第52話 掌の上で踊るマクシミリアン
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「 ありがとうございます、マクシミリアン様!」
「助かります!マクシミリアン殿!」
「「早速、始めましょうか!」」
アリスとセドリックの声が同時に重なった。二人は口角を吊り上げながら準備態勢に入った。
「回避データを取るために、防壁なしで魔法を撃ち込みますから、しっかり避けてくださいね!」
アリスの指先に、チリチリと危険な音を立てる高密度の魔力弾が浮かび上がる。
「分かった、存分に撃ち……え?」
「では、始めます!!」
ドン ドン ドーン ドォォーン……
「わあああああああっ!?」
演習場に、マクシミリアンの悲鳴と容赦ない魔力弾の爆音が響き渡る。
「…………」
過去の真実に震えていたはずが、見え透いたおだてに乗り、自ら進んで『標的』に志願したマクシミリアン。二人の容赦ない攻撃に逃げ回るが、誰も彼を助けようとはせず、ただただ、静かに見守った。
マクシミリアンの協力(という名の過酷な実験)のおかげで、無事にたくさんの回避データを取り終えた一同。
皆が涼しい顔をしている中、ただ一人だけ、地に両手をついて「ゼエ、ゼエ……ッ」と激しい呼吸を繰り返すマクシミリアンの姿があった。
全身汗だくで、生まれたての小鹿のように足が震えている。
そんな彼を見ながら、セドリックはにこやかな笑顔で称賛の言葉を口にした。
「しかし、本当にマクシミリアン殿の身体能力には脱帽です。怪我を負わせてはいけないので、最初は加減していたのですが……」
「ゼエ……ハァ……(当然だ、死ぬかと思ったぞ……)」
「全て避けてしまわれるので、後半は『本気で当てに』行きましたが、それすらも全て躱してしまうなんて……」
その言葉を聞いた瞬間、マクシミリアンの顔からサァァァッと血の気が引いた。
(ほ、本気で当てにきていた……!? 一歩間違えれば炭カスになっていたではないか……!!)
再び恐怖が襲ってきたマクシミリアンだったが、セドリックの続く言葉が彼の耳に届く。
「私の攻撃魔法が当たらなかったなんて、初めてのことです。なんだか、自信を喪失してしまいそうです……」
セドリックが少し肩を落とし、苦笑いしながらそう呟いた。
それを聞いた瞬間――マクシミリアンの脳内で、恐怖の感情がパシィィン!と弾け飛んだ。
(あの、セドリック様の本気の攻撃を全て躱せた……! 王宮トップクラスである、彼の攻撃は当たらず、自信喪失しそうだと……!?)
さっきまで青ざめていた顔が一転、みるみるうちに赤く紅潮していく。
恐怖はどこへやら、圧倒的な優越感と高揚感がマクシミリアンの全身を駆け巡った。
「ふっ……ふはははは! そうだろう、そうだろう! この私の前では、貴殿の魔法も当たらんということだ!」
地に這いつくばった情けない体勢から、プルプルと震える足で無理やり立ち上がると、マクシミリアンはビシッと胸を張って高笑いをした。
「まあ! アリス様の計算だけでなく、セドリック様の魔法まで打ち破るなんて……! マクシミリアン様、本当に世界一素敵ですわ!!」
「うむ! 騎士たるもの、これくらい当然だ!」
「この調子で、明日以降も検証の協力をお願いできますか?」
「ははは、もちろんだ!私に任せたまえ!」
先ほどの命の危機を忘れ、『セドリックへの勝利』という都合のいい解釈で婚約者の前にドヤ顔をキメて、明日以降も自分が『標的』になるとは考えずに協力を了承したマクシミリアン。
(バカだ……こいつ、本当に底抜けのバカだ……)
カイル殿下は再び、頭を抱えるのであった。




