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無自覚転生令嬢の物理魔法  作者: 深谷 汎
第4章 国家を揺るがすレポート と 元婚約者の覚醒

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第52話 掌の上で踊るマクシミリアン

※毎日 朝5時に予約投稿で更新中

「 ありがとうございます、マクシミリアン様!」

「助かります!マクシミリアン殿!」


「「早速、始めましょうか!」」

アリスとセドリックの声が同時に重なった。二人は口角を吊り上げながら準備態勢に入った。


「回避データを取るために、防壁なしで魔法を撃ち込みますから、しっかり避けてくださいね!」

アリスの指先に、チリチリと危険な音を立てる高密度の魔力弾が浮かび上がる。


「分かった、存分に撃ち……え?」

「では、始めます!!」


ドン ドン ドーン ドォォーン……

「わあああああああっ!?」

演習場に、マクシミリアンの悲鳴と容赦ない魔力弾の爆音が響き渡る。


「…………」


過去の真実に震えていたはずが、見え透いたおだてに乗り、自ら進んで『標的マト』に志願したマクシミリアン。二人の容赦ない攻撃に逃げ回るが、誰も彼を助けようとはせず、ただただ、静かに見守った。


マクシミリアンの協力(という名の過酷な実験)のおかげで、無事にたくさんの回避データを取り終えた一同。


皆が涼しい顔をしている中、ただ一人だけ、地に両手をついて「ゼエ、ゼエ……ッ」と激しい呼吸を繰り返すマクシミリアンの姿があった。

全身汗だくで、生まれたての小鹿のように足が震えている。


そんな彼を見ながら、セドリックはにこやかな笑顔で称賛の言葉を口にした。


「しかし、本当にマクシミリアン殿の身体能力には脱帽です。怪我を負わせてはいけないので、最初は加減していたのですが……」

「ゼエ……ハァ……(当然だ、死ぬかと思ったぞ……)」

「全て避けてしまわれるので、後半は『本気で当てに』行きましたが、それすらも全て躱してしまうなんて……」


その言葉を聞いた瞬間、マクシミリアンの顔からサァァァッと血の気が引いた。


(ほ、本気で当てにきていた……!? 一歩間違えれば炭カスになっていたではないか……!!)


再び恐怖が襲ってきたマクシミリアンだったが、セドリックの続く言葉が彼の耳に届く。


「私の攻撃魔法が当たらなかったなんて、初めてのことです。なんだか、自信を喪失してしまいそうです……」


セドリックが少し肩を落とし、苦笑いしながらそう呟いた。

それを聞いた瞬間――マクシミリアンの脳内で、恐怖の感情がパシィィン!と弾け飛んだ。


(あの、セドリック様の本気の攻撃を全て躱せた……! 王宮トップクラスである、彼の攻撃は当たらず、自信喪失しそうだと……!?)


さっきまで青ざめていた顔が一転、みるみるうちに赤く紅潮していく。

恐怖はどこへやら、圧倒的な優越感と高揚感がマクシミリアンの全身を駆け巡った。


「ふっ……ふはははは! そうだろう、そうだろう! この私の前では、貴殿の魔法も当たらんということだ!」

地に這いつくばった情けない体勢から、プルプルと震える足で無理やり立ち上がると、マクシミリアンはビシッと胸を張って高笑いをした。


「まあ! アリス様の計算だけでなく、セドリック様の魔法まで打ち破るなんて……! マクシミリアン様、本当に世界一素敵ですわ!!」

「うむ! 騎士たるもの、これくらい当然だ!」


「この調子で、明日以降も検証の協力をお願いできますか?」

「ははは、もちろんだ!私に任せたまえ!」


先ほどの命の危機を忘れ、『セドリックへの勝利』という都合のいい解釈で婚約者の前にドヤ顔をキメて、明日以降も自分が『標的マト』になるとは考えずに協力を了承したマクシミリアン。


(バカだ……こいつ、本当に底抜けのバカだ……)

カイル殿下は再び、頭を抱えるのであった。

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