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無自覚転生令嬢の物理魔法  作者: 深谷 汎
第4章 国家を揺るがすレポート と 元婚約者の覚醒

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第53話 マクシミリアンの能力

※毎日 朝5時に予約投稿で更新中

「本当に、単細でバカだな。見ている分には最高に面白いが……」


不意に背後から声が掛かり、カイルが振り返ると、そこには先程まで遠くで様子を見ていた王太子が、口元に笑みを浮かべて立っていた。


「兄上……」

「だが、あのセドリックの魔法を全て躱し切る回避能力。……『使える』と思わないか?」

王族として、為政者である兄の言葉に、カイルはハッとしてマクシミリアンを見た。


その時――


「……セドリック様の攻撃魔法すら上回る、回避能力……。もし、これに『物理概念』が加わったらどうなるのかしら……」

ふと、アリスがマクシミリアンを見つめたまま、ぼそっと呟いた。


「「「「「!!!!!」」」」」


その呟きは、静まりかえった演習場に響き渡り、その場にいる全員の視線がマクシミリアンに集中した。


「えっ??」


突然、五人からの異常な熱を帯びた視線を一身に浴び、マクシミリアンは先ほどまでのドヤ顔をピシリと硬直させた。

(な、なんだ……? なぜ皆、そんな目で俺を見ているんだ……!?)

それは先ほどまでの称賛の眼差しとは明らかに違っていた。背筋にゾクッと得体の知れない悪寒が走り、本能が「今すぐ逃げろ」と警鐘を鳴らしている。


「あの驚異的な反射神経に、物理と数学の演算処理がプラスされたら……。どうなるのか、ものすごく興味がありますわ、ぜひ観測してみたいです……」

「対人戦の練習では常に手加減をしていましたが……。物理概念をマスターし、物理魔法を使えるようになったマクシミリアン殿が相手なら、私は一切の手加減なしで色々試せるようになるかもしれない……!」

「まあぁっ! マクシミリアン様が、アリス様のように……♥ 私、お勉強のお手伝いも全力でいたしますわね!」

「マクシミリアン!! 今すぐ物理概念をマスターしろ!! 貴様、セドリックすら上回るかもしれんぞ!!」

「兄上の言うとおりだ!! マクシミリアン、何としても物理概念を習得しろ!!」


「え……? ぶつり……がいねん……?」


危険を感じながらも、一人だけ状況が理解できず、ぽかんとするマクシミリアン。


アリス(観測したい)、セドリック(全力を試したい)、リリィ(期待)、王族(国力にしたい)

五人の矢印(ベクトル)が、全く違う理由から見事に『マクシミリアンの物理概念習得』という一点へ集中した瞬間だった。


――まさにこの時が、マクシミリアンの人生におけるターニングポイントであった。


「え? ぶつり、ってなんだ……? 剣の素振りの一種か?」


今はまだ、自身の過酷な運命(スパルタ講習)が待ち受けているとは露知らず、ただ首を傾げることしかできないマクシミリアン。


その後、文字通り血を吐くような地獄の特訓(と、愛しのリリィの熱烈な応援)を経て物理概念を叩き込まれることになった彼は、驚くべき才能を開花させた。

彼の異常なまでの『反射神経』は身体の動きだけに限った話ではなかった。脳の『反応速度』そのものが常人とは比べ物にならないほど優れていたのである。


結果としてマクシミリアンは、誰よりも早く反応し、脳内で物理計算を開始。弾き出した数値ベクトルを肉体に即時反映させるという、とんでもない能力を身につけてしまう。


王宮トップクラスの実力を持つセドリックと対等に戦える、最強騎士の誕生である。


そして、その最強騎士へと成長したマクシミリアンを、最初に目を付けた腹黒い王太子殿下が見逃すはずもなく。次代の国王陛下を護る『筆頭護衛騎士』として、歴史にその名を轟かせることになるのだが――。


それはまだ、誰も知らない未来の話。

※このエピソードをもって、第一部完結とさせていただきます!

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。皆様の応援リアクションやブクマ、評価が大きな励みになりしまた!

明日からは、第二部:領地編として投稿を開始いたします!引き続きお楽しみ頂けると幸いです!

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