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無自覚転生令嬢の物理魔法  作者: 深谷 汎
第5章 ベレニケ領 と 古代魔道具

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第69話 古い文献が示す歴史

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その日の夕刻。


調査隊がベレニケ伯爵邸へ戻ると、すぐに文献調査班との報告会が開かれた。


大広間には現地調査を終えた王太子たちと、ベレニケ家に残って調査を続けていた研究員たちが集まり、それぞれの成果を持ち寄っていた。


「まずは現地調査班から報告しろ。」


王太子の言葉を合図に、研究員が洞窟で得られた調査結果を順に説明していく。


祭壇は大気中の魔力や地脈から魔力を吸収していないこと。


地下深くから莫大なエネルギーが送り込まれ、それを魔力へ変換し、火の魔石を生成していること。


そして、祭壇には用途不明の紋様が刻まれていたこと。


報告を聞き終えた文献調査班も、それぞれ調査結果を報告し始めた。


「こちらが聞き取り調査の結果です。」


研究員が一歩前へ出る。


「ベレニケ伯爵ご夫妻をはじめ、長年仕える使用人、領民への聞き取りを行いましたが、祭壇について知る者は一人もおりませんでした。」


「唯一分かったことは、代々『注げる魔石を絶やしてはならない』という言い伝えだけです。」


別の研究員が続ける。


「また、出来上った火の魔石は領民へ無料で配られており、暖房や調理など生活に欠かせないものとして重宝されております。しかし、それを生み出す祭壇については、誰も疑問を抱いたことすらないようでした。」


王太子は静かに頷いた。


「続けよ。」


「はい。」


今度は文献調査班が古びた書物を机へ広げる。


「ベレニケ家の書庫、領内の図書館を隅々まで調査しましたが、古代魔道具に関する記録は一切見つかりませんでした。」


部屋に静かな空気が流れる。


「ベレニケ領の歴史についても調査いたしましたが、ベレニケ家がこの地を治めるようになってからは、ごく一般的な領地運営の記録ばかりで、特筆すべきものはありません。」


研究員は一冊だけ、ひときわ古びた書物を取り上げた。


「ただ、一つだけ気になる記述がございました。」


全員の視線が研究員へ集まる。


「ベレニケ領が興る遥か昔、この土地は火山地帯であり、人が住めるような環境ではなかった、とだけ記されております。」


「火山地帯……。」


王太子が静かに呟く。


「はい。しかし、それ以外の記述はなく、いつ、どのような経緯で現在の姿になったのかまでは記されておりませんでした。」


報告を終えると、大広間は静まり返った。


現地調査でも決定的な手掛かりは得られず、文献にも古代魔道具の記録は残されていない。


残されたのは、地下から送り込まれる莫大なエネルギーと、この地がかつて火山地帯だったという古い記録だけだった。


その時だった。


「――それですわ!」


沈黙を破るように、アリスが勢いよく立ち上がった。


全員の視線が、一斉にアリスへと集まる。


突然の大声に、その場の全員が驚き、アリスへと視線を向ける。


「アリス嬢、何か分かったのか?」


王太子が問い掛けると、アリスは興奮を抑えきれない様子で大きく頷いた。


「まだ確証はありません。でも、今ある情報を全て繋げると、一つの仮説が浮かび上がりますわ!」


「仮説?」


カイルが腕を組む。


アリスは机に広げられたベレニケ領の地図を指差した。

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