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無自覚転生令嬢の物理魔法  作者: 深谷 汎
第4章 国家を揺るがすレポート と 元婚約者の覚醒

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第41話 高性能CPU(天才)の集まり

※毎日 朝5時に予約投稿で更新中

「わかった。行くぞ」

カイル殿下が机の上にあった重厚な辞典を持ち上げ、セドリック様の頭上へ勢いよく投げた。 直撃すれば大怪我は免れない速度と質量。だが、セドリック様は瞬き一つせず、指先をわずかに動かしただけだった。


ピタッ。


辞典はセドリック様の頭の数ミリ上で、まるで目に見えない柔らかなクッションに受け止められたかのように、ふわりと完全に静止したのだ。


「えっ……!?」

私は思わず目を見開いた。


「たしかに…… アリス嬢の言った通り、慣性質量と重力加速度のベクトルを逆算して、マナの密度を極限まで高めて抵抗を作ってみました。……これならどんな大質量が降ってきても無力化できますね」

セドリック様が淡々と解説する。そのあまりにもスムーズな魔法(物理)の行使に、私の脳は激しく混乱していた。


(えっ!? 嘘でしょ!? 私、今の防御方法の概念、一回しか説明してないですよね!? なのに、一瞬で頭の中で数式を組み上げて、マナの出力まで完璧に最適化させたの!?)


「なるほど、カチカチの壁を作るのではなく、抵抗係数を操るのか」

カイル殿下が感心したように呟くと、セドリック様は涼しい顔で頷いた。


「ええ。作用点を分散させるのがコツです。殿下たちなら簡単ですよ」

「ふむ、こうか」

王太子殿下とカイル殿下が、自分たちの手元にあったペーパーウェイトやインク瓶を宙に放り投げる。そして、何気ない手つきで指を振ると――それらの物体は、すべて空中でピタピタと完璧に静止した。


「おお、本当だな。これなら応用も利きそうだ」

「ええ、さすがはアリス嬢の理論です」

楽しそうに検証を成功させる王族たちの後ろで、側近たちは「理屈はわかりますが、瞬時の連立方程式の暗算はまだちょっと……」と青ざめて辞退していた。


それでもこの国のトップ二人とセドリック様の三人は、私の理論をあっさりと、それも一度聞いただけで、実践レベルまで昇華させてしまったのだ。

「これなら、確かに大丈夫そうだな」 王太子殿下がようやくいつもの余裕の笑みを取り戻した。


だが、私の心の中には、安堵とは全く別の、真っ黒でドロドロとした感情が渦巻いていた。


(……前世から何年もかけて計算して、今世でも一人でコツコツ検証して、やっとの思いで辿り着いた最適解なのに。……この人たち、世界最高峰の『天才(高性能CPU)』の集まりじゃない!!)


元々、私はただの「物理が好きなオタク(普通のCPU)」に過ぎない。努力と時間でカバーしてきた知識を、生粋の天才たちに一瞬で抜き去られ、軽々と使いこなされてしまったのだ。 悔しい。悲しい。そして、理不尽だ。


「アリス嬢?」

急に俯いて黙り込んでしまった私を不思議に思ったのか、セドリック様が顔を覗き込んできた。

「どうかしましたか? やはり、私のマナの圧縮率に誤差がありましたか?」


その無自覚な天才の言葉が、私のコンプレックスを完全に爆発させた。

【別作品のお知らせ】

いつも『転生無自覚令嬢の物理魔法』をお読みいただき、本当にありがとうございます!

現在、本作とは全く違うジャンルの現代ドラマ『僕らが憧れの神様の声を遺すまで』という作品を掲載中(完結)です。

異世界ファンタジーではありませんが、「AI音声技術」と「声優の情熱」がぶつかり合う、泥臭くて熱いお仕事ストーリーになっています。「たまには異世界じゃない、別の物語も読んでみようかな?」と思ってくださった方は、ぜひ作者ページから覗いてみてください!

引き続き、本作ともどもよろしくお願いいたします!

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