第68話 古代魔道具の測定結果は…
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祭壇を囲むように測定器が設置され、魔力灯とは異なる淡い光が広間に浮かび上がった。
静まり返った空洞には、魔道具が作動する低い駆動音だけが響いている。
誰もが固唾を呑んで測定結果を待った。
やがて、測定器を覗き込んでいた研究員が、驚愕に目を見開く。
「殿下……!」
「どうした」
「お、おかしいのです……!」
研究員は震える声で報告を続けた。
「事前報告どおり、大気中の魔力も地脈の魔力も、一切吸収していません。それにもかかわらず、祭壇は今この瞬間も魔石を生成し続けています」
その場に緊張が走る。
「永久機関……ということか?」
王太子の呟きに、研究員は勢いよく首を振った。
「いえ……違います!」
そう言うと、祭壇の足元を指差した。
「エネルギーは地下です! 祭壇の真下、遥か地下深くから莫大なエネルギーが送り込まれています!」
「地下だと?」
「はい! 祭壇の内部には地下へ真っ直ぐ伸びる導管のような反応があります。そこを通して運ばれてきた膨大なエネルギーを魔力へ変換し、魔石として定着させているようです!」
その報告を聞き、アリスは嬉しそうに両手を合わせた。
「まあ、やっぱり!永久機関ではありませんでしたのね。」
全員の視線がアリスへ向く。
「どういうことだ?」
王太子が問い掛けると、アリスは祭壇を見つめたまま答えた。
「エネルギーは何もないところから生まれることはありません。どこかにあるエネルギーを別の形へ変換しているだけですわ。」
そう言って、祭壇を指差す。
「つまりこれは魔石を生み出す装置ではなく、地下からの膨大なエネルギーを魔力へ変換し、魔石へ移す変換装置ということです。」
「地下に、それほどのエネルギーが……」
カイルが思わず呟く。
その疑問に答えられる者はいなかった。
ヨハンも静かに首を横へ振る。
「我が家の記録にも、この地下に何があるのかまでは残されていません」
その後も調査は続けられたが、新たな成果は得られなかった。
祭壇の内部構造や魔力の流れは可能な限り記録され、側面に刻まれた紋様も丁寧に写し取られていく。しかし、その紋様が何を意味するのか、その場で答えを出せる者はいなかった。
「やはり、一度王立研究所へ持ち帰って詳しく調べる必要がありそうですね」
研究員の報告に、王太子は静かに頷く。
「これ以上は現地で調べても進展は望めまい。本日の調査はここまでとする」
その指示を受け、研究員たちは観測機材の撤収を始めた。
祭壇の周囲から機材が運び出され、一行も洞窟の出口へ向かって歩き始める。
その時だった。
最後に祭壇の前を通り過ぎようとしたリリィが、不意に足を止める。
「……あれ?」
小さく漏れた呟きに、隣を歩いていたマクシミリアンが振り返った。
「どうした、リリィ?」
リリィは祭壇の側面に刻まれた紋様を見つめ、小さく首を傾げる。
「この紋様……どこかで見たような気がするのですが……。」
そう呟いたものの、すぐに困ったように笑った。
「……いいえ、何でもありませんわ。私の勘違いです。」
「そうか。」
マクシミリアンも深くは気に留めることなく歩き出し、リリィもその後を追う。
こうして調査隊は『火竜の顎』を後にした。古代魔道具の謎を抱えたまま――。




