


「よろしい。」


国王は再び王太子へ頷く。


「指示を。」


王太子は会議卓の全員を見渡した。


「まず、王立研究所は解析班と代替魔道具開発班の二班へ再編する。」


「研究所長。人員の選定は一任する。」


「了解いたしました。」


「王宮魔道具管理局長。」


「宝物庫に保管される古代魔道具をすべて選別し、研究所へ搬入してほしい。」


「直ちに手配いたします。」


「宮廷図書館長。」


「古代文明に関する文献を年代を問わず収集・精査していただきたい。」


「承知いたしました。」


「騎士団長。」


「王家管理下の遺跡および保管施設の警備を強化してほしい。」


「はっ。お任せください。」


「宰相。」


「必要な予算と人員の確保、各部署との調整をお願いします。」


「承知いたしました。」


「直ちに各部署との調整を開始いたします。」


王太子は満足そうに頷いた。


この場に集う者たちは、それぞれの役目を胸に刻んで席を立った。

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