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無自覚転生令嬢の物理魔法  作者: 深谷 汎
第5章 ベレニケ領 と 古代魔道具

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55/106

第54話 使節団メンバー確定!~カイル殿下は強制参加~ 

※毎日 朝5時に予約投稿で更新中

あれから1ヶ月が経過した。


アリスの完全復活と、マクシミリアンが正式に検証メンバー(兼・物理学のスパルタ講習生)として加わったことで、魔法検証はこれまでにないほど順調に進んでいた。


完全復活したアリスの冴えわたる理論に、セドリックの魔改造が加わり、それをマクシミリアンが『標的マト』になって受ける。

来る日も来る日も、アリスの容赦ない物理講習とセドリックの本気の魔法攻撃を浴び続けたマクシミリアンは気づいた。物理概念を早急に習得し、自ら物理魔法で防御するしか助かる道はないと……。


結果、マクシミリアンは驚異的な速度(死に物狂い)で物理概念を叩き込み、回避能力で足りない部分を物理魔法で補えるようになっていった。見事なまでの『最強のタンク』が出来上がりである。


おかげで検証レポートの山は順調に減っていき、いよいよ、検証から結果の精査へとフェーズが移行していった。


季節は王立学園の卒業シーズン。

ヨハンが無事に学園を卒業し、領主教育を受けるために領地へ帰郷する日が近づいてきた。視察団たちはヨハンの帰郷に合わせて、ついにベレニケ領への視察へと向かうことになったのだが――。


「……兄上。今、なんとおっしゃいましたか?」


出発を数日後に控えた王宮の執務室。

カイルは、目の前で優雅に紅茶を傾ける王太子に向かって、引きつった声を出した。


「聞こえなかったか? カイル、お前もベレニケ領の視察団に加われと言ったのだ」

「なっ……!? なぜですか! 私には山積みの公務が――」


「あの視察団の手綱を、誰が握るのだ?」


王太子がスッと目を細めると、カイルは言葉に詰まった。


「指揮はセドリックが取り、物理道具の解説役としてアリス嬢も加わる。そして……何かあった時の『囮役』としてマクシミリアンを同行させることにした。同行の条件にリリィ嬢を挙げてきた時は呆れたが、今や彼の回避能力は無視できない……というわけだ……」


王太子はここで言葉を一旦区切り、ため息をついた。


「まず、セドリックだが……アリス嬢のことになると、何をしでかすか分からん。彼女の安全と知的好奇心を満たすためなら、領地ごと吹き飛ばすような実験すら平気で許可しかねん」


「っ……!」


カイルは苦虫をかみつぶしたような顔をし、こめかみを押さえた。

否定できない。全くもって、否定できない。

普段は誰よりも冷静沈着で完璧な王宮筆頭魔術師だが、アリスの理論と彼女自身が絡んだ瞬間、ヤバいポンコツに成り下がるのだ。


「唯一、常識人のヨハンが同行するとはいえ、彼に、あの二人の暴走を止めさせるのは少々荷が重すぎる。よって、王族であるお前の出番だ!解るかね?弟よ!」


「……っ、そんな……!兄上自身は王宮に残り、私にあの問題児たちを押し付けるおつもりですね!?」

「為政者とは、適材適所で駒を動かすものだよ」


ニヤリと、とても王族らしく(そして極めて腹黒く)笑う兄を前に、弟は深く深く、絶望のため息を吐き出すことしかできなかった。


――こうして。

アリス(研究第一)、セドリック(アリス第一)、マクシミリアン(囮役)、リリィ(アリス信者)、ヨハン(常識人)、そしてカイル(手綱)という、王宮でも類を見ないほど濃すぎるメンバーを乗せた馬車は、一路ベレニケ領へと出発することになったのである。

いつも応援ありがとうございます!

本日より、舞台を王都からベレニケ領へ移し、領地編へと突入しました。

それに伴い、物語の区切りが分かりやすいように章分けを行い、章タイトルを追加しました!

領地編も、引き続きよろしくお願いいたします。

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