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無自覚転生令嬢の物理魔法  作者: 深谷 汎
第二部 第5章 ベレニケ領 と 古代魔道具

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第70話 祭壇の目的と仮説

※毎日 朝5時に予約投稿で更新中

「地下深くから莫大なエネルギーが送り込まれていたこと。そして、この地がかつて火山地帯だったという記録。この二つは決して無関係ではありません。」


「つまり、地下のエネルギーとは火山活動のエネルギーだと言いたいのか?」


王太子の問いに、アリスは力強く頷く。


「はい。地下に蓄積された膨大な熱エネルギー……それこそが、祭壇が吸い上げている正体ではないでしょうか。」


「だが、それなら話がおかしい。」


口を開いたのはセドリックだった。


「地下の熱を利用して魔石を作るのが目的なら分かる。だが、それほど大掛かりな施設を造る必要があるのか?」


「そこですわ!」


アリスは嬉しそうにセドリックを指差した。


「私も最初はそう考えました。でも、それでは規模が大きすぎます。」


「規模が……?」


「はい。」


アリスは祭壇の見取り図へ視線を落とす。


「あれほど巨大な導管を地下深くまで伸ばしているのです。魔石を作るだけなら、もっと効率の良い方法があったはずです。」


マクシミリアンも静かに頷く。


「確かに、魔石を作るためだけの施設とは思えなかった。」


「ということは……。」


カイルが思案しながら口を開く。


「魔石は目的ではなかった?」


その一言に、アリスは笑みを浮かべた。


「その通りですわ。」


部屋が静まり返る。


「この古代魔道具の本来の目的は、地下のエネルギーを利用することではありません。」


一拍置いて、ゆっくりと言葉を続ける。


「火山活動を抑えることです。」


その場にいた全員が息を呑んだ。


「火山活動を……抑える?」


王太子が低く呟く。


「ええ。」


アリスは静かに頷いた。


「火山は地下にエネルギーが蓄積し続け、その限界を超えた時に噴火します。」


「ならば、そのエネルギーを事前に吸収してしまえば……。」


セドリックが言葉を続ける。


「噴火そのものを防げる。」


「はい。」


アリスは嬉しそうに微笑んだ。


「そして吸収したエネルギーは、そのままでは危険すぎます。だから魔力へ変換し、さらに火の魔石へ移し替えているのです。」


「つまり、火の魔石は……。」


マクシミリアンが静かに呟く。


「余剰エネルギーの処理方法。」


「その通りですわ。」


アリスは迷いなく頷く。


「魔石を作ることが目的ではなく、安全にエネルギーを取り除いた結果として魔石が生まれているだけなのです。」


王太子は腕を組み、しばらく考え込んでいた。


やがて静かに口を開く。


「そう考えると、代々伝えられてきた言い伝えにも説明がつく。」


「『注げる魔石を絶やしてはならない』……ですね。」


カイルも頷く。


「祭壇が止まれば、地下のエネルギーを吸収できなくなる。」


「そして……。」


マクシミリアンが険しい表情で続けた。


「再び、この地は火山地帯へ戻る可能性がある。」


重苦しい沈黙が部屋を包む。


ベレニケ家に代々受け継がれてきた言い伝え。


それは単なる教えではなく、この領地そのものを守るための警告だったのかもしれない。


王太子は静かに立ち上がる。


「この仮説が正しいかどうかは、必ず確かめなければならない。」


全員が王太子へ視線を向けた。


「明日、もう一度『火竜の顎』へ向かう。」


「今度は、この仮説を前提として調査を行う。」


「もしアリス嬢の考えが正しければ、昨日とは違うものが見えてくるはずだ。」


その言葉に、その場にいた全員が静かに頷いた。


翌日、調査隊は新たな仮説を胸に、再び『火竜の顎』へ向かうこととなった。

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